私と悟と傑と硝子。
きっと私達は何度生まれ変わっても、再び出会う運命なんだと思う。


傑と硝子と再会してから、私達は4人で会うことが増えた。硝子は他校だけど隣の学区で近いからよく学校終わりにマックやファミレスに集まっては他愛のない話で盛り上がったりカラオケに行ったりして楽しんでいる。
普通の学生じゃーん、なんてケラケラ笑いあって、前世の頃の話をしたりして。
学校に行って、授業を受けて、学校終わりに友達と遊ぶ。
命の危険なんてなんもない。血を流して戦うことも、今はプレイしているゲームの中の世界だけ。
平凡な日常がこんなにも幸せだなんて思わなかった。
あの頃はただ毎日が…必死だったから。








「なまえ〜」

\\きゃーー♡五条くーん♡//

「お昼食べよっ♡」
「あれ〜?傑はー?」
「傑ぅ?今日は彼女と食べるんだって」
「…ふーん」
「あ?あからさまに不機嫌なんのやめろって」
「妬いちゃう?」
「もう妬いてる」
「ふふっ。かわいいなぁ、悟は〜」


くしゃくしゃにそのふわふわの髪の毛を撫で回すと、悟が少しだけ頬を赤らめて唇を尖らせる。拗ねてるけど嬉しい…みたいな表情。うーん今日も私の彼氏が世界一かわいい。


「子供扱いすんなし」
「機嫌直して?」
「チューしてくれたら許す」
「んっ…許してくれた?」
「あぁぁぁぁ大好きなまえ〜!!!」


相変わらずチョロいなあ。なんてクスクス笑ってしまう。悟の機嫌も直ってブス共に牽制もできて一石二鳥♡なーんて。悟と手を繋いで教室を後にする。



屋上で一緒にお弁当を食べるこの時間が大好き。
心地よい風が吹いて、悟の透き通るような真っ白な髪の毛がふわりと靡く。綺麗だと、思った。天使がいたらきっとこんな姿をしているんだろうなと、本気でそう思った。


「えーっと…なまえサン?」
「なあに?」
「そんなに見つめられたら流石の俺も照れるんですけど…」


頬を赤らめながらポリポリと頭を掻く悟のおでこにちゅっとキスをする。ぽかんと、口を開けたまま間抜け図をしている顔でさえかわいい。口の端についてるご飯粒だって、零れ落ちそうなくらい大きな瞳だって、悟のその全てが私を夢中にさせる。


「好き。さとる」
「は、」
「すきよ」
「…っ、お゛れ゛も゛ずぎぃぃぃぃ」
「なんで泣くのぉ」


大好き。大好き。時より胸が苦しくなるくらい、悟のことを愛おしく思うの。
ぎゅうっと悟と抱きしめ合う。悟の体温が、匂いが、心臓の音が、悟は生きていると証明している。


「さとる」
「なあに」
「死んじゃだめだよ」
「ふはっ。そう簡単に死なないよ」
「ねえ」
「ん〜?」
「ずっと私の傍にいて」
「うん。ずっとなまえの傍にいるよ」


約束、と小指を絡め合う代わりに甘い甘いキスをした。

中学一年生の秋。ランドセルを背負っていたあの頃より悟の声は少しだけ低くなって、私は初潮がきて、身体つきが変わっていった。
少しづつ、少しづつ、私達は子供じゃなくなっていった。


中学一年生の冬。クリスマスの日に、私達は一つになった。

苦しくて、痛くて…それでも身体が繋がった時、悟がぽろぽろと涙を零しながら「幸せ」なんて笑うから、そんな痛みなんてどうでもいいことのように思えてしまった。胸がきゅーっと締め付けられて、目の前にいる悟のことがただただ愛おしくて、まるで母親が小さな子供にするように頭をよしよしと優しく撫でて、見つめあって、引き寄せられるように甘く蕩けるキスをした。


「っ、動くよ?痛かったら言ってね?」
「んっ、ぅんっ…あっ」


抱かれている最中、悟は何度も私に愛してると言ってくれた。少しでも私が苦しそうな顔をすれば動きを止めて大丈夫?痛い?と心配そうに聞いてくれるし、自分の快楽より私を気持ちよくさせるためにシてくれていたと思う。大切にされていると、愛されていると思った。



