2




「たーくん、今日はヒナくん帰ってくる?」
「どうやろ?3日前の電話では無理っぽい事言うてたけど」
「そっかぁ」




そんなこんなで始まってしまった、ほぼ2人での生活ももう3ヶ月が経とうとしていて
仕事柄、出張の多いオヤジさんはその度に亮ちゃんと涙の別れを繰り返す

そのお陰かどうか
亮ちゃんはオヤジさんにすっかり懐いてしまったのです




「亮ちゃん、お皿取ってくれる?」
「どれ?白いの?緑の?」
「緑の、二つな」
「はーい」




今ではこんなスムーズな亮ちゃんとの会話
それが出来る様になるまでには、かなりの苦労を要した




『あの、初めまして?』
『……』
『えっと、俺はあなたを拾っ…連れてきた人の、息子の忠義です、はい』
『……』




クッションを抱えたまま、じぃっと見つめられて
それでも俺の言葉には反応せずに黙ったまま




『あの、りょうさん、でいいんかな?』
『……』
『…りょう、くん?』
『……』
『…りょう、ちゃん?』
『……、』
『えと、じゃあ…りょうちゃん、な?これからよろしく』




ほんの僅かな反応を見逃さない様に、聞き零さない様に

やっかいな人を連れて来たな、と今はいないオヤジさんにため息もつきたくなる
どうも人見知りらしいぞ、と笑ってた顔を思い出して、がっくり




『とりあえずお風呂沸いてるから入っておいで?お風呂場はそこ出て右行ったらあるから。着替えはこれな』
『……、』
『え?何て?』




す、と動いた気がした口
聞き取る為に身をかがめたら、




『……あり、がとう』




小さく聞こえた声が
どういう訳か

きゅん

と胸に来た




事ある事に亮ちゃんは「ありがとう」と言ってくれて

それがまた




『…かわい』
『ん?』
『あ、いやなんでも?!』




と思わず口に出してしまうぐらい、可愛かったんです

ちょっとずつ慣れてくれてるんかな?って日に日に笑顔も増えてきて

その度にきゅん、きゅん、と俺の心臓が煩く鼓動




「忠義?どないしてん、こんな所突っ立って」
「あれ…オヤジさん、帰って来たん?」
「なんや、あかんのかい。自分の家やぞ」
「別にそんなん言うてへんやんか。この間の電話では帰れるかどうかって、」
「あぁ、それな。もう速攻で仕事終わらせて来たがな。おーい、亮!土産やぞー」




息子に目もくれず、いそいそと靴を脱いだオヤジさんが小さい箱を亮ちゃんに手渡して




「あ、ケーキや!」
「そうやぁ、途中で見つけてな。ついつい買うてもうたわ!」
「ありがと、ヒナくん」
「おー、ええねん、ええねん!」




その顔、息子としては見たくなかった、と思うぐらいでろんでろんで




「さー、ケーキ食べよか。忠義、コーヒー淹れてくれや」
「……はいはい」
「亮、イチゴさんは全部食べてええぞー」
「……イチゴさんって」




うん、見たくなかったな






- 2 -

*前次#


ページ: