grief


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ふと意識が浮上した。
そこは見知らぬ天井だった。

どうやら病院に入院しているらしい。
視界の端で点滴が落ちているのが見えた。
確かどこかから落ちたような気がする。
働かない頭で記憶を辿っていると、不意に心臓が強く痛んだ。
経験もないのに何かに撃たれたかのような痛みだった。
ズキズキドクドクと心臓が強く跳ねる。
不整脈のアラームがけたたましく鳴っていた。

「大丈夫ですか?」

部屋の入口から顔を覗かせた看護師に大丈夫です、と返事をした。
血圧を測られながらもう一度記憶を辿る。
何かとても大切なことが頭から抜け落ちているような気がしていた。
どこかから落ちた後私はどこかに……、いや、それすら確かではない。
どんなに思い出そうとしても雲を掴むように、何も確かなことは得られない。
窓の外で雪がハラハラと落ちていたのが見えた。







意識を取り戻した日は何だかとても疲れていて



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