「名前、オレと結婚しない?」



「はい?」


ファミレスの呼び出し音に呼ばれて向かえば、それはメニューの注文ではなく、雰囲気のかけらもない真っ昼間のプロポーズだった。突然意味不明なことを言い放ったイルミさんの向かいでは、イルミさんのご友人のヒソカさんも目を丸くしている。


「ちょっと前から縁談の話がたくさん来るようになってさ、母さんがうるさいんだ。どうすればうまく断れるかヒソカに話してたんだけど、手っ取り早く誰かと結婚してしまえばいいじゃないかって話になって」


「まさかそれで突然名前にプロポーズするとは僕も思わなかったよ」

「誰も思わないですよ…」

「それで、返事は?」

「返事も何も、私たちそんな関係じゃないじゃないですか!」



イルミさんはたまにこのファミレスにご飯を食べに来るだけのお客さんだ。ひょんなことからこうして名前を呼び合い、会えば話をする程度の仲にはなったが、間違っても夫と妻になるような関係ではない。まず付き合ってもないし、ファミレス以外で会ったこともない!


「そうか、残念だな。名前ならありだと思ったんだけど」

「へぇ、そうなのかい?ちなみにどこらへんが良かったの?」


あ、それは私もちょっと聞きたいかも。今後の参考に。

え?と首を傾げたイルミさんの表情を伺いながら、内心、ほんの少しではあるがわくわくしながら答えを待つ。割と長く悩んだ末のイルミさんの答えは、





「……………呼べば来るところ、かな?」


そりゃあんたが客で私が店員だからだ!!


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