◎本の猫


「ただいまー。」
『おかえり名前さん。』

今日のお出迎えはコナンくんでした。頭を撫でると嫌そうながら逃げなくなりました。最初は逃げられてたんだけどそうすると捕まえて毛並みに顔を埋めてグリグリするから諦めたみたい。あー可愛い。とっても癒し。結局グリグリはするんだけど。

『あれ?名前さん本屋行ってたの?何買ってきたの?』
「ん?袋が気になるの?じゃっじゃじゃーん!」

ふふふふ。久しぶりに本屋に寄ったら好きな作家さんの新作が出てたので思わず買ってしまったのだ。高校生の頃から好きな推理もののシリーズで私のバイブルとも言える本である。

「今日の夜からちょこちょこ読むんだー。」
『俺それ読んだことない!やっぱ世界が違うと作家も違うんだな!』

目で分かる。めっちゃ読みたい!って顔してる。いつもキラキラしてる碧い目がよりキラキラ輝いてるよ。

「ご飯食べてお風呂入ってから寝る前に一緒に読もうね。」
『やった!!』

めっちゃ喉ゴロゴロ鳴ってる。抱っこしてリビングに入ると降谷さんと赤井さんが迎えてくれる。

『おかえり。』
「ただいま。すぐご飯作るからねー。」

台所に立ち簡単に晩ごはんを用意する。私は生姜焼き、ワンニャンは肉汁ご飯です。今日も誰か人間なら料理してくれるんだけどなぁ。そううまくいかないみたい。降谷さんはもちろんだけど赤井さんもなかなか料理ができるようでこないだ作ってくれたビーフシチューは美味しかった。コナンくんは、うん、まぁあれだ。小さいし台所立つの危ないしね。

『この部屋本いっぱいあるのに自分じゃ読めないのが辛い。このシリーズ並んでるの見て気になってたんだよな。』
『仕方ないさ。今の僕たちじゃうまくページめくれないだろうしね。』
『ボウヤの今の姿では文庫本と重さも変わらんだろうしな。』
『赤井さんひどい!』

なんか楽しそうだなぁ。コナンくんが来てから降谷さんと赤井さんの喧嘩が減った。どうやらコナンくんが間に入ると降谷さんの赤井アレルギーが少し緩和されるみたい。っていうか降谷さんも赤井さんもコナンくん溺愛してるっぽい。私がコナンくんといちゃいちゃしてたら睨まれる。

「ごはんできたよー。」


ーーーーーーーーーーー


さて、お風呂も入ったしあとは寝るだけ!レッツ読書タイム!コナンくんも本の横に座って準備万端。問題はどうやって読むか。

「コナンくんが私の膝の上に座ればいいのかな。」
『うーんそれだと名前さん読みにくくない?』
『膝の上に座るのはいいのか。』
『長い間子供やってるとね、慣れるんだよ。』
「肩に乗る?私顔の前辺りに持ってきて読むからこれならいける?」

コナンくんはにゃあと一言鳴くとぴょいっと軽々しく私の肩に飛び乗った。すごい重さを感じない。やっぱりコナンくんは天使だったのかもしれない。私はベッドにもたれて本を開く。

「どう?」
『見えるよー。』

どうやらお気に召したらしい。やっと読める!

『名前さん次!早くめくって!』
「あーもーゆっくり読ませて叩かないで!」

コナンくんは先々読んでるのかめっちゃ急かしてくる。私のペースで読ませて!降ろすよというと黙った。それに加え物語が進むにつれて熱中していってそれどころじゃなくなった。

「…………うわっ。」
『なんだ、早くペースめくれ。』
『なかなか面白いな、この小説。』

いつの間にか周りに犬も集っていた。赤井さんは横から、降谷さんはコナンくんの反対側の肩から覗いていた。なんだこの状況。

「はーいみんなこっち向いてーはいっちーず。」
『『『えっ。』』』

うんうん。いい集合写真が撮れた。自撮りになっちゃったけどいいんじゃない?待ち受けにしとこ。降谷さんが騒いでるけど無視無視。

「さてもう中々な時間だし読書タイム終了。続きは電車で読みます。」
『えっひどい!』
「はいおやすみー。」


次の日電車に乗ると本が入ってなかった。コナンくんのやつ抜いたな…?
帰ると本の横に座ってジトッと睨むコナンくんがいました。



しおりを挟む