あなたの好きな人






※R18



その夜、いつもとヴィーラの雰囲気が違うことを感じていなかったといえば嘘になる。
もしかしてと何度も思って、その都度考えすぎだと自分に言い聞かせ、気がついた時には引っ込みがつかないところまで行ってしまっていた。優しく押されたジータの背は、ベッドに柔らかく受け止められる。

視界の一番向こうには見慣れた古ぼけた天井。その手前でうつくしい女性が、やや緊張した面持ちでこちらを見下ろしている。ガーネットの瞳は確かに劣情を宿してぐらぐらと揺れていた。

「………………ふぇっ?」

自分が間抜けな声を発したことにも気づかないまま、長い睫毛に見蕩れる。ジータと違い、寝具に拘っているらしいヴィーラのベットはスプリングの音を立てなかった。

ジータさん、と舌の上で飴玉を転がすように名を呼ばれる。

「よろしいですか。」

吃りながらも、う、う、うん、と答えた声はきちんと音になっていたかどうか。
判然としないうちにキスが降ってきて、あとはもう。







翌朝早い時間にまだ眠るヴィーラの隣を静かに抜け出したジータは、一度タオルと歯ブラシを取りに自室に戻った。ビィはルリアのところに泊まったので誰もいない。
まだ誰も起きてこない洗面台で、静かに歯を磨く。思い返すのは昨晩のことだ。

(夢じゃない、よね。)

痕のひとつも残してくれなかった身体ではいまひとつ実感が湧かないが、触れた指先の熱が、重なった鼓動の速さが、まだ生々しく脳裏に残っている。

(………ヴィーラさんと、致してしまった。)

思い出すと頬が熱くて、ジータは誤魔化すように忙しく歯ブラシを動かした。シャカシャカシャカシャカ。硬い歯ブラシの先が触れた柔い舌を、昨晩はヴィーラのそれが舐ったのだ。

『ジータさんの舌、短いですね。可愛い。』

思い出して赤面してしまった鏡の中の自分を見たくなくて、俯いたついでにシンクに唾液を吐き出した。それでも回想はやめられなくて、脳みそが必死で昨日の想い出を書き止めようとしているようだ。
皺くちゃのシーツと、そこに散らばる二人分の金髪。常日頃宝石のようだと思っている赤い瞳は薄ら涙で潤み、その日ばかりはザクロのジャムのようだった。ジータの輪郭を確かめるように触れる細い指。直接触れた肌は熱く、柔らかく、そして……

(えっちだったなぁ)

勿論今までも『えっちな』とか、『セクシーな』という形容詞を使ったことはあるし、それがどんなことか理解もしていたと思っていたけれど、今となっては自分の理解など子供のままごとだった。そう思ってしまうほど、価値観を180度塗り替えられてしまったような夜だったのだ。

昨晩はヴィーラの熱い指が絡んだ両手を、今朝は冷たい水に浸す。手のひらで掬った水を口に含んでぐちゅぐちゅとうがいをした。
一通り回想が終わると、意図的に目を向けないようにしていた疑問が顔を出す。

(……ヴィーラさん、何であんなことしたんだろ。)

鏡の中の自分に問いかける。
たまたまムラムラした時に、カタリナが任務で居なかったからだろうか。そう考えたらその線が有力な気がしてきた。うん。そうに違いない。カタリナが居たならカタリナとしたのだろう。ジータが知らなかっただけで今までもしていたのかもしれない。うんうん。きっとそう。でも。

(カタリナの代わりでも、嬉しかったな……。)

これが一夜の思い出というやつか、とジータはうんうん頷いた。
間違いを正してくれる人は誰もいない。

その時パタタタ、と軽い足音がして、奥からヴィーラが駆けてきた。寝間着で部屋の外に出ない彼女にしては珍しく、ネグリジェにガウンを羽織っただけの姿である。
焦燥を顔に浮かべたヴィーラは、洗面台の前に立つジータの様子を見てあからさまにホッとしたようだった。

「ここに居らしたんですか。」

探されていたのか。何でだろう、と首を捻る。褥を共にすることは多々あるが、起きる時間なんてバラバラだ。ジータの方がヴィーラより朝に強いから、先に起きて朝の支度をしていることはよくあるのに。

