きみのしんぞうはだれのもの

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ピエレッタ

「母は私を愛してると言ったけれど、結局本当に心の底から愛していたのは父だけだったわ」って寂しそうで哀しそうで何かを我慢するような顔で言う姫伽恋詠しんどいなあ


「私は母が読んでくれる絵本や小説が大好きだったし、父が造り上げる舞台を見るのも好きだった。何よりも母が書いた本を父が舞台に昇華して、姉が歌っているのを見ると、私は素敵な家族の下に生まれたなって思ってたの。……すごく、思ってたの」
「ある日、母が新しい本を書いて、この主人公は私をモデルにしたのよって言ったの。だから私は嬉しくて一生懸命母の声を聴いたんです。けれどね、「それ」は私じゃなくて私の面の皮を被った誰かだったの。そして父もそれを肯定したの、まるでこんな風に生きろと言わんばかりに」
「それから程なくして私の欠陥が見つかったんだって。当時の私は知らなかったけれど。だから皆どこかよそよそしくなって、それから褒めてもらえることも無くなって。それでも私頑張って父と母の真似して演技も嘘も言の葉も沢山覚えたのに。やっぱり愛されなかったの。あは、やっぱり私はピエレッタね」

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