幸せだと、思った。
この幸せがずっと続いてほしいと、本気でそう願ったの。










中学三年生に上がると、周りの雰囲気ががらりと変わった。
進路。受験。
前世では私の意思なんて関係なしに高専に行くことが決まっていたから、パパとママに「なまえが行きたいと思うところに行きなさい。どんなところでも、パパとママは応援してるよ」なんて言われた時には思わず目頭が熱くなってしまった。
本当に…パパとママの子供で良かった。ありがとう。大好きだよ。


うーん、と色々と考えていたら、肩をポンポンと叩かれて、振り向く。


「んぅ」
「どうしたの?考え事?」


ほっぺたに傑の指がんにゅ、と食い込む。


「高校どうしようかなあって。傑はもうどこ受けるか決めてる?」
「まあ…だいたいは」
「うそぉ!まだ一学期なのに〜。ちなみにどこ受けるの?」
「今のところ第一志望は○○高校かな。近いし」
「ちょー進学校じゃん。流石優等生」
「ここならなまえも余裕でしょ?」
「ん〜制服かわいい?」
「かわいいよ。ブレザーで。なまえに似合うと思う」
「う〜ん」
「もしかして迷ってる?」
「ちょっとね。傑と一緒の高校とか楽しそうだし」

「おいそこの二人近いぞっ!!!」

「わっ、びっくりした」


いきなり傑と引き離されて目がまん丸になる。
悟はぷりぷりと頬を膨らませながら怒っていてまるで小さな子供みたい。そんな悟がかわいくてかわいくて悟の頭をわしゃわしゃと撫で回す。


「かわいいねえ」
「いや俺怒ってるんだけど?」
「ヤキモチ妬いちゃったの?」
「…俺と硝子が甲斐甲斐しくドリンク取りに行ってる間に傑と浮気しやがってコノヤロー」
「こんなにも悟のことが大好きなのに浮気なんてするはずないでしょばかぁ」
「は?かわいすぎ」
「すき?」
「愛してる」


ンチュ、と唇同士が触れ合う。「キモい」硝子の冷めきった声が聞こえてくるけど気にしない。だって硝子のツンデレはいつものことだからね☆


「で、さっき二人でなんの話してたの?」
「嫉妬深い男は嫌われるぞ五条」
「硝子ちゃんちょっと黙って!!!」
「ん〜傑と一緒の高校受けようかなあって。制服かわいいらしいし、近いし」
「はぁ!?!!」
「それどこ高?」
「○○高校」
「マジ?私もそこ受けるよ」
「え、ほんとに?」
「うん。最悪」
「ひどいっ!」
「えー!硝子も受けるなら私も○○高受ける!」
「じゃあ俺も受ける!」
「いやマジでやめて」
「とか言ってほんとは嬉しいくせに。硝子は照れ屋さんなんだから〜」
「あ?夏油コロス」



「でもさ、」
「うん?」
「もしみんな受かったら…
また4人揃って学校に通えるね」



そう言えば悟と傑と硝子はキョトンとして、そしてすぐに嬉しそうにくしゃりと笑う。


「あーまたクズ共の世話すんのかよ。だる」
「とか言いながら硝子めちゃくちゃ嬉しそうだよ?」
「さっきからなんなのお前」
「つーか俺らはきっと、離れられない運命なんだよ」
「まあだからこの世界でもまた出逢ったしね」
「私達は四人で一つ〜!」
「「いぇーい!」」
「誰?このバカ達に酒飲ましたの」
「硝子。残念ながらこの二人はシラフだよ」
「救いようがねえなあ」


ていうか、これで誰か一人だけ落ちたらどーすんの?
私の言葉に、みんな目を点にして、そして一斉に吹き出す。受かる気満々すぎてウケるんだけど。流石は私達。


「仕方ねえなあ。受けるとこ全部同じにすんぞ」
「待って私達すごい仲良しじゃん」
「仲良しだよ」
「今更?」
「ふっ。なにこれ」


私と悟と傑と硝子。
誰か一人でも欠けたら意味ないの。


「なまえ」
「なあに?」


「俺今すげー幸せっ」


何の曇りもない、まるで太陽みたいなその笑みに
私はいつも涙がでるくらい、嬉しくなるんだよ。


















「「「「さくら咲く〜!!!!」」」」


高校一年生の春。
悟の瞳みたいな綺麗な青空の下、私達は同じ高校の制服に身を包んで、校門をくぐった。
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