04


お昼鞄からお弁当を出せば朝日ちゃんが昨日と同じように机を私の机にくっつけ、夜ちゃんが椅子を持って来て座る。
なんだか嬉しくて自然に頬が緩んでしまい、それを見た二人も嬉しそうに笑った。
翔がお弁当を取りに来たので渡せばまた部室に行く、と教室を出て行き、三人でお弁当を食べる。


「花」

『ん? なに?』

「あんな、私らは花が大好きやで、大切な友達や」

『私も大好きで大切だと思ってるよ』

「うん、知っとる、わかっとる、けどな、私らは花みたいにええ子やないんよ」

「そうやな」

『どういう事?』

「ウチは怒るとすぐに手でてしまう、喧嘩ばかりするんよ」

「私は多分誰かに聞いた思うけど、男と遊ぶんが趣味みたいな所あるから」

『うん』

「やから、ええ子やない、影口言われとるの知っとるし、皆私らには関わらんようにしとる」

「やからな、ウチらと居るとな、花も変な噂流されてしまうと思うんよ」


だから、と二人が私を見たので二人が先に言う前に私の気持ちを伝える。


『昨日、二人の噂聞いたの、でも、私にはどうでもいいの、それが事実かそうじゃないかなんて』

「「……」」

『私が知ってる朝日ちゃんと夜ちゃんは優しくていい人だから、関係ないの、変な噂流れようが何言われようが、私は二人と友達に慣れて嬉しいし、これからも友達で居たい』


だから、これからも仲良くしてね、と二人の手を握れば二人は泣き出してしまった。
ぼろぼろ涙を流しながら私の手を握り返してくれ、嬉しそうに笑う。


「「こちらこそよろしゅうな」」

『うん、よろしくね』


にっ、と笑いかけティッシュを渡せば二人は涙を拭う。


「もしなんか言われたら私らに直ぐ言うんやで」

「そうや、殴ったるからな」

『ありがとう、二人も言ってね、絶対守るよ』


私らも守るで、と夜ちゃんが抱き着いてきたので、背中に腕を回した。
そこからまたお弁当を食べ始め、部活の話を聞かれたので答える。
翔も先輩達も頑張って居る事を伝えれば、大変やろうけど頑張ってな、と応援してくれた。


『ありがとう、私初めてやりがいのある仕事見つけたと思ったの、少しだけど翔のサポート出来て、凄く嬉しいんだ』

「ええことやな」

『でも、翔がマネージャー辞めてもいいよって』

「なんでなん?」

『マネージャーしてると、二人と放課後遊んだりできないし、インハイ近くなったらもっと忙しくなるからって』

「あー、なるほどな」

「言いそうやな」

『だから、考えてみろって言われて私なりに考えてみたの、後悔しない答えを探してそれで私ね』

「「うん」」

『マネージャーしてたい』


二人共遊びたい、けど、やっぱりマネージャーして翔のサポートしたい。
少ししかサポート出来てないけど、いや、もうほとんど何もしていないのと一緒だろうけど、傍で応援していたい。
幼い頃から私を支えてくれた翔の傍で頑張って居るのを応援して、支えたい。


『だからね』

「うん、花がそないしたいならそうすればええよ」

「私らはそれを応援するで」

『ありがとう』

「けどな」

「そうや」

『うん?』

「暇日あるやろ、絶対に」

『テスト期間中はどうしてもオフになるね』


他にも土砂降りの雨とかだと自主練になるから、部活はお休みになったりする。
土日も今の所は午前練習で終わりだから、午後は暇な事を二人に伝える。


「そうや、そういう時」

「そん時は私らと遊びに行くんやで」

「みども連れて来てええから」

「そうや、四人で遊びに行けばええな」

『うん! 絶対遊び行く、翔は来るか分からないけど、私は行く』

「約束な」


夜ちゃんが小指を出したので、私と朝日ちゃんで小指を絡めて約束をした。


「まず、最初に遊ぶ日はプリクラいくで」

「ええな」

『私撮ったことない』

「っいっぱい撮ろうな」

「今日って部活は何時までなん?」

『今日は、えっと多分四時くらいまでかな』

「四時な」

『うん、翔の無茶ぶりが発動しなければまだ日が暮れるのが早いからそのくらいまで』

「分かった」

「部活終わってから何してるん?」


部活が終わってからは翔と家に戻って夕飯の支度して、そこらはのんびりしている。
アニメ見たり、マンガ読んだり、各々の時間を過ごして、夜は同じベッドで寝てるよ、と言えば夜ちゃんがエッチ、と囁いた。


『え、あ、そ、そういう事はしてない』

「夜」

「ごめんな、私すぐそういう事言うてまうから」

『平気、早く慣れるね』

「慣れんでええよ、そう言時はやめろや、って頭叩くのがええ」

「叩いてもええけど優しく頼むな」


その言葉に笑って叩くことはないだろうが、分かった、と頷いた。

そしてお昼休憩が終わる五分前に翔が戻って来たので椅子の横に立つ。
お弁当箱を受け取りながら、マネージャーの話を翔に伝えた。


『だから私これからもマネージャーやる』

「後悔せんのやな」

『しない、二人とは部活ない日に遊ぶ約束もしたし、後悔しない絶対』

「ほんなら、これからもボクのサポートしてな」

『うん、ちょっとしか出来ないけど、私なりに翔支えるから』

「ボクは花が傍に居るだけで充分やけどな」


翔の言葉に顔を赤くすればそっと頬を撫でられる。


「かいらしいな」

『あ、翔は格好いいよ』

「おおきに」


嬉しそうに笑った翔の顔を見て居れば、チャイムが鳴ってしまったので席に戻った。


********


放課後、二人と下駄箱で分かれ翔と部室に行き、皆が着替えている間は外で待つ。
着替え終わってから私は一人作業に取り掛かる。
ボトルつくりだったり翔に言われた仕事だったり、せっせか動き回っていれば時間はあっという間に過ぎた。
四時、今日は翔の無茶ぶりがないようで、皆で着替えに戻ったので夕焼け色に染まる空を眺める。
それを眺めて居れば着替え終わった翔達が出て来て、翔がリュックを渡してくれたのでそれを背負う。


「ボク鍵返してくるから、ここで待っとき」

『分かった』


頷けば翔は歩き出し、残ったのは私と石垣先輩達。


「夏野、今日はなんともなかったんか?」

『今日は、言い返せました』

「また言われたんか、でも言い返せたんなら良かったな」

『はい、友達もできました、凄くいい人達です』

「そら良かったな」


笑って頷けば石垣先輩も笑ってくれた。


「普通に喋れるようになったやんな、ほんなら俺とも喋ってや」


急に井原先輩が目の前に来たのでぶわっと汗が出て震える。
リュックの紐を掴んで下を俯けば、すまん、と井原先輩は後ろに下がった。


『だ、だい、大丈夫です』

「慣れたんかと思った、石やんと普通に話しとるから」

『あ、そ、そう、ですね、は、はい、な、慣れました』

「慣れとらんな、ごめんな」


平気です、と囁けばあぁああ! と大声が聞こえビクッと肩が動く。
恐る恐る顔を上げれば少し先に何故か朝日ちゃんと夜ちゃんが居て、駆け寄って私の前に立った。


「花虐めとる」

「最低や」

「ちゃ、ちゃうよちゃうよ」

「みどにちくったろ」

「言ったろ」

「あかん、止めてや! 殺されてまう」


井