◎最終話


拝啓、新選組の皆さん


貴方達は今どこで何をされていますか?

もしかしたらこの世にいらっしゃらない人もいらっしゃるかもしれませんね。

その方達はお疲れ様でした。

貴方達は自分の人生に満足できますか?

幸せでしたか?

私は幸せです。

最初の頃は悪い事も沢山したし、生きる意味を見出す事が出来ませんでした。

きっと人間ではなく命令されたままに動く唯の人形だったのでしょう。

しかし新選組の皆さんに出会って私は人間にしてもらいました。

喜び、悲しみ、仲間の大切さ、そして愛を教えてもらいました。

感謝してもしきれません。

本当にありがとうございました。

そして生きている方は残りの人生に幸多からん事を。

亡くなってしまった方はどうか安らかにお眠りください。

多くの命を奪った私達は天国なんて行けないでしょうからまた地獄で会える事を楽しみにしています。

敬具


「よし、っと。」

書いた手紙を折り、机の中に入れる。
この手紙は決して届く事は無いから。

「何してたんだ?」
「……左之助さん。
新選組の皆さんにお手紙を書いていたんです。」

そうか、と微笑んで私の頭を撫でる。
あぁ、私は今幸せです。



私達は闘いが終わってすぐに満州へ移り住んだ。
おかげで今の日本がどうなっているのかは分からないが私達にはやっと平穏が訪れた。
命を落とす心配がない平和な生活。
愛する人と共に過ごす日々。
昔の私には想像も出来なかった未来だ。

「左之助さん、ありがとうございました。」
「いきなりどうしたんだよ。」
「ふふふっ、なんだか言いたくなったんです。」

そう言うと左之助さんは照れ臭そうに私を抱き締めた。

「名前、愛してる。」
「と、突然どうしたんですか。」
「言いたくなったんだ。」

仕返しと言わんばかりに耳もとで囁いてくる声にはまだ慣れない。

「私も、愛してます。」

赤い顔で睨みながら言っても効果が事は分かっていても悔しいので言い返す。
そうすると左之助さんは決まって嬉しそうに更に抱き締めるのだ。


ありふれた幸せかもしれない。


でもそれを噛み締めて


ゆっくりと出来るだけ永く

共に生きていこう。



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