オールマイトは困ってる人を笑顔で助けちゃうんだろ、今の君は笑ってない。
そんな人に助けに来られたって、助けられた人も不安じゃない?本当に大丈夫かって思っちゃうだろ?
「知ってる?この世界で一番強いのは笑ってる人間なんだよ」
僕の顔から手を離した銀憑さんは自分の頬を指で持ち上げ、ニィッと笑った。
『 諦めた方が良いね 』
『 無個性のくせにヒーロー気取りか、デク!! 』
彼らの言葉は僕の心を抉った。
暗闇から覗いた手が僕を現実という名の絶望に引き戻すような感覚。何年も何年もその手から逃げてきた。ずっと見ようとはしなかった。けど、中学三年生になって進路という分かれ道を目の前に立たされた。
ヒーロー科を選び、ほぼ可能性のない道を選ぶか。
それとも自分の身の丈にあった普通科にいくか。向き合わないといけない、ーーーーこの時が来てしまったんだ。
緑谷出久の進む道には無個性というレッテルが付きまとう。それは生きてる限り、切り離すことは出来ないことを。齢四歳で知った現実を受け入れなければいけない。
銀憑さんはどうするのだろう。同じ無個性である彼女はどの道を進むのだろうと思った。
彼女は自分が転入当初からよく笑う人で、無個性であることを隠そうとせず、個性を持ったみんなと普通に過ごしていた。勿論、彼女を気に入らない人達もいた。
彼女は立ち向かうことを恐れなかった。彼女は彼女のやり方でクラスメイトに受け入れられた。
無個性だからではない。銀憑依という人間を皆が受け入れたのだと知った時、僕は彼女は別の世界の人間なんだろうと思った。
だから、彼女の言葉で否定された時、あぁ仕方ないよね。そうだよね。君と僕は違う。同じ無個性だけど、その中に秘めたものは全然違うよね、と言葉に出来ず唇を噛むことしか出来なかった。同じ無個性である彼女に否定されるということは現実を見ろと言われてるようなもの。けど、全然違う無個性である彼女に否定されるのは、君には無理だから諦めた方がいいと言われているようなもの。
でも、ちゃんと理由があった。
彼女は無個性だから否定したわけではないと気付いた時、自分の心の弱さに目元が熱くなった。
まだ夢を見ていていいよと言われた気になっていた。そうだよね、君はそんなこと言う人じゃなかったね。
「緑谷君、私は無個性だか出来ないとか。無個性だからしちゃいけないって言葉は嫌いだよ」
「……うん、」
「ヒーロー科、受けるんでしょ」
「うんっ!」
僕は中学二年生の時、その言葉で救われたんだ。
僕はまだ夢を見ていていいですか?