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「なっちゃんーでておいで〜」
微妙に開いた非常扉の向こうに見知った背中を見つけた。階段の下を覗き込んでいる彼女は俺に全く気づいてない。
「なにしてんの」
ゆっくり振り返って「なんだ、花江くんか」と頬を緩める。
「ネコ。なっちゃんっていうの」
「なっちゃんて」
俺のことじゃないの、と言いかけてやめた。
「大分前からこのスタジオに住み着いてるんだ。壮馬くんとみつけたんだけど、そのときはすっごく細かったから、だからなっちゃん」
「よくわかんないけど今は元気そうだね」
「うん、よかった」
ゴロゴロと喉を鳴らして寄ってくる茶色い猫。随分と人間に慣れていた。
「花江くん、わたしね、江口さんと一緒にいたいのかもしれない」
掠れた、消えるような声だった。
膝に埋めたままの表情はなにも見えない。
「瑞希ちゃんは瑞希ちゃんらしくしてなよ。そうしたいとおもったことを、すればいい。
僕はなにがあっても味方だよ、それだけはずっと、この先も変わらない」
背中が小さく揺れた。