「何か用事だった?」
「いいえ。ただその……お身体は、平気ですか。」
「身体?」
「ええ。ダルかったり、痛かったりは、しないかと。」

恥じ入る姿は乙女だった。喜びそうになる自分を心の中だけで殴りつける。期待するな。ヴィーラは懐に入れた人に優しいだけ。彼女の『特別』はジータでは無い。

「……ありがとう。大丈夫。」

期待などするな。分をわきまえろ。
心をきつく縛り付ける。

ヴィーラは照れくさそうに笑って、それがあんまりにも可愛かったので胸が痛んだ。
一度でも満たされることを知ってしまったおなかが、ひどく空腹だった。













一夜の思い出が二夜目になる日は意外にも早く、1週間後にやってきた。
あからさまに空気のおかしさを感じていた前回とは違い普通にお茶会をしていたはずなのに、ヴィーラがジータの横髪をついと掬って耳にかけた途端、一気に艶かしい雰囲気になって戸惑う。ヴィーラはゆるく微笑んでいた。

「……よろしいですか?」

主語のない問いかけ。何を?とすっとぼけることは簡単だったけれど、誤魔化してヴィーラに『じゃあお姉様のところに行きます』と言われたらショックだなと思った。今夜はカタリナも船にいるはずなのだ。

「……う。う、うん。」

吃りながら返事をするのも1週間前と一緒。
違うのはジータの経験値が、ゼロからイチになっていることだ。

「きょ……きょ、今日はその、わ、私も、頑張るから。」

赤い瞳がまたたいた。

「してもらうばかりじゃなくて……私も、その、ヴィーラさんのこと、気持ち良くしてあげたいっ、から。」

それだけ言うのにもかなり勇気が必要だったので、自分から誘ってくるヴィーラは凄いな、と思う。
ヴィーラは嬉しそうに笑って、ふたりで気持ちよくなりましょうか、とゆっくり言った。

悪魔の囁きだ。



迷子の子供の手を引くようにベッドまで導かれ、浅く腰掛けて二人で座る。まずはキス。茱萸のような唇に、ちゅ、ちゅ、と口付ける。小鳥のようなキスにヴィーラは擽ったそうに笑って、ジータの唇を食んだ。声には出さずに、こうするんですよと教えられた気がした。拙い動作で真似をして、ぽってりとした下唇を食む。口角を上げたヴィーラの熱い舌が、ジータの唇をノックした。引き結んでいた唇を恐る恐る緩めると、まるで生き物のようにぬるりと入り込んでくる。ヴィーラの舌はそのままジータの歯列を掠め、喉の奥で行き場をなくして縮こまっていた舌を見つけた。舌先でこちょこちょとなぶられる。柔らかい唇と優しい舌に誘われて、舌に舌を絡めてみた。気持ちいい。
ヴィーラはそのまま舌を使うキスを続けてくれた。ディープキスに慣れないジータが息継ぎに困ることがない、ゆったりとしたペースだった。

やがてすっかり体温を分け合ったお互いの口内が同じ温度になる頃、ヴィーラの手がジータの腹を撫でた。ハッとして視線を下ろせば、いつの間にかシャツの下に侵入されている。剣を持つ人間としては薄い手のひらはそのままツツツと肋骨を撫でながら上がっていき、小ぶりな乳房をブラジャーの上からまぁるく包んだ。

「可愛いですね。」

耳元で囁かれて脳みそが溶けそうだ。
必死で同じことをした。ヴィーラのキャミソールの下に手を入れる。白磁の肌はまるで吸い付くように手のひらに馴染んだ。ヴィーラの真似をしてツツツと持ち上げて……ふと気づく。

「……ヴィーラさん、もしかして緊張してる?」

触れた皮膚の向こうにある心臓は、常より激しく脈打っていた。余裕があるように見えていた……否。『見せていた』ヴィーラは、ムッと唇を尖らせた。

「それは、勿論。貴女が相手ですから。」
「……フ、」
「何笑ってるんですか!」
「私だけじゃないんだって、思って。」

嬉しくて。

笑ったらいい具合に力が抜けて、ジータはえいっと思い切ってヴィーラの胸に手を伸ばした。ヴィーラはなんとカップ付きキャミソールを着ていたようで、つまり、容易にその上の乳房に触れた。前回はされるがままだったから、ヴィーラの胸に触るのはこれが初めてだ。自分の胸とは違うふわふわした感触に感動して、そのまま優しく揉んでみる。
すぐ耳元でヴィーラの吐息が漏れて、ジータの頬を擽った。やわやわと揉んで、まだ柔らかい乳嘴を指先で擽る。

