「ご苦労様」
心操が騎馬となっていた三人に声を掛けてその場から離れた。
フィールドの外で彼を待っていた委員長は手を右手を上げている。無表情、全く読めない。
だがこれは、ハイタッチでも求めているのだろうか。
痛むわけではないけど、なんとなく首に手を当て空いた手で軽くその手を叩いた。委員長はそっと手を下ろす。
どことなく満足そうだった為に、間違いではなかったらしい。自身の個性を使い、勝利を納めたことにいつだって後ろめたさがあったが委員長はよくやったと言うように肩を叩く。痛かった。
「おめでとう心操」
「委員長はダメだったみたいだな」
「まぁね。感電して心臓止まったんだ、あの場で大事にならなくてよかったよ」
「はぁ?」
「午後も期待してるから」
「委員長」
「ご飯食べに行こうか」
「聞けよ」
全く人の話を聞こうとしない姿勢に頭を痛めながらも、不意に足を止める委員長の背中に胸を強打した。
急に止まるなと言葉にしたかったが、出てきたのは鈍い呻き声。胸を擦りながら声を掛ける。
「どうかしたか?」
答えない代わりに視線がその答えを教えてくれた。視線の先には一人の男がいた。黒スーツに、背を向けているせいで顔は見えないが喫煙スペースではない場所での喫煙が気に障ったのだろうか。
男はこちらの視線に気付く様子もなく、煙を空に吹かし、手元に持ったスマホを弄っている。
心操の予想とは正反対に委員長の言葉は酷く冷めたものだった「心操、あれには関わるな」
「はぁ?」
「ゴミだ。こんなところまで来るとは」
「…どういうことだよ」
眉間に皺を寄せ、怪訝な表情で問い返せば、歩きながらあの男のことを話し始めた。
「フリーの記者。名前は黒司馬、汚いやり方でネタを炙り出しそれを記事にして生きてるゴミだ。やり方が悪質極まりない。関わると碌なことがない」
「……なんでそんなやつが」
「いるんだろ。とって美味い餌をぶら下げたやつが」
委員長は吐き捨てるように言った。その眼は既に男を見ておらず、止めた足を再び動かし始めた。
「そういえば、あのヒーロー娘の…赤格子ってどんな奴だったんだ?」
「赤格子さんか、あの子は……」
ヒーローに向かないね。
珍しい、委員長がそういうこと言うなんて。