いきなりだが、私には前世の記憶がある。
前世の私は24歳のOL(彼氏なし)で、熱狂的なアニオタだった。
特にどハマりしたのは「呪術廻戦」という漫画で、それはもう部屋中推しのグッズだらけで遊びに来た友達は大抵ドン引きしていた。
ちなみに私の推しは五条悟。
(そうです私は五条の女)
はじめて素顔を見た時にビビビッときて完全に惚れてしまった。そこからはもうどっぷりと沼にはまりいつのまにか抜け出せなくなっていた。
恐るべき五条悟…。

そんな至って平凡な私に突然悲劇が襲った。
仕事帰りの帰り道で通り魔に刺されて呆気なく死んでしまったのだ。
死に際に思ったのは五条、希ちゃんとお幸せにな…。と、やはり大好きな彼のことだった。
五清が公式になってすぐにあの世に逝くなんて…
せめて五清の結婚まで見届けてから死にたかったよ…こんなんじゃ死ぬに死にきれない!


そんな未練を残していたからなのか。
目が覚めたら私は赤ん坊になっていた。


それから15年の月日が過ぎた。
前世の記憶が残っていたからと言って特別何か起こるわけでもなく、前世の時同様平凡な日々を過ごしている。
しいと言えば、この世界には「呪術廻戦」という漫画が存在しないことだ。この事実に私は果てしないショックを受けたが、だからといって私にできることは何もない。私は毎日、心の中で五条悟の幸せを祈り続けていた。





「でさ〜こないだ彼氏がー」


高校に入学して隣の席だった女の子とすっかり仲良くなってこうして学校帰りにファミレスに寄ってはお喋りに花を咲かせている。え、勉強?なにそれおいしいの?まあ、JKなんてみんなそんなものでしょ。

いっちゃん(友達)の中学時代から付き合っているという彼氏の愚痴という名の惚気話を聞きながら、私はカルピスをズビズビ啜っていた。
いいなあ、彼氏かー。そんな青春、私もいつかしてみたいな〜。
そんなことをぼんやりと思っていたら、目をこれでもかと言うほど見開いてるいっちゃんがある一点を凝視していた。
そういえば店内がやけに騒がしいな。
なんだろう?とその騒ぎの中心に視線を向けて、私は死んだ。


「うわ…すごい美男美女…」
「モデル集団…?」
「サインとかもらったらまずいのかなぁ…?」
「ダブルデート??」
「顔面偏差値高すぎない??」


嘘だろ…いやマジで…?????
こんなの…どう見ても…

生さしすせ じゃん!!!!!!!!!!!!!


「どこの席にするー?」


透き通るような色素の薄い金色のサラサラロングヘアーに彫刻のような美しすぎる顔。
生 清宮希。
何度もクオリティ高めの希ちゃんコスをしている人をインスタで見てきたけど、その非じゃないくらい美しいわ……………やっぱり本家はオーラがすごい………いやまじでこの子人間?人間じゃないレベルだよこの美貌は…性格がいくら…その…あれでもこの外見だとなんでも許せてしまう………流石は女神様。


「私あの席がいい」


黒髪ボブでとろんと垂れた大きな瞳に泣き黒子の童顔なのにとっても色っぽい女の子。
生 家入硝子。
いや…硝子さぁん…かんわいっ………まじでかわいいが詰まってる……お人形?貴女は生きてるお人形さんだったの…?それなのに色気むんむんなんてズルくない…???てかさっきから思ってたけど清家腕組んでるのかわいいたまらん萌える……生清家のイチャイチャ尊い……。


そして気付いてしまった。
硝子ちゃんが指差した席は私といっちゃんが座っているすぐ隣の席だった。
う…嘘でしょ!?バッといっちゃんを見ると目がハートマークになっていた。いや気持ちは分かる。きっと私の目もハートマークになってるから。

私が転生した世界はどうやら「呪術廻戦」の世界で間違いないようだ。き、気付かなかった…。だって私呪霊とか全く見えないし。ていうかなんだ?平行世界なのか?よく分からんがこんなに幸せなことがあってもいいのだろうか。まさか生さしすせをこの目で拝める日がくるなんて…私明日死なないよね?え、大丈夫だよね?フラグじゃないよね???


