独占欲

「あ」
「あ?」
「どした希」


無言で指を指せばその先を見つめる2人。
悟は綺麗な顔を歪めてウゲェって顔をして硝子はまたかとため息を吐く。
傑と彼女らしき女が腕を組んで歩いてる。
この前ホテル街で偶然一緒に歩いてるのを見かけた女とはまた別の女みたいだけどそんなこと今はどーでも良い。


「すーぐるっ」


語尾にハートマークつけて奴等に駆け寄り女と組んでる逆の腕にんぎゅうって自分の腕を絡み付ける。


「…………希」


傑は私の顔見た瞬間思いっきりしかめっ面をして女は予想通りはー?ってガンつけくるけどいやお前には興味ねーよブス。


「誰あんた」
「お前こそ誰」
「はー?!私は傑の彼女ですけど!」
「ふーん。1週間前に見た女のがまだマシ。傑なんでこいつに乗り換えたの?ビーセン?」
「は?1週間前!?傑、私達付き合ったの2週間前よね!?何、浮気?!」
「いや、まあ、うん、ごめん」
「…っサイッテー!!」



ーーパッシーーン


ドラマみたいな気持ちいくらい綺麗なビンタ。
彼女だった女は高いヒールで走りにくそうに去っていって私はひらひら手を振る。やばいニヤニヤがとまらない。


「浮気は良くないよぉ傑くん」
「…GPS?」
「まっさかー。偶然だよ偶然」
「最悪」
「何言ってんの。最高のマチガイデショ」


ぶははははっ!下品な笑い方をする悟が携帯をこっちに向けたまま歩いてくる。


「やめろ。撮るな悟」
「ウケる。めっちゃ機嫌悪ぃじゃん」
「これで何度目?ねぇほんとにGPSつけてないよね?」
「めっちゃ疑うじゃん」
「だーかーらー。違うって言ってんでしょ。愛の力よ。愛のち!か!ら!」
「……もうほんと勘弁してくれ」
「うわめっちゃ弱ってるじゃん。カワイソー」
「硝子棒読みすぎ」


ケラケラ笑う悟と私を傑は睨みつけてくるけど頬っぺたが赤く腫れてて全然怖くないんですけどぉ。


「ねぇなに拗ねてんの?あんな女より私のが余裕で美人」
「それは言えてる。お前が一番綺麗だよ」
「五条希の顔好きすぎない?」
「後身体もエロくてすき」
「きも」
「悟は黙って」
「あ゛?なんだと傑」


「傑、あの女と私どっちが大事なの?」
「うわめんどくさ」
「俺は希が一番好き」
「悟には聞いてないですぅ」
「あ?犯すぞ」
「もういい加減にしてくれ」


はーとでっかいため息を吐いてスタスタ歩き出す傑はどうやら本気でキレてるらしい。何、どうせヤリモクの癖にあの女と今日セックスできないのがそんなに気に入らないわけ?


「何あの態度。くっそ腹立つ」
「いや夏油が普通じゃない?何度も女といるとこ邪魔されたら流石にキレるっしょ」
「しょーこちゃんは傑の味方なのぉ?親友なのに!希ちゃん悲しい…」
「私は誰の味方でもない」
「ヒュー!硝子かっけー!」
「だろ」
「あーーーなんか気分落ちた。カラオケ行く人ー」
「「はーい」」
「君たち愛してる」










傑のことが好きかと聞かれたら迷わず好きと答える。
大事な私の友達。数少ない同期。死線を共に潜り抜けた戦友。
それが恋かと聞かれたらビミョーに違う気がするけど、私にとったら傑と悟と硝子はいつだってトクベツなのだ。だから3人にはいつだって私を一番に考えてほしいし、このメンバー以外に優しくなんてしてほしくない。


「4人だけの世界を作りたい。割とマジで」
「真顔やめろ。怖いわ」
「俺はさんせーい!希と硝子と傑のこと大好きだし」
「お前は黙れ」


3人でカラオケ行って喉枯れるくらいまで歌って帰りにマック寄って寮に帰宅したのは22時くらい。
ぎゃーぎゃーアホみたいに3人で騒ぎまくってたら傑に対するイライラはいつの間にか綺麗に消え去っていた。
友達ってスゴイデスネ。


「もしー」


さてもう寝ようかとベッドに入ったら傑からの着信。
時刻は深夜0時過ぎ。


「……」
「傑?」
「……」
「ねーなんで無言?」
「……」
「傑」
「……」
「大好き」
「…………うん」
「傑も私のこと大好きでしょ?」
「…うん」
「ちゃんと言って。あの女より私のことが好きだって」
「…あんな女なんかより希が好きに決まってるだろ」
「知ってる」
「…は〜〜〜」
「ねぇもう怒ってないの?」
「怒ってたら電話なんかしない」
「んは、それもそーか」
「君は本当に独占欲の塊だね」
「傑も悟も硝子も私のモノだからね」
「私達はモノじゃない、意思がある人間だよ」
「正論きら〜〜い」
「最近ますます悟に似てきたね」
「あいつが私のこと好きすぎて真似してくんの」
「それ前に悟も同じこと言ってたよ」
「うわ」



「…しばらくは女作るのやめるよ」
「うん。そーして。死ぬほどむかつくから」



真面目で優しい傑。
きっと私にきつい態度とったから後から気にしてくれたんだよね?でもプライド高いから意地張ってなかなか電話かけれなくてこんな時間になっちゃったんだよね?
可愛い。愛おしい。大好き。
胸がぎゅーって苦しくなる。

宝物みたいに大切な傑を、何処ぞの馬の骨かも知らない奴なんかに渡すわけないでしょ。


// //
top