「……ッ、」

声にもならない声だった。ほとんど吐息のようなそれにゾゾゾと鳥肌が立つ。背筋を駆け上ったそれが情欲であることに気づかないまま、ジータは指先で乳首を弾いた。
黙っていられないのは、ほとんど吐息だけとはいえ先に啼かされたヴィーラである。ジータの背に腕を回して、ほんの一瞬でブラホックを外した。少々ゆとりが出た胸とブラジャーの隙間にするりと手を滑り込ませ、指先だけで可愛らしい蕾を探り当てる。親指と人差し指で摘んでくにくにと弄ると、ジータの眉間に小さなシワが寄った。
乳首は敏感な部位ではあるが、最初から快感を拾うのは難しいらしい。ヴィーラもそれは承知していたので、こだわること無く下に手を伸ばす。スカートの下の、ショーツの更に下。指を入れると微かな下生えに触れた。

「脚、開けますか?」

疑問形なのに有無を言わさぬ声音に、ジータは得も言われぬ気持ちを抱いていた。恥ずかしいような、このまま身を任せたくなるような。とりあえず今は従う他にないので、おずおずと脚を少しずつ開く。ヴィーラは辛抱強く待ってくれた。拳ひとつ分ほど開いたところで、白魚の手がスルリと隙間に入り込んだ。
あの綺麗な人の、綺麗な腕が、自分のスカートの下に入り込んでいる。その光景はあまりにも倒錯的で、ジータは必死で悲鳴を我慢した。叫び出したい気持ちだった。
あまりの恥ずかしさに目眩がする。目をギュッと瞑ったとき、ヴィーラの指先が秘豆に辿り着いた。

「……ぅあっ、」

乳首とは違う、直接的な刺激に膝が跳ねる。痛いと気持ちいいと擽ったいを混ぜて割ったような、不思議な感覚。触れるか触れないかのところでやわやわと敏感なところを擦られ、腰のあたりがゾワゾワしてくる。

「ジータさん、可愛い。」

呟いたその声があまりにも艶やかで驚いて顔を上げて、見なければ良かったとジータは後悔した。情欲に潤んでどろどろに溶けた瞳が、上気した頬が、少しだけ乱れた前髪が、有り体に言って大変えっちだったのである。

(こんな顔をしてくれるんだ……)

キューンと、胸が締め付けられるようだった。何だかとても幸せで、嬉しくて、満たされたような気持ちになって、その途端、股からトロリと何かが零れるのが自分でも分かった。ヴィーラの長い指が、蜜壷の潤みを掠め取り、肉芽にぬるぬると塗り込んだ。

「あっ……!あっ、あっ、」

最初とは比べ物にならないほど気持ちが良くて、口から勝手に声が飛び出た。自分の声とは思えないほど、甘えた女の声だった。
ヴィーラはとろとろに溶けた声で言う。

「可愛い。」

この辺りからもう、ヴィーラにも同じことをしてあげなければと思っていたことなんてすっかり忘れていた。ただただ与えられる刺激に翻弄される。寄せては返す波のように絶え間なく訪れる快感を受け止めるだけで精一杯で、押し倒されたことにすら気が付かなかった。気付けばジータの上には柔らかな女の肢体が乗っていて、身動きすらろくに取れないまま恥丘を弄られる。

「あンっ、ちょ……っ、やめてっ、ぅ゛ぃら、さんっ」
「ジータさん、可愛い。とっても可愛いですよ。分かりますか?とろとろ」
「や、やだ、やだ、」
「『ヤダ』じゃなくて『気持ちいい』って言いましょうね。ね?」
「き……ッ、きもちぃっ……ヒッ」

ジータは知らないことであったが、ヴィーラの爪は常より短く切られ、丁寧に手入れされていた。ささくれひとつない指が秘裂を優しく掻き分けて、人差し指と中指の2本が勃起した性感帯を挟んで、くに、と包皮を剥いた。

「あ゛ぁ〜〜〜〜っ……!」

抱きしめられて、キスをされて、可愛い可愛いと甘い声で囁かれて。煮詰まった快感が、ぱちんと弾けて、頭が真っ白になった。抗い難い快感の波に攫われ、意識が揺蕩う。

忘我の極地に至って、ジータはひ、ひ、と引き攣った息をした。ヴィーラは自分も横になり、息も絶え絶えなジータを抱きしめて満足気にしている。

確かに空腹が満たされた感覚があった。
ちゅ、と前髪にキスをされる。隣に、うつくしいひとが寝転んでいる。

バカになった頭ではブレーキが効かなかった。たちまちに潤んだ榛色の瞳から、コロリと涙が零れる。

「……ぃラさんの…………、」
「ジータさん?」

何がおっしゃいましたか、と優しく問うたヴィーラの顔が見れなくて、情けない顔を見られたくもなくて、腕で顔を隠す。
言ってはいけない、と思ったけれど、脳みそは溶かされてしまったので、抑えが利かない。



