はじめは“あーようやく付き合ったのか”くらいにしか思わなかった。
大切な親友と妹のように大事に思っている子が二人並んで幸せそうな顔をして交際報告してきた時は、此方まで幸せをおっそわけしてもらえたような気分にさえなった。
それが少しづつ、本当に少しづつ。
もう希と一緒に抱き合いながら眠ることはないのかな。
前は何かあると悟より私を頼ってきていたのに、もう悟の次になってしまったのかな。
彼氏の悟を優先するのは当たり前のことなのに、その事実にほんの少しの寂しさを覚えるようになった。
「硝子。聞いてくれ」
「なんだよ、とうとう女孕ませたか?」
「…君は私の事を一体なんだと思ってるんだい?」
「ヤリチンクズ野朗」
「即答だな」
「常日頃から思ってるからな」
「まあ否定はしないけど」
「いやしろよ、私が悪者みたいになるじゃん」
「流石に避妊はしてるよ?」
「そういうとこはちゃっかりしてるもんな」
「……」
「で?」
「で?」
「いやなんか聞いてほしい話あるんじゃないの」
「あー………………硝子はさ」
「うん」
「悟と希が付き合って寂しい?」
「いや全く」
「あ、そう…」
「何、お前まさか寂しいの」
「……………………少しだけ?」
「はーーーー…でたよ。夏油のシスコン」
「シスコン?」
「お前、無自覚かもしれないけど相当希のこと溺愛してるからな」
「いや、可愛がってる自覚はあるよ?」
「可愛がるとかそういう次元の話じゃないから。だってお前、希に呼び出しされたら夜中でもすぐ飛んでいくし希に買い出し頼まれて戻ってきたらやっぱりそれいらないから別の買ってきてって言われても文句一つ言わずにそのまままた買い出し行くしあいつ偏食だから外食の時は希が食べれるものがあるとこしか行こうとしないし」
「……」
「他にもーー「うん、もう分かった、大丈夫」
「重度のシスコン野朗め」
「否定はしません…」
「あいつ元々わがままなとこあるけどそのわがままに拍車がかかったのって絶対夏油のせいだと思う」
「なんか私もそんな気がしてきた…」
「まあさ、私から見ると希も相当ブラコンだから、お互い様なんじゃないの?」
「まあ好かれているとは思うけど」
「だから寂しがる必要なんてないと思うけどねー」
「え、まさか私、慰められてる?」
「自惚れるなクズ」
「すいません」
「すぐるぅ、しょーこぉ、なんの話してんのー?」
さっきまで悟と話していたはずの希が私を後ろから抱きしめて、その瞬間にふわりと甘い香りが漂う。悟の姿がないからあいつはトイレにでも行ったんだろう。
「んー?夏油が希のことを大好きすぎるって話」
「えっ」
「おい硝子」
「嘘だろ。照れてんの?」
「すぐるー♡私も傑のことめちゃくちゃ好きだよ♡傑のかっこいいところも私に激甘なところも優しいところもママみたいなところも強いところもぜーーんぶ大好き♡」
「…ハイハイ」
「ははっ、顔真っ赤じゃん。ウケる。写真撮ろー」
「傑かわいい〜♡硝子、後で私にも写真送って!」
「もち」
「やめろ。消せ」
「「絶対消さない♡」」
「はーー…」
「お前ら何集まってわちゃわちゃしてんの?」
→