こんばんは、白石蔵ノ介です。今日は名前と付き合って3ヶ月というちょっぴり記念日なので夕飯を食べに来ました。とは言うてもファミレスやけど…俺みたいな中学生の小遣いでは来れてもせいぜいファミレスくらいです、ホンマに。早く高校に行ってバイトとかして自分で稼いで名前にもっと美味いモンを食わせてやりたいくらいです。でも名前はファミレスでも嬉しそうにハンバーグを食ってくれとります。めっちゃ嬉しいし、めっちゃええ子です。今はまだ17時30分なんでこの後名前の行きたいところに付き合う予定です。

「で?」
「えっ」
「えっ、やないやろ!俺とのデートで何でここチョイス!?」
「行きたかったから…」

俺は目の前に立ち塞がるアニメイトの看板に呆然とし、名前に問いました。でも彼女はキョトンとした顔で行きたかったから、と。しかも彼女はまた足を進めてアニメイトへの入り口に向け、階段を上がっていっとります。ちょ、ちょい待って…!

「ちょい待って…!俺のこと置いてかんといて…!」
「え?蔵ノ介、嫌なんでしょ?なら待ってていいよ?」
「こないなところで1人になる方が嫌や!」

慌てて名前の後を着いて行くと目の前に広がる不思議な世界に俺はもう呆然。店の中に入るなり名前は自分の行きたいところに真っ直ぐに向かって行き、俺のことは入り口で放置。後を追いかけようにも入り組んだ店内の迷路にやられ、叶わず。

「お、おい!名前っ…!」

ここで30分ほど待たされることになった。すれ違う人々が俺のことを同志じゃないと見抜いとんのか、異質なものを見る目で見られる。ああ…。

「蔵ノ介、お待たせ〜。」
「気ィ済んだか?」

呑気に買い物袋に買った品を入れて名前が戻ってくる。それはもう満面の笑みで、俺は俺を放って行った名前を責めることは出来んかった。それに普段、俺の行きたいところに連れ回してしもとるからな。
と、別に待たされたことに怒っとるわけやないけどどっと疲れたのでアニメイトを出てから飲み物を買おうと思い、名前に待ってもらうことにした。自販機まで歩き、何を飲もうかと売られているジュースを見るけれど名前の好きな飲み物がない。少し歩くけどあっちにも自販機がある。そっちまで行ってみるか…。

「はは、にこにこしてて可愛いやん?」
「連れの子も一緒でええから俺らと楽しいことしよや」
「楽しいことです?でも連れは嫌って言うと思います…。」

俺の分と名前の分の飲み物を買いに行っとる間に何やら二人組の男にナンパされとります。1人は金髪、1人は黒髪…金髪のが背が高いです。名前は困ったような…ではなく、寧ろあの時俺と謙也を見とった時と同じ恍惚な表情でナンパ野郎を見とります。あああ、また何や変なこと妄想しとる…。普通なら俺の女に声掛けおって!とか思うんやろうけど残念なことに俺はあの男たちが名前の妄想の餌食になっとることの方が不憫でしゃーない。そう思いつつナンパ野郎の後ろにまで足を進めた。

「辞めた方がええで。」
「は?何やねんお前。」
「あ、私の連れですよ〜。蔵ノ介、遅い。」
「すまんすまん。…ちゅーわけなんで…それに今、コイツの頭ン中でアンタらカップルにされてますよ。早う逃げたらええんとちゃいます?」
「言っとる意味分からんのやけど…」

俺の言葉にナンパ野郎たちは首を傾げるばかりでついでに言うと名前の手首をしっかり握る。逃がす気あらへんってことかいな。こうなったらしゃーないな…

「俺の彼女、めっちゃ男同士の恋愛もん好きやねん。お兄さんたち、もうこいつの中では裸で抱き合ってにゃんにゃんしとると思いますよ。」
「失礼な!まだキスしかさせてないし!」

俺の言葉に青ざめ、トドメに名前が余計なことを言ったおかげでナンパ野郎たちはすぐ様名前から手を離して逃げていった。そんなナンパ野郎の後ろ姿を見て名前は「ああ〜、シズちゃんと臨也が〜…」なんて言っとる。呑気なやつや。

「ほらこれ、ジュース。」
「あ、これ私の好きなやつだ!ありがとう、蔵ノ介!」

嬉しそうに両手でジュースを受け取る姿がまたかわええ。俺はジュースで喉を潤す名前をただ黙って見つめていた。