「ヴィーラさんの好きな人が、私だったら良かったのに。」



唇の隙間からこぼれ落ちた言葉は情けなく震えていて、ほとんど泣き声だった。

言ってしまったな、と思う。面倒くさいと捨てられたらどうしよう、とも思う。悲しくて寂しくて、苦しい。
口答えせず、都合のいい女でいれば良かった。そうすればいつか、カタリナに向ける思いのほんの少しでも、分けて貰えたかもしれないのに。






一方、ようやく心を通わせられたと思っていた相手にとんでもないことを言われたヴィーラの頭は真っ白になっていた。

「………………は?」

耳を疑う。ヴィーラさんの好きな人が私だったらよかった?は?ヴィーラさんって誰のことだ?誰が誰を好きだったら良かったって?ややパニックである。
言われたことを飲み込むのに少々時間がかかって黙り込んでいたら、怯えた目をしたジータに見上げられてうっかりときめいてしまった。違う。ときめいている場合じゃない。落ち着け。大きく深呼吸をする。

今、ジータは『ヴィーラがジータを好きだったら良かった』と言ったのだ。つまりこの鈍感娘は、こんなことをしているというのに、この期に及んで『ヴィーラが好きなのはジータでは無い』と思っている、らしい。



思わず眉間を揉んだ。はぁぁぁぁ、と肺の中の空気を全て使った溜め息を吐く。

「……ジータさんの自己肯定感の低さを計算に入れ忘れた私のミスです。まさか伝わっていないとは。確かに……口に出して『好き』とは、あまり言っていなかったかもしれませんが。」

本当に頭が痛かった。初めてそういうことをした1週間前からずっと、ひとりで浮かれてバカみたいだ。チラと見たジータはひどく怖がった顔をしていて、いっそ哀れだった。抱きしめる。頤を下から掬い上げ、触れるだけのキスをした。涙で潤んだライトアンバーの瞳をじっと見つめて、真摯に告げる。

「貴女が好きですよ。」

ジータが息を呑んだ。

「確かにカタリナお姉様は私の特別です。ですが今、私の目には、誰が映っていますか。」
「わ、わたし。」
「ええ。今、私はジータさんしか見ていません。ねえ、ジータさん。貴女、ルリアさんのことは好きですか?」
「そりゃ好きだけど、何で……?」
「では、ルリアさんとセックスしたいと思いますか」
「ええっ!?思わないよっ。どうして……」
「私も同じです。大切であることと、こうして肌を重ねたいと思うことは、別のことでしょう?」

そう言ってもまだ納得したかどうか微妙な顔をしていたので、ヴィーラはただただ真剣に伝えた。

「貴女が好きです。」
「う……嘘だぁ。」
「嘘ではありません。貴女が好きですよ、ジータさん。」

抱きしめて、おでこと頬にキスをして、繰り返し伝える。

「好きです。貴女のことが好き。好きですよ、ジータさん。」

あまりにも繰り返すから、もしかして本当にそうなのかな……とジータが思い始めたタイミングで、ヴィーラはジータの服を全て脱がした。ヴィーラ自身もキャミソールを脱ぎ捨てる。支えるものが無くなったたわわな乳房がたゆんと揺れた。

にこ、と微笑む。

「言っても分からないようですから、私がどれだけ貴女を愛しているか教えて差し上げますね。」
「……えっ」

押し倒して噛み付くようなキスをした。
先程までの、ジータのことを気遣ったキスとは違う。相手の吐息まで食らうような、激しいキスだ。裸になったことで、直接触れ合う肌と肌が気持ちいい。左手で胸の飾りを弄りつつ、舌は貪欲に口内を探る。上顎のでこぼこした部分を舐めあげると、ジータから「んッ」と鼻にかかった甘い声が上がって、ひどく興奮した。
もう隠すものは何も無い。脚を絡めて秘裂を膝で擦ると、ジータが零した愛液でぬるぬると滑った。気付いたジータが恥ずかしそうにするのですかさず褒める。

「感じてくださったのでしょう?良いことです。」
「でも、恥ずかしいし、」

五月蝿い口を黙らせるため、剣胼胝だらけの手を引っ掴んで自ら秘所に導いた。意図に気付いたジータが怖々手を伸ばして、蜜壷に触れる。ヴィーラの脚はしとどに濡れていた。驚いた顔をするジータに、もう一度告げる。

「好きですよ。」
「……うん。」

心の中で、お、と思う。いい手応えだ。もう少し。
ヴィーラは泥濘に手を伸ばした。クリトリスを掠めて更にその奥を目指す。気付いたジータが身動きしたのでキスとハグで慰めて、誤魔化している内に潤みの出処へ指先を引っ掛けた。

