気がつくとカフェの床に倒れていた。
頭がくらくらはする。先ほどみた記憶の映像のようなものが頭の中で何度もリフレインする。
長い、長い夢を見ていた気がした。何だか見覚えのあるような、どこか懐かしいような記憶の夢だ。
ズボンのポケットに手を入れると冷たい感覚がした。取り出すと先ほど見た記憶にあった、メリーゴーランドのミニチュアだ。



なんだそういう事か、あの記憶の一部は私のものか。相変わらず胸糞悪い事をする。欠けていた記憶のピースが頭の中で埋まっていく気がした。



「同じ場所に戻ってくるから、か」

こんな言葉を信じてる私に笑ってしまうが、なんだかまた会える気がした。
体についた埃を払いながら立ち上がる。









”カフェ メリーゴーランド”
幽霊が出るようなことも、不思議な現象が起こることもなく、静かに時を過ごしながら細々と経営しているカフェだ。顔馴染みもいるし、新規の客も来る。一日に5、6人来ればいい方かもしれない。気づいた時から手元にあった莫大な遺産のおかげで、何も気にせずお店ができる。

誰もいない店内でフライパンで卵を焼く、フライ返しでぐちゃぐちゃにする。火を止めて皿に移す。
まな板に置いたパンの中にレタス、トマト、ハムをのせる。その上にぐちゃぐちゃにした卵を乗せ、マヨネーズを塗る。またパンを重ね、ナイフで斜めに半分切る。それを皿に乗せた。そろそろお昼時だ、そろそろ来るだろう。端を少しだけ切って手に取り、口へと運ぶ。匂いは今日も美味しそうだ。焼いた卵のいい匂いが強い。口に入ったものを噛む。パンのふわふわとした食感に焼いた卵と新鮮なレタスやトマト、少し厚めのハムがいい味を出している。今日もよくできている。

カランコロンとお店のドアベルがなった。声をかける前に、嬉しそうに笑いながら今日もカウンター席に顔馴染みの常連客が座った。

「何作ってんの?」
「お前が好きなやつ」
「サンドイッチじゃん!やった!」

出来立てのサンドイッチを出すと、すぐにかぶりつく。
「んーーーーーーー!」
「…本当、何を言ってるんだ、お前は。」
口の端にサンドイッチから溢れた卵をつけ大きくほっぺたを膨らまし、口を動かしている。前にもこんなやりとりをしたな、と思いつつカウンター越しからウィリアムの口の端についている卵を指で拭った。














2021/10/30