風呂を出た後ソファーに寝転がってぼうっと天井を見上げていたら横腹を蹴られた。

「占拠してんじゃねぇよボケ」
「ごめん」

勝己と同じ現場でヒーロー活動をした。
私は勝己みたいにオールマイトに憧れてヒーローになった訳じゃない。
勝己に憧れてヒーローになった。
だから勝己がヒーローをやる時、必ず傍でヒーローをしていたい。
昔から勝己の後ろを着いて来た。
勝己がそれを拒否してきたことはないから多分許してくれているのだろう。
一人暮らしの部屋にまで押し掛けた私を見た勝己が少し笑ったのはもう昔のことだ

「また怪我しやがって」
「かすり傷だから」
「弱ぇんだから出しゃばんじゃねぇよ」
「勝己よりは弱いけどそこそこ頑張ってるし」

肩にできた大きめのかすり傷がヒリヒリと痛む。
傷が増えるのは嫌じゃない。
自分のことは別に大切じゃない。
ただ勝己が無事なら、それでいい。
体育座りをしていると肩の傷に痛みが走った。

「いったい…」
「傷作りやがったてめぇが悪い」

勝己が私の傷を舐めた。
少し血が出てジワジワ広がっていた。
言いようもない痛みに顔を歪ませた。
ザラザラとした舌の感触が痛くて、気持ちよかった。

「また痕が残ったらどうすんだよ。後のこと考えろクソ」
「もう傷物だからいいの」
「しょうがねえから傷物のお前は俺が貰ってやるよ」
「うん。頑張って勝己のこと守るね」
「…違ェよバカか」

私は勝己の隣にずっといてもいいのだろうか。
サイドキックとして私は勝己に認められたってことなのかな。
何て光栄なことなんだろうか。

「お前は俺の物なんだから他の奴に傷付けさせるんじゃねえ」
「気を付ける」
「絶対ェわかってないだろお前」

勝己が呆れたようにため息をついていた。
勝己の肩に頭を乗せると何だか段々眠くなってきた。
そのまま睡魔に負けてみると幸せな夢が見れそうな気がした。








目が覚めた時にはベッドにいた。
勝己が運んでくれたのだろう。
何だかんだ勝己は優しい。
そういうところも私は好きだ。

もう時計は12時を回っていた。
また寝すぎてしまった。
ベッドから這い出て、テレビを付けるとワイドショーがやっていた。

「…爆心地、緊急発表?」

勝己が発表?
何をだろう。
そのうちに勝己がテレビに出てきて、報道陣に囲まれた。
スーツなんか着ちゃってどうしたんだろう。

『俺は今日結婚する』
「え?」

誰と、だろう…
私が知らない間に彼女がいたなんて。
もしかして私って物凄い邪魔だった?

『…クソゆうこ!!てめェ昨日のプロポーズ流しやがって!!これから家帰って即婚姻届け出してやるからな!家で待ってろボケ!!』


相手って私なんだ…
って昨日のあれってプロポーズだったんだ。
勝己にとっては一世一代のプロポーズだったのに流してしまった。
悪い事しちゃったな。
役所に行くし、ちょっといい恰好していこうかな。


「ゆうこ」

玄関が開いて、勝己が私を呼ぶ声がした。
鞄を持って玄関に行くとテレビで見た勝己がいた。

「私、もうちょっと自分のこと大切にしてみる」
「俺のものなんだから大切にするのは当たり前だろうが」
「うん、ありがとね」

そのまま泣きそうになったから下を向いた。
勝己がゆっくり私を抱きしめた。
その腕が優しかったからまた泣きそうになる。

「行くぞ」
「うんっ」

手を握られて外に出た。
日差しが眩しい。
目に溜まった涙が煌いて夢みたいだった。


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