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「俺天野の顔ちゃんと見たの初めてやわ」
「そうだっけ」
「いつも前髪が邪魔でよく見えへん」
「たしかに。俺もちゃんと見たのは久しぶりかも」

前髪を分けているし、いつもしているダサい眼鏡をしていない。
正直久世蘭に似てると思ってしまった。
瞳の色も違うし涙黒子もないし、なによりこいつは天野百合なのだからそんな筈はないのだけれど。

「どっかで見たことあると思ったけど久世蘭に似とるな、天野」
「侑君は性格もポンコツなのに目までポンコツになっちゃったんですか〜?」
「なっとらんわボケ!!」

それから侑と天野が漫才を始めたのを横目で見ながらチュロスを頬張る。

「でも確かにさっきから色んな人の視線を感じるんだよね」
「角名普通にイケメンやからなあ。侑も全国にファンがおるイケメン(笑)やしな。百合中身はただのお調子者やけど」

四人でおそろいのカチューシャを付けて頭のネジをぶっ飛ばすのも悪くないと少し思う。
漫才を続ける二人の写真を撮ると怒られた。
顔をばっちし決めた二人をもう一度写真に収めた。

「あ!パスの時間になるから乗りに行かな」
「ホンマや。はよいこ」
「私ちょい行った所にあるポップコーン買いたいんですけど」
「は?先行っとけやボケ」
「正直にすみません忘れてました」
「俺天野についてくから二人で先並んでてよ」
「神か?おこちゃまな侑君とは大違い〜」
「うっさいねん!」

そうして二手に分かれて、俺と天野はポップコーンをひとまず買いに行った。
いかにそのポップコーンが美味しそうなのか天野は隣で延々と語っていた。

「言いたくなかったら答えなくていいんだけど、前髪で顔隠してる理由って何?」
「…顔を隠した方が好きにできる」
「今日の天野はいつもの天野だけど」
「それは、三人のこと好きになれたからだよ。あ、着いた」

ポップコーンを注文しようとしている天野を写真に収めた。
そういえば中学はちゃんと通えなかったと言っていた。
やはり何かトラウマがあるのだろうか。

「ありがとーってうますぎこれ天才あげる」
「ホントだ」

口の中にエビの味がじんわりと広がった。
美味しそうにポップコーンを貪るその女に、俺はまだ触れることが出来ない。



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