私はヒーローの娘でありながら、ヒーローという存在を信じていなかった。
この世界にヒーローなんてものはいない。10歳で思い知った世界は残酷と言える程リアルなものではないし、私自身がそれほどまでにこの世界に期待しているわけでもないこと物語っていた。
ヒーローと呼ばれる者が英雄と呼ばれ続ける意味を。
ヒーローと呼ばれる者達が英雄と呼ばれるこの世界の理を。
ヒーローとは公共の場で合法的に”個性”の使用を許された者達のことであり、国はそれを公的職務として定め、ヒーロー達に歩合制として賃金を支払っている。
ヒーローとは人を助けることが仕事。地獄の沙汰も金次第とは言うが、人の命も金次第ということなのだろう。
人の命とは推し量ることが出来ないのではないだろうか、それはただの幻想だったのだろう。
胸にぽっかりと穴が空いているような気がした。
そこを覗き込んでも何もなくって、いや、もしかしたら覗き込む穴さえもないのかもしれない。
心というものが目に見えるのなら、私の心は既にどこかに行ってしまったのだろう。
「 全ては正しき社会の為に 」
これが私のはじまり。私の世界の終わり。人と魔物が交わる時間帯、逢魔が時に貴方と出逢った。目が合ったのは、これで7回目。言葉を交わしたのは、これで3度目。答えを聞けたのは、初めてだった。
何処かにいってしまった心に、ぽつりぽつりと雨が降ってきたような感覚。静かに満たされていくような、熱に浮かされるような感覚。
息が出来なくなって、声が出なくなって、涙が溢れて―――――――嗚呼、恋に落ちる音とは雨音のように優しく、心に響くことなのだと知った。
私赤格子夕霧はヒーロー殺しステインと呼ばれる男に恋をした。それは中学生になって初めてのゴールデンウィークのことだった。