「ひぅ……っ」

1週間前には、ここには触れなかった。初めての刺激に息を呑んだジータが怯えた声を出す。

「ジータさん、好き。大好きですよ。」

可愛いという代わりに愛を伝え、くち、と小さな水音を立てながら指先を其処に埋め込んだ。
今までの反応を見るに、恐らくジータはこういったことを知識として知ってはいても、自ら触ったことすら無いタイプだ。怖がらせないように、いきなり奥を触ることはしない。その代わりに入口をくちゅくちゅ弄って、お互いの性感を高めていく。
不意にジータが指先を動かした。

「んっ……、」

思わず声が出る。ヴィーラの目に世界一可愛い女の子は、瞳を性的な涙で潤ませつつも、これでいいのかなというふうにヴィーラを見上げて教えを乞うていた。
きゅん、と腹の底が疼く。なんだこの可愛い生き物は。思わず噛みつきたくなるような衝動を堪えて乳房のすぐ上の皮膚に口付け、じゅ、と吸う。あちこちに傷跡の残る戦う女の子の体に卑猥な花が咲いた。
それを見たジータが、真似てヴィーラの胸に口付ける。ちゅ、ちゅ、と子猫が舐めるようなキスでは、可愛らしい音がしても跡はつかない。不思議そうに首を傾げる子猫に今度こそたまらなくなってしまって、埋めたままの中指をクイと曲げた。

(可愛い。)

この可愛い子の、あられもない声が聞きたい。

探るように少しだけ奥に侵入する。恥骨の裏側、少しだけ出っ張っている部分を指先が掠めると、ジータがあえかな喘ぎ声をあげた。可愛い。
はじめての女性が膣内で達するのは難しいらしいと聞いたことがあるため、中指で潤みの中を探りつつ、親指の腹ではずっと恥芯を弄り続けた。触れるか触れないかの強さでさわさわと触ると、ジータが息を詰まらせる。そのくせこんなところで負けず嫌いを発揮しているのか、ヴィーラがしたのと同じやり方でヴィーラを触ってくるものだから、ヴィーラの胸には仄暗い悦びが灯った。無垢な少女を自分が染める、背徳的な悦びだった。

「ジータさん、好きです。好き。」
「ぅぅ……、」
「気持ちいいですか?」
「……なんかっ、変な感じ……っ」
「ジータさんのここ、きゅうきゅう締め付けてきて可愛いですね。」
「………ヴィーラさんだって」
「んッ……!」

喘ぎ声の合間に会話をして、お互い緩やかに上り詰めていく。犬のように荒い呼吸音。ジータの中が、ヒクヒクと痙攣した。

「ジータさん、イきそうですか?」
「……ッ、〜〜〜っ、」
「ふふ、可愛い。イく時は、ちゃんとイくって言うのが相手へのマナーなんですよ。」
「い、ッ、イ……ッッッ、」
「待ってジータさん、」

私も、と呟いて、内臓に触れるジータの指に集中する。意識してキュウと締め付けた。
自分のものはあまり弄っていなくとも、ジータをぐずぐずにするここまでの過程で、ヴィーラの性感は十分高まっている。
一緒に達することが出来たらいいなと軽い気持ちで「待って」と言ったものの本当に待てるわけが無いだろうなと思っていたが、意外にもジータは健気に我慢してくれていた。常には無い眉間の皺が悩ましげで、艶やかで、そして……
不意にジータが第一関節を曲げた。お腹側にあるイイ所を指先が押して全身の肌が粟立つ。

「ああっ♡イきます……ッ」

理性がぐずぐずに溶けた、我ながら浅ましい声だった。空いた左手をジータの右手と1本ずつ絡める。力加減を忘れたジータの爪が手の甲に刺さったが、多少の痛みはスパイスだ。

目の裏がチカチカして、一番天辺の高いところで、快楽の実が弾けた。

「あ゛っ……♡」
「ッ……〜〜っっ♡」

背骨を引っこ抜かれるような快感。重なった悦の声。



やがてくたりと全身の力が抜けたジータの横に、ヴィーラも寝転がった。絶頂後特有のだるさと多幸感を抱えたまま、ハフハフと息をするジータに問いかける。

「ねえ、ジータさん。私の好きな人は、誰でしたか?」

情事の色が滲んだままの、快感が色濃く残るとろんとした瞳がヴィーラを見て、夢見るように呟く。

「………………私。」
「そう。好きですよ、ジータさん。貴女は?」
「…………私も好き。」

私『も』好き。
今はそれで満足してあげることにして、真っ赤になった耳に、そっとキスをした。






(20250507)

長い!

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