好かれている自覚はある。
希にとって初めての同性の友達で、親友で、喫煙同盟を組んでいて、同級生で。
ーーそれから?私と希を繋ぐものって、他に一体何があるのだろう。

ふと、思う。
神の最高傑作とも言える美しすぎるあの女の瞳が、私だけを写したらいいのに、なんて。
そんな馬鹿げた思考が私の頭を過ぎるたび、私は自分が自分でいられなくなる気がして、恐ろしくなる。


「さとる、」


鈴のような美しい声であの男の名前を呼ぶたびに、私がどうしようもない嫉妬心に襲われることを、絶対にあいつは気付いていない。いや、気付かれては、いけない。もしも私のこの気持ちを希が知ってしまったら。その時はーー。


「硝子?」


ハッとして顔を上げると、希が机の前にしゃがみ込みながら心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
今、希の瞳の中には、私だけしか存在していない。その事実にどうしようもないくらいの幸福感に満たされていく私は、きっともう、手遅れなんだと思う。



「五条は?」
「悟?トイレ行ったよー」
「ふーん。私、眠いからちょっと寝る」
「硝子、最近隈凄いね。ちゃんと眠れてる?」
「普通に寝てるよ」


嘘、だけど。最近はずっと、希のことばかり考えて、気付いたら朝になっていることがほとんどだったから、まともに眠れていない。
将来医者を目指している自分が一体何をしているんだって、いっそ自嘲さえするくらい、私の頭の中は希のことでいっぱいだった。

希は、私の目の下の隈をそっと指で触れて、その美しいヘーゼル色の瞳で、私をジッと見据える。
お互いの吐息がかかる程近い距離で見つめても、この女はあら一つない、作り物みたいに綺麗な顔だ。


「好きだよ、硝子」


どくりと、心臓が嫌な音を立てる。
絶対に、希にだけは、この気持ちがバレてはいけない。何があっても、絶対に。
希が私のこの気持ちを知った時、希はきっと、いや絶対に、私のことを幻滅する。

希に幻滅されてもいいから、自分だけを見てほしい。
幻滅されるくらいなら、希にこの気持ちをひた隠しにしながら、希にとっての特別な“親友”であり続けたい。
2つの思考が行ったり来たりして、どちらも私の本音で、矛盾していて、ちぐばぐだ。



「あっそ」



結局私は、希を失うことを何よりも恐れている。
興味なさげにそう呟いて、希の指を軽く手で振り払うと、希は一瞬、ほんの少しだけ、淋しげな瞳をした。


「つれないなあ、硝子は」
「それより良い加減、寝かせろよ」
「ねえ、硝子」
「なんだよ」
「私はいつだって、硝子のことを見てるよ」


「気持ち悪いこと言うな」


嘘だらけで、矛盾だらけで
嗚呼なんて、滑稽なんだろう。



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家清(高専)

両片想い
希ちゃんに恋心がばれて今までの関係性が壊れるのを恐れている硝子ちゃんと、硝子ちゃんにずっと片想いしていて(と思い込んでる)良い加減振り向いてよってもやもやしてる希ちゃん
ちなみに夏油はそんな2人の恋心に気付いていて、五条はあの2人仲良しだなーくらいにしか思ってないw

こんな美女2人のじれったい関係性が好き←