黒川イザナは灰谷兄妹の末っ子に甘い

我らが天竺の総長、黒川イザナは
非常に冷徹で残忍な性格で、ケンカの腕前はあの無敵のマイキーに匹敵するレベル。

巷の不良達のあいだで恐れられているS62世代、通称「極悪の世代」を集結させた、それはもう戦才とカリスマ性を合わせもった凄い男なのだ。








「おい、イザナ。もういいんだろ、これ以上は…」
「下僕が俺に指図すんな」


冷たく刺すような声に周りの温度が一気に下がる。このまま総長に殴られ続けたら、コイツはまもなく死ぬだろう。
鶴蝶さんは、それ以上何も言わない。いや、言えるはずがない。鳥肌が立つ程の殺気を滲ませている総長に、誰もが恐怖し何も出来ずにいた。

そんな時。
その場に似つかわしくない思わず蕩けてしまいそうな甘い声と共に、その人は現れた。


「大将〜〜〜♡」


ふわりと靡く制服のスカート。とろんと垂れた目尻に泣きぼくろが印象的なとびっきりの美少女。天竺の紅一点で幹部の一人でもある、あの六本木のカリスマとして有名な灰谷兄妹の末っ子ーー灰谷蓮華。


「…遅え」
「今日ガッコ行ったの、久々に!」
「へえ」
「エラいでしょ〜?」
「ん」


……信じられるか?
ついさっきまで何となく気に入らないからという
理不尽すぎる理由で一人の人間を撲殺しようとしていた男が今は蓮華さんの頭にポンと手を置いてまるで小さな子供にするように優しく頭をよしよしと撫でてるんだぜ????
この光景を初めてみる隊の連中は皆これでもかとばかりに目を見開く。そりゃそうだよな。俺も初めて見た時は驚きのあまりその場からしばらく動けずにいたくらいだ。


「あれ大将、その血なあに」
「あ?今更かよ」
「え、ちょ、待って、ウケる。顔グロすぎwww」


一体何が面白いのか、執拗に殴られて血塗れの人間を指差してケラケラと楽しそうに笑う灰谷蓮華に鳥肌が止まらない。黒川イザナも残酷極まりない人間であることに間違いないが、灰谷兄妹もそれに匹敵する残虐性を持っていると思う。


「……おい。蘭と竜胆は」
「ん〜?ガッコーまで迎えに来てくれたんだけどね。レンに言い寄ってきた男どっかに連れて行っちゃったから知らな〜い」
(((((うわーーー……)))))
「チッ。またかよ」


不機嫌そうに舌打ちをする総長に冷や汗が噴き出す。こえーー…灰谷兄弟も当たり前にこえーけど黒川イザナはもうバケモンだし…………はぁ……帰りてぇぇぇ………


「イザナ…そろそろ集会…」
「あ?」
「いや…」
「カクちゃん。まだお兄ちゃん達来てないから集会しないよ?」


はぁ、とこめかみを抑えながら小さなため息を吐き出す鶴蝶さん。
もう鶴蝶さんが気の毒で涙が出てきそうだよ…!


「あ、おい、そこのオマエ」
「ッ!?」
「キモいからソイツ片付けといてー」
「ウ、ウッス!!!!」
「ねえねえ、集会始まるまで大将はレンと遊ぼ〜♡」
「遊ぶって何をだよ」
「ん〜?ババ抜き?カクちゃんとかモッチーも入れて」
「は、またかよ。ガキ」


わっっっっ笑った…!?!?!?!?!?!?
えちょこれ現実???????強めの幻覚とかじゃねえよな!?!?!?!?


「…ダメ?」
「ダメとは言ってねえ」


あま〜〜〜い!!!!総長、蓮華さんに甘すぎません????差別もいいとこ………いや、ここまで来ると蓮華さんって総長のヨメなんか?????なんかそんな気さえしてきた。あの超絶シスコンで有名な灰谷兄弟も流石に最愛の妹の男が黒川イザナとなると許すしかないだろうし…。


「大将大好き〜♡」
「ん」


まあ、兄妹みたいに見えなくもないけど。どっちにしろ、我らが総長は天竺の紅一点である灰谷蓮華を溺愛しているみたいです。