「このチョコパフェと苺パフェと…」


みんなの注文をまとめて店員さんに注文しているママ。
生 夏油傑。
かっ…かっけー…。かっこよすぎるわ生夏油…。そりゃあ五条(推し)よりモテるのも納得ですわ…俳優顔負けの超絶塩顔イケメンですやん…その涼やかな目元が色っぽいですね。


「すぐるぅ!俺このパンケーキも食べた〜い♡」


ブッッッッッッ!!!!
やっべ鼻血でた…いっちゃんを見たらいっちゃんも鼻血でてた…同士よ。
生 五条悟。
なんなんだこの生き物は…天使なのか??え?天使だよな??ふわふわの真っ白な髪の毛に同じ色の長いまつ毛。そして宝石のようにキラキラと輝く碧色の瞳。まさに異彩を放つ美しさ。
いや待てよ…私の推し…美しすぎないか…??
ちょっとこれはやばいぞ…私の心臓がもたない……!


いっちゃんは鼻血を出しながらはあはあしている。ちらっと周りを見渡すと女性客も男性客もなんなら店員も全員が全員さしすせを眺めながらはあはあしていた。え、これ大丈夫なの…?


「あ、希の苺パフェ一口ちょーだい」
「いいよ〜。悟のも一口ちょーだい」
「はいあーん」
「あーん。ん〜おいし〜!」
「希〜俺にも早くちょーだい」
「さとるーあーん」
「あーん。んー!甘くてうまあー」
「ねー♡」
「ねー♡」


死ぬ!!!!!!萌え死ぬ!!!!五清〜〜〜!!!!流石公式cp!!!!刺激があぁあああああ!刺激が…強すぎるうううう
パフェをあーんしあってからのねーって顔を見合わせてニコッてするのなんだよかわいいかよただのラブラブ美男美女カップルかよ!!!!!!!!
いっちゃんが危うく失神しかけてる。いや気をしっかり持て同士よ!!!


「あ、悟。口にアイスついてる」
「とって〜」
「はいはい」
「すぐるぅ、私のもとってー」
「希今わざとつけただろ?」
「いいから早くとって!」
「はいはい」


嘘…だろ!?!?なんだこの萌えのオンパレードわ!!!!夏五からの〜夏清…だと?!!!!!?
ナチュラルに五条(推し)の口元についたアイスを指でとってそのまま舐める(鼻血)夏油に構ってほしくてわざと口元にアイスをつける希たんとか…………なんなんだよぉぉぉもう頭が萌えオーバー(?)でいっぱいいっぱいだよぉぉぉぁぉぉ


「夏油。あんまりこいつらを甘やかすな」
「んー?そんなに甘やかしてるつもりはないけど」
「これだからクズわ」
「なんだい硝子。もしかして嫉妬してる?」
「はあ?」
「冗談だよ。そんなに怒らないで」
「頭を!撫でるな!」


かっかわいいぃぃぃぃ!!!えっ夏家かわいすぎんか?????五清が公式になってから夏家の公式化を待望としているオタ共がこの光景を見たら吐血してそのまま死ぬんじゃないか?????てかこれはやっぱりダブルデートだよね???五清は公式だから五清♡夏家のデートだよな???間違いないよね???異論は認めない。


「………っ!!!!」


そして私は見てしまった。
見てしまったのだ。
夏家がドリンクバーで席を立ってから(ラブラブかよ)五清が微笑み合って………キスをしたのだ。
そう、キス……キスを…。


ブッッッッッッ!!!!!!!!(2度目)
ドラマのワンシーンのようなあまりに美しすぎるその光景に、今度こそ店内の客と店員が失神した。


五清…………尊い…………(バタン)