こんにちは、白石蔵ノ介です。もう皆さんご存知やと思いますが、世間で言われる腐女子という俺の彼女、名前について悩みがあります。彼女が毎度毎度男同士の恋愛に萌えを抱いているのはいつもの事なのですが、今日はすこぶる機嫌が悪いです。もうオーラで出とります。朝、挨拶した時は普通でした。せやけど1限目の終わりの休み時間にはもう不機嫌になっとりました。1限目の間に何があったんでしょうか…。

「あー…名前…?」
「何」
「いや、特に用事はあらへんけど…な、何や怒っとん?」
「怒ってませんけど。」

めちゃくちゃ怒っとる。何や怒らすことしたかいな…。そう思いながら悩んでいれば俺のクラスメイトの女子が俺の肩に手を置いた。

「蔵ノ介ー!朝頼んだこと、かまん?」
「おお、ええよ。但し借り1やでー?」
「しゃーないなあ、今度ジュースでも奢ったるわ!」

この子はクラスメイトの女子の矢代さん。ノリもええし、クラスでは中心に居るタイプで誰とでも仲が良くて殆どの人を下の名前で呼ぶ。朝、名前と話し終えて席に戻った後、科学の課題を写させてくれと頼まれた。今日当たるんやて。俺を特別視して取り囲む女子よりこんなサバサバした女友だちの方が一緒に居って居心地もええし、こんな子は周りにこの子くらいしかおらんから新鮮や。

「何や、ジュースかいな。もっと大きなモンがええわ。」
「しゃーない。アタシをやるわ!」
「いらんし。」
「何でなん!?家事も得意やしオススメ物件やで〜!」

笑い合えばふと目の前に居たはずの名前の姿がないことに気付いた。名前の姿を探すがすでに自分の席に座っている。そんであからさまに俺のことを睨んどる。そんな名前に矢代さんも気付いたのか、喧嘩?と聞かれる。俺は首を横に振り、また授業が始まるので大人しく席に着いて取り敢えず授業を受けた。
この日は徹底的に名前に避けられ、声を掛けようにも掛けられへんかった。そんな時、KYな謙也が名前にからかうように声を掛ける。

「白石と喧嘩か〜?」
「ち、違うもん…。」
「全然喋ってへんし、お前めっちゃ白石のこと避けとるやん。隠してもバレバレやでー?」
「……蔵ノ介なんか、」
「うん?」
「蔵ノ介なんか、他の女の子と付き合っちゃえばいいんだ!」
「あ、おい!」

謙也がしまった、というような目で俺を見る。確かに怒らせたという点ではアカンかったかもしれんけど今の俺には謙也のしたことは確実に助けとなっていた。謙也に軽く礼を言って俺は名前の後を追う。
ようやく分かった。アイツ、怒っとったんやない。不安で拗ねとったんや。テニスもバリバリやっている俺が名前に追い付くのはあっという間で俺はその細い腕を掴む。

「名前っ!ちょい待ちーや!」
「何も話すことはありません、矢代さんとどうぞ末永くお幸せに!」
「あの子ただのクラスメイトやん!俺が好きなんはお前だけやって!」
「うるっさいわ!あんなに仲良くしてんの見せ付けといて何なの!?」

あー、アカン。めっちゃ頭に血昇ってる。兎に角俺は名前を抱き締めた、落ち着くまでずっと。最初は離せバカ!やら触んな変態!とか言うとったけど、ずっとずっと抱き締めとったら次第に名前は落ち着いてきたのか、大人しくなる。そして俺は優しい声で問うた。

「ヤキモチ?」
「はっ…!?」
「妬いてくれたん?俺が他の子と仲良くしとって…」
「ち、違うもん…。」

名前に聞かれたわけではないが俺は誤解を解くために矢代さんの話をした。ただの友人であることと、科学の課題を写す約束をしたこと、あの子は誰に対してもああいう気さくな子だと言うことと…彼氏もちゃんと居ること。そこまで聞いて名前はホッとしたのか、漸く俺の背中に手を回してくれた。小さくて温かい手やった。

「本当に…?本当に、何とも思ってない…?」
「思ってへんよ。…仲直り、してくれるか?」
「……これ、」
「うん?」

名前は制服の内側から銀魂アンソロジーと書かれた本を取り出した。何でそないなもんを制服の中に入れて持ち歩いてんねん!しかも表紙からして絶対エロいの入っとるやつ。

「これ、二役で朗読してくれたら許す!」

その後、延々と朗読をさせられたのは言うまでもない。