月明かりだけが辺りの暗闇を照らす薄暗がりの世界。

部屋に差し込んだ僅かな月光が、壁に付着した乾ききっていない赤黒い血を照らしている。先刻まで場を圧倒していた殺気と喧騒が嘘だったかの様に、今は夜の静寂だけが存在していた。
血塗れで倒れている数人の死体もその静寂の中に溶け込んでいる。

今回の任務は、里の機密情報を盗み取った抜け忍達の討伐及び情報の奪還。端的に言えば敵の殲滅となる。その為に敵が根城としている屋敷に潜入し、暗殺を決行した。敵を始末した後は盗まれたと思われる情報の一切合切を回収し、情報の痕跡を隠滅しなければならない。

死体を調べるが、この場に倒れている者達は目当ての機密情報に関する物は所持していないようだった。
今の所それらしき物はまだ見つけられていない。
部下達に連絡を取ろうとインカムに触ようとするが、それよりも先に耳元で機械音が発生した。


「カカシ先輩、敵の殲滅完了です。先輩が相手をした忍達で最後だった様です」

「了解。じゃ、目標物の捜索に当たる。お前はそのまま見張りを頼む」
「分かりました」

プツリ、と電波が途切れる。

通常、こういった奪還任務では先に捜索隊がターゲットの所在を把握してから敵地への潜入に取り掛かるのだが、今回の任務内容は正確な情報を伝えられたのは場所と敵の数のみだった。肝心のターゲットがどういうものであるのかは聞かされておらず、唯一聞いたのは「巻物や道具、人など情報を持っていると思わしきものの排除及び回収」というなんとも曖昧な命令だけだ。


「イタチ、目標物は?」
「まだ見つけられていません」