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「この度はこんなに素晴らしい賞をいただけたこと、大変光栄に思っております。すごく嬉しいです。ありがとうございます。新人賞というこの賞のおかげでようやくこの道のスタートラインに立てたという気持ちです。
それに、今年出会った作品はどれもわたしの中で今までにない挑戦ばかりで、特に今一緒に受賞した花江さんとか斉藤さんとか雨宮さんとか一緒に切磋琢磨頑張ってきたと思ってるんですけど、今年同じ賞を取れたことで、自分がやってきたことは間違ってなかったんだなって、とても自信になりました。そんな仲間や、助けて支えてくれた先輩方、事務所やスタッフのみなさん、そして応援してくださるファンのみなさんのおかげで今のわたしはここに立てています。本当にありがとうございました。憧れの先輩方の背中を目指して、超えるくらい、今後もより一層頑張ります。末永くよろしくお願いします。」
いつもどんな現場でも、ヘラヘラと屈託のない笑みを浮かべながら「あ〜小野さん〜〜!」といって駆け寄って挨拶をしてくれる後輩、それが久保瑞希。そんなだから、自然と気にかけてしまうのが先輩ってやつで。
いつものふわふわとした雰囲気はなく、舞台上の彼女は頼もしいくらい真っ直ぐ前を見ていた。こっちの背筋も伸びるくらいに。式も終わり、念願の新人賞をようやく勝ち取った目の前の彼女はどうやらお疲れの様子だ。
「瑞希ちゃん、おめでとう」
静まったロビーのベンチに横たわっていた瑞希ちゃんの頬に冷たい缶コーヒーをのせる。ウソ、カフェラテね。甘党なの彼女。
「ひっ!小野さん?!」
飛び起きた彼女が慌てて頭を下げたから思わず笑ってしまった。
「花澤さんがロビーにいったっきり帰ってこないって言ってたからさ」
「すみません、、恥ずかしい、、小野さんおめでとうございます、主演男優賞。」
「ハハ、ありがとう。瑞希ちゃんこそ、新人女優賞おめでとう」
「ありがとうございます。でも、、悔しいのでまだまだ、頑張ります。主演女優賞とって小野さんに追いつけるくらい」
「じゃあ俺も気ぬいてらんないな〜」
へへっと照れ笑いを浮かべる瑞希ちゃん。彼女がデビューしてから、事務所は違えど、何度も共演したし色んな縁があってずっと見守ってきたが、見かけによらず、意志の強い子だと最近見ていて思う。そして同時に、なかなか缶を開けられない彼女に「ひ弱かッ」とツッコミながら開けてあげられる距離感とか「へへ、やったー」と頬を緩められる距離感とか、他人にはあまりない反応に、優越感を感じる。
「そういえば花澤さんに、ハンサムな小野さんと並ぶと一層モデルっぽいって言われました〜神谷さんに文句言われそうだなって思いましたけど」
「言うね〜〜間違いなく俺がディスられるね。またラジオきてよ、おじさんとスタッフが全力で新人賞祝うよ」
「わたし結構頻繁に呼ばれてません?そろそろファンの方に怒られそう」
「しょうがないでしょ、うちのスタッフが瑞希ちゃん推しなの」
「職権乱用すぎる」
「あっそうだ。瑞希ちゃんの衣装姿を撮ってこいって言われたんだった。娘の表彰式みたいな気分だね」
「え〜〜これ成人式の二次会用に買った自前だからそんないいものじゃないんですけど、、」
「それリアル父さんの気分じゃん、やっべ」
後で自慢する用にカメラを向けると控えめにピースをしてくれた。美人。ツーショットも、といってくれるあたりわかってるなあ、なんて。
携帯をしまって飲み終えた缶を捨てて「帰ろう」と彼女の手を取る。
「ずっとここにいたいなって、改めて思いました」
「そうだね。きっとどんどん居やすい場所になっていくよ」
楽しみです、とはにかむ彼女を横目に、自然とがんばろうなという言葉が零れ落ちた。彼女の目はいつも先を見ていた。