お昼休み、彼女はお弁当を持って俺のクラスにやってきた。いつものあの調子で…。
「幸村精市!一緒にお昼食べましょ!」
「え、いやでも」
「文句でもあんのかコラァ!」
いえ、ありません。
これはあくまで俺の理想だ。俺の理想のタイプの元気で可愛い女の子がお弁当を持って俺のクラスにやって来る。精市くん、一緒にお昼どうかな?ってまず俺の予定も大丈夫か聞いてくれる。勿論俺はOKを出す。すると嬉しさのあまり表情を和らげていく彼女…。そんな彼女が俺は欲しかった!ならさっさと別れたらいい?それもそうだな。それが1番だ。
屋上庭園でお弁当を広げると彼女のお弁当は意外にも可愛い赤ずきんちゃんのキャラ弁だった。それを覗き込み、俺は思わず彼女の顔を見る。
「これ、君が作ったの?」
「そうだけど?」
「凄いな…。こんなのが作れるなんて…」
「アンタのために血が滲む努力をしたからね私は!」
俺のために?そう言うものの彼女が照れたりする様子はない。こんなに可愛いキャラ弁をいとも簡単に口に入れて咀嚼してしまう。案外残酷だな。そういえば俺、この子の名前知らないや。
「そういえば俺、君の名前知らないや。」
「アァン!?」
凄い顔で睨まれた。うん、本当に凄い顔だった。女子らしからぬ顔だった。しかも彼女はお弁当を食べている最中なのにも関わらず、俺の胸ぐらを掴み、ゆさゆさと揺さぶる。
「私の名前すら忘れるなんていい度胸してんじゃないの!アンタ本当に幸村様だな!神の子って呼ばれてるからって自分中心に世界回ってると思ってんのかコラァ!!」
「ご、ごめんってば…!」
「私は他の女の子たちみたいにキャーキャー言わないんだからね!覚悟しとけよ!」
捨て台詞を吐かれ、俺の胸ぐらを解放して彼女はまたお弁当を食べ始める。どう考えても彼女は俺のことが好きではない。ツンデレ…という部類なのか?俺はこんな激しいツンデレは嫌だ。ツンデレだと分かるレベルのツンデレがいい。そして手の平で玩びたい。そういう恋愛の方がいいって思っているのに…。
「あのさ、」
「何よ。」
「君、俺のこと好きじゃないよね?なのに何で…」
「アンタこそ私の事好きじゃないよね?なら何で断らなかったの。ま、断っても断らさせないけどね!」
ああ、ダメだ。普通では彼女に勝てない、別れられない。そう悟った。俺は諦めたように残りのお弁当を平らげ、彼女に断りを入れて蓮二のところへと足を運んだ。
「彼女の名前?苗字名前だろう?」
「苗字名前…?」
彼女の名前も蓮二に聞いて初めて知った。