微睡みの世界からゆっくりと意識が浮上していく。まだ頭がふわふわしていて瞼が重い。
「あっ、ねぇ…しょうこ、起きちゃうよぉ…っ」
「んー?はっ…希が、声出さなきゃ、いいだけだろ?」
「んっ…ああっ、ゃ、むり、むりぃ…っ!ふかい…っ」
「はあ、きもちよすぎ…なあ、もっと深く挿れてい?」
「えっ……やあっ!ぁ、あぁんっ!ふかぃぃっ…!」
「はっ、締め付けやばっ…ねえ、わかる?ココ、ポルチオ。きもちいでしょ」
「ああぁっ…ぁ、だめ、だめっ、そこ、トントン、しないでぇっ……!」
「うそつき。めちゃくちゃきもちよさそうな顔してる」
「あっあっ…んっ、きもちよすぎてっ、あたま、おかしなるぅっ…」
「ん、もっとおかしくなって?ほぉら…希のきもちいとこ、たくさん、トントンしてあげるからっ」
「〜っ………!あっだめっ、くるっ、きちゃうのっ…イっちゃう…っ」
「いいよ。希の最高にえっちでかわいいとこ、見せてっ?」
「あっ…ああっ…さとる、イくっ、イっちゃうっ…!」
「希、希っ…くっ、はぁっ…!」
ーーーは?
あまりの衝撃に完全に意識が覚醒した。
嘘だろ…!?これは夢…悪い夢、だよな?
そう信じたいけど、この生々しい匂いやあいつらの荒い息遣いがこれが現実だと私に知らしめる。
あいつらのことを揃いも揃ってクズだとは思っていたがまさかここまでのクズだったとは。頭痛がするしついでに胃痛もする。
今日は夏油が地方の任務に飛ばされていないから久しぶりに俺の部屋で3人でゲームしようぜと誘ってきた五条にいいよと返事をした今朝の自分をぶん殴りたい。こんなことになるなら絶対何があっても全力で断ってた。
ついでに酒を飲みすぎて潰れた数時間前の自分もぶん殴りたい。
…いや待て冷静に考えろ。私、何も悪くないよな?
悪いのは、間違いなく寝ているとはいえ同級生もいる部屋でセックスするコイツらだろ。
私は、被害者。マジで訴えたいレベルなんだけど。
むくりと起き上がると、目をこれでもかというほど見開いたバカップルが私を凝視した。
マダハダカヤンケ。つか五条、お前なんでまだ希の上に跨ってるんだよ。もしかしてまだヤるつもりだったのか?私もいるこの部屋で?ふざけんな猿かよ。
「帰る」
「えっ…硝子…えっ?」
「しょーこー。お前起きてんなら声かけろよ」
「は?最中に声かけれるわけねーだろクズまじでいっぺん死んでこいふざけんな」
「はは、ガチギレじゃん」
ギロリと睨んだのに五条はヘラヘラ笑いながら希にキスをして「硝子に希のえっちな声聞かれちゃったね♡」なんて囁いていてマジでこいつクズだなと改めて人間性を疑った。
対する希はみるみるうちに顔が真っ赤に染まっていって唇をはくはく動かしている。
良くも悪くもいつも堂々としていて自信満々の希がこういう反応をするのは意外だったけどそれで私のイライラが消失するわけではない。
はあと長いため息を吐いて「じゃ、まじで帰るから」と手をひらひらさせて五条の部屋を後にした。
あー…ヤニ吸いたい。
『もしもし』
『あ、でた』
『硝子。こんな時間にどうかしたの』
『起きてたの?』
『いや誰かさんに起こされた』
『あーゴメンゴメン』
『全然良いけど。それより本当にどうしたの?』
『聞いて驚くなよ』
『え、なに、怖いんだけど』
『セックス』
『は?』
『セックスしてた』
『…誰と誰が?』
『五条と希』
『どこで』
『五条の部屋。あいつら私が寝てると思って普通にヤってたんだけど訴えてもいいかな?』
『ふっ』
『おい夏油、お前今笑っただろ』
『やっぱり希の喘ぎ声ってエロい?』
『死ね』
同期がみんなクズ。
「硝子。おはよう」
次の日。頬を赤らめてもじもじしている希が部屋を訪れた。
普通に「おはよ」と返せば、希は少しホッとしたような顔をして、まあでもそうなるわなってどこか他人事のように思った。
だって同級生にヤってるとこ見られるなんて、普通に考えて詰んでる。私だったらこの先生きていけない。
「硝子、私ね…」
でも私は忘れていた。
この女が“普通”の人間ではないことを。
「硝子に見られて…興奮しちゃった…かも…♡」
「は?」
「だから、また見てもいいからね?その…私と悟の…エッチ…♡」
絶句。
希は恥ずかしそうに頬を赤らめてるけど、恥ずかしいならそんなふざけたことを言わないでほしい。
ていうか、まじか。まじなのか。まじでコイツ、頭イかれてんな。呪術師だから?毎日吐き気がするような化け物ばっかり祓ってるからコイツは頭のネジがどこかに飛んでいったのか?そうなのか?そうだったら仕方ない…わけねえだろ可笑しいだろ頭痛いわ。
無言で立ちすくんでる私に希は不思議そうに首を傾げると、手をギュッと握って指を絡めてきた。いやこれ恋人繋ぎ…。
「硝子。教室、行こ?」
「え、うん」
無意識にでた言葉は、信じられないくらい小さな声だった。
「希。硝子。おはよー」
「おはよー」
「死ね五条」
「挨拶がわりに死ねは酷くない?」
平然と悪びれる様子がなくケタケタと笑っている五条に蹴りの一つでもいれてやりたいところだがどうせ無下限で触れることさえできないのだろう。クソ、チートな術式もちやがって。
希は一服してくる〜と、来て早々に教室から出ていって、思わずため息を吐く。
五条はニタニタ意地悪い笑みを浮かべながら近づいてきて、肩をぐいっと組まれる。
「硝子ちゃーん。昨日はゴメンネ?」
「死ね」
「さっきからそればっかじゃん。それに俺、最強だから死なないよ?」
「うっっっっっざ」
あまりのウザさにげんなりする。もうなんでもいいから私に構うな。五条の手を振り払って自分の席につくと机に顔を突っ伏す。先生がくるまで寝ていよう。昨日誰かさん達のせいで全然寝れなかったし。そんなことを思って瞼を閉じた瞬間、五条の気持ち悪いくらい上機嫌な声が耳に響いた。
「公開プレイって結構良いもんだね♡」
「……は?」
思わず顔を上げると、五条は頬杖をつきながら此方を見据えていた。
「男だったら希のえっちな姿見たら瞬殺だけど、硝子は女の子だし。結構ハマっちゃったかも、公開プレイ♡」
コイツ…!
私が起きるの分かってわざとヤったな。
「…このクラスにまともな奴はいねーの?」
「え〜?今更じゃない?」
あー…マジで一回死んでくれねーかな。
とりあえず、今度七海と被害者同盟を組もうと思う。