「ななみん♡今日もかわいいね♡」
「ななみん♡任務で怪我したんだって?大丈夫?痛いの痛いよ飛んでけ〜!」
「ななみん♡これななみんに似合うと思って買っちゃった♡」
買っちゃった、なんて可愛らしく言っているが恐らく値段は全く可愛らしくない所詮有名ブランドの高級腕時計を渡されて、ひくりと顔が引き攣るのが分かる。
「こんな高価なもの受け取れませんよ」と呆れながらそう言えば、清宮先輩はきょとんとして、そしてすぐに不思議そうに首を傾げた。
「なんで?あ、もしかしてこのブランド好みじゃなかった?」
「いえ、そういう意味ではありません。ただ、こんな高価なものを清宮先輩から頂く理由が私にはないので」
「理由?なんでプレゼントを貰うのに理由がいるの?」
「一般常識から考えて、“ただの先輩”から何十万とする品物をプレゼントされたりはしないでしょう」
目頭を揉みながらはあ…と深く息を吐き出せば、清宮先輩は「そっかぁ」と悲しそうに眉を下げて、そしてぽろぽろと涙を零した。
ーーは?何故泣く。やめてくれ。私は何も間違ったことは言っていないだろう。そうは思っても、流石に(間違ったことは言っていないとはいえ)自分の言動のせいで女性が泣いてしまったら少しばかり良心が痛むのも事実で。さてどうしたものかと思考を巡らせていると、心配そうな声色が談話室に響いた。
「…希?どうしたいんだい?」
ハッとして声がした方に視線を向けると、そこには同期である灰原が尊敬していて、私も唯一先輩の中でまともな人間の部類だと思っている夏油先輩がいた。
思わずホッと胸を撫で下ろす。
夏油先輩なら上手く清宮先輩を宥めてくれると思ったからだ。
「……すぐるっ…」
すぐに夏油先輩に駆け寄りぎゅーと抱きつく清宮先輩。
はたから見ると恋人同士にも見えるその距離感の近さに、やはり清宮先輩は距離感が狂ってると眉を顰める。
「希。どうして泣いているんだい?」
「……ななみんが、」
「…七海が?」
目をすっと細め私を射抜くその瞳には明らかに怒気が含まれていて、嫌が汗がダラダラ頬を伝う。
嘘だろ。いや、嘘だと言ってくれ。
まさか唯一まともだと思っていた先輩が、そんな。
「七海」
「いや違います。誤解ですよ。私は何もしていません」
「何もしていないのに何故希は泣いているのかな」
「それは私の方が聞きたいです」
思わずため息をこぼすと、清宮先輩が慌てたように「待って…すぐる、違うの」と夏油先輩に訴えかけて、未だぽろぽろと溢れている涙を夏油先輩がハンカチで拭ってあげている。
…恋人同士、ではないよな?
五条先輩と清宮先輩が交際していることは間違いないが、明らかに夏油先輩と清宮先輩の親密度がただの同期の域を越している気がする。
「じゃあ希はなんで泣いているの?」
「ななみんがっ…私がななみんの為に買った腕時計を、受け取ってくれなくて」
「…そうか」
頼む。頼むぞ夏油傑。信じさせてくれ。
呪術師にもまともな奴がいるという希望を、私はまだ捨てたくないのだ。
「七海」
「はい」
「希が、忙しい時間を割いてわざわざ後輩のことを想って購入した物を受け取らないなんて、一体どういうつもりなんだ」
「……いや、そんな高価な品物、先輩から頂けませんよ」
「希の気持ちを無下にすると言うのか」
「……」
キッと鋭い目つきで睨まれて、私は絶望した。
やはりいないのだ。呪術師には頭のおかしいイかれた奴しかいないのだ。
清宮先輩は夏油先輩から離れると、私の元まで駆け寄り瞳に涙の膜を張りながら上目遣いで口を開いた。
「ななみん…貰ってくれないの…?」
結局選択肢なんて、最初から一つしか与えられていないじゃないか。
後日
「七海ィ」
「なんですか、五条先輩」
「その腕時計、希から貰ったんだって?」
「…まあ、貰ったというか押し付け「要らないよな?」
「はい?」
「そんな高価な腕時計、一年坊主には勿体ないよな?」
「……」
「今すぐソレ、俺にちょーだい?」
「は?」
「希からのプレゼント、俺にくれるよな?七海ィ」
呪術師だからクズなのか。
クズだから呪術師なのか。
どっちにしろーー呪術師はクソだ。
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