例えばの話をしよう。いつもクールでツンツンしてる子が不意に見せるふにゃりとした笑顔にときめくように、いつの時代も人という生き物は“ギャップ”というものに弱い。
それは勿論私も例外ではなく…
「えーっと…硝子さん…?」
「ん…」
「ん…じゃなくて…えぇなにこれめちゃくちゃかわいいんだけど…」
「……」
「どうしたの?甘えたさんなの?」
「……ねむい、」
「うん。硝子は毎日頑張ってるもんねえ。えらいえらい」
「ばかにすんな」
「ふはっ。してないしてない」
今日は悟と傑が地方の任務に行っていて帰ってこないから硝子が私の部屋に来て久々のお泊まり会。2人で手を繋ぎながらレンタルビデオ店に行って何個か映画を借りてそのままコンビニに寄っておつまみを買って寮に帰宅。2人で選んだ映画を見ながらビール片手におつまみってもう最高すぎない?
2つ映画を見終わる頃には私も硝子もほろ酔いで気分が良いまま自撮りで2ショット撮りまくって悟と傑に送信。『希も硝子もめちゃくちゃかわいいじゃーん♡早く希に会いたいよ〜(;ω;)』『2人ともかわいすぎる』すぐにこんな返事がきて硝子とコイツら私らのこと大好きじゃーんなんてケラケラ笑いあった。
お風呂に入ってそれぞれ自由に好きなことをしながら過ごしていたら、漫画を読んでいた私の膝の上にのしりと硝子が跨り座ってきてそのままぎゅーっと抱きつかれる。……は?一瞬思考が停止して、身体が硬直する。硝子とハグもキスもなんなら身体の触りっこもしてるけどそれは勿論いつも私からで硝子からされることなんて滅多にない。…もしかして硝子結構酔ってる?かたまる私に硝子は頬をすりすりと擦り寄せてきてあまりのかわいさにリアルに心臓が爆破しそうになる。いやいや……は?いくらなんでも流石にかわいいが過ぎるんですけど。なんなの?硝子ちゃんは天使なの?神なの?無敵なの??
ーーそして冒頭に至る。
「希〜…」
「ん〜?なあに、硝子」
「希…」
「もぉぉぉ…しょーこが可愛すぎて死にそう…」
「しんじゃやだ」
「は???」
「顔怖っwww」
かわいすぎてかわいすぎて愛おしすぎて一周回ってイライラさえしてくる。もうなんなのこの子は…!読みかけの漫画を閉じてベッドに置くとんちゅっ、と硝子の柔らかな唇にキスをする。一瞬キョトンとして、そしてすぐにふふっと笑った硝子が私の唇をペロリと舐めてくる。
「甘えたな私は嫌い?」
は?好きに決まってるでしょ(怒)(怒)(怒)
「ねえほんとにこのまま寝るの?」
「……いやなの?」
「いやむしろ私は死ぬほど嬉しいんだけどさぁ…」
ぎゅうっと硝子に抱きしめられたまま眠れるなんて本当幸せでしかないんだけど、こんなに甘えてくる硝子なんて珍しすぎてちょっとだけ心配にもなってしまう。
「硝子ちゃーん…」
「…ん?」
「もしかして、なんかあった?」
「……なんで?」
「こんなに甘えてくる硝子ちゃん珍しすぎてなにかあったのかと心配になりまして」
「なんでいきなり敬語」
「……なんとなく?」
「ふふっ」
「ねぇぇぇ不意にそんな顔して笑わないでよぉ…心臓に悪い…」
「希私のこと好きすぎじゃない?」
「おかげさまで…」
にひひっと悪戯っ子のような笑みを浮かべた硝子は私の唇にちゅっと触れるだけのキスを落として、そしてじーっと目尻の下がったとろんとした瞳で私のことを見つめてくる。はー…かあいいねえ。
「希は本当に綺麗だな」
「ありがとぉ」
「お前ほど美しい女を私は今まで生きてきた中で見たことがない」
「えぇ?本当にいきなりどうしちゃたのしょーこぉ…」
「別に。私はただ事実を言ってるだけ〜」
「…それを言うなら硝子だって綺麗だよ。硝子目当ての補助監督が何人いるのか知らないでしょう?」
「…知らない」
「うん。硝子ちゃんは知らなくていいの」
「なんだそれ」
だんだんと瞼がしょぼしょぼしていく硝子の頭を優しく撫でる。ちゃんと寝てる?ちゃんと食べてる?ちゃんと休めてる?そんなことすら分からなくなるほど、私達は日々激務に追われていて、蓄積されていく疲労に見て見ぬフリをしながら毎日を必死に過ごしている。
「……前はさあ」
「うん」
「バカみたいに4人いつも一緒だったじゃん」
「ふふっ。うん。そうだねえ」
「だけど今はほとんど任務被らないしそもそも授業だってあんまでれてないし…」
「ほんと呪術師ってブラックだよね」
「すこし…ほんの少しだけ、さみしいなあって、思った。…………ぅん、さみしい…」
「…………え?」
「……」
「え?硝子?硝子ちゃーん?うそ、え、寝ちゃったの?このタイミングで…!?」
「……(ギュッ)」
「…………んん゛っ。か、かわい…っ」
すやすや。私に抱きついたまま天使の寝顔で眠る硝子のあまりのかわいさに思わず鼻血が出そうになるのを必死に堪える。
「もぉ……さみしかったら素直にさみしいって言えばいいのに」
甘え下手というかなんていうか。
ていうか、硝子って実は私が思ってるよりずっとずっと私達のこと大好きなんじゃ…?
「はあ………かわいすぎる……。
ていうか、録音しとけばよかったぁ…」
硝子を抱きしめながら、私も夢の世界へと旅立った。
「おはよぉ♡しょーこ♡」
「……おはよ。は?近」
「照れなくてもいいってえ♡硝子は私がいないと寂しくて泣いちゃうくせにっ♡」
「は?泣かないし。ていうか離れて」
「ねえチューしてい?」
「コレ会話成り立ってる???」
「チュー♡」
「きしょ」
めちゃくちゃツンケンしてるのに少しだけ頬が赤く染まっている照れ屋で甘え下手で本当は寂しんぼの硝子のことが愛おしくて愛おしくてたまらない。
「たまには素直になりなよ。
まあ、そんな素直じゃない硝子も愛してるけどぉ」
「はあ?」
結局はどんな君だってだあいすき。
とりあえずこのことは悟と傑に報告しようと思う。
ーーーーーー
クズトリオは硝子のことがダイスキ!
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