「ちょっと、どこ行くのよ。」
「ふふ、内緒。」
「親衛隊だけじゃなくてアンタからも呼び出し?痩せた途端これだよ。」
嫌そうに眉根を寄せる苗字さんに俺は思わず笑った。連れてきたのはいつも2人でお弁当を食べる屋上庭園。苗字さんが優しく微笑む場所。
彼女は見ての通りの女の子。痩せれば普通に可愛い。あの時は顔もムチムチで目が細く見えたし、異常に汗も掻いてて汚いイメージがあったけれど実際はそうでもない。目だって普通だし…まあ、化粧で多少大きくなってはいるけれど、そこまで汗かきでもない。
屋上庭園のベンチに腰を掛け、苗字さんも隣に座らせた。彼女はふん、とそっぽ向くが、そんな彼女に俺はすかさず声をかける。
「拗ねてるの?」
「拗ねてないよ。」
「仕方ないだろう?こんなに可愛くなったんだから気付けなかったんだよ。」
「てめー急に優しくなりやがって!気持ち悪いぞ!」
「ふふ、本当の俺は優しいよ?良かったね、痩せて俺に優しくしてもらえて。」
「お前本当埋まって来いや。」
彼女は思い切り俺をどつこうとするけれどその手をひらりと交わして掴む。細い手。俺にあんなことを言われて必死になって痩せたんだね。そう思うとその手に愛しさが込み上げてくる。
その手を引き寄せて苗字さんの額と俺の額を合わせる。超至近距離だ。
「俺のこと、大嫌いなんだって?」
「そこまで聞いてたなら本当何も言うことないよ!その通り!元デブと付き合う屈辱を味わえ腹黒!」
「ふふふ、残念だけど俺は君と付き合えて幸せだよ?」
「は!?」
「だってそうじゃないか。可愛くて、細くて、頭も良くて家庭的、ちょっと言葉遣いは悪いけどそんな君が彼女だなんて俺は理想すぎるよ。」
「何ですと!?じゃあ別れてください今すぐに。」
「嫌だけど。」
「チクショーーーーーー!!!」
俺をポカポカと叩く両手を掴み、壁に押し付ける。今流行りの壁ドンってやつを亜都さんにすると仄かに頬が赤くなった。ふふ、可愛い。俺のこと嫌いな癖にこんな可愛い反応するんだ。
「苗字さん。」
「…………。」
「苗字さん。」
「…………。」
「おいこらデブ。」
「よおーっし喧嘩か!?買ってやる!」
苗字さんの反応が面白く、思わず噴き出す。そんな俺を見て苗字さんはまた喧嘩腰にわーわー何か言っていたからうるさかったので取り敢えずキスをして口を封じてみた。すると今度はみるみる真っ赤になり、目まで潤んできたので加虐心を煽られながら俺は彼女の言う腹黒い笑みを浮かべておいた。
「俺は別れないよ。そうだな…君がまた俺を好きだって言ってくれたら別れてあげる。」
「好きだ」
「俺もだよ。」
「自分の言ったこと忘れてる!早ッ!」
残念だけど苗字さんが何を言っても俺は別れるつもりはない。こんなに面白い子を見付けたのだから。ギャーギャー喚く彼女の唇をもう一度塞ぎ、にっこりと笑って見つめれば予想通りの反応をした彼女の顔が目の前に。ああ、可愛い。どれだけ俺を嫌がっても、どれだけ俺を拒否してももう離さないから。最初に告白をしたのは君、付き合えと強要してきたのも君なんだから。きみはいやなこ。そんな君には俺からありったけのキスを送ろうじゃないか。
Happy Birthday!!
Seiichi Yukimura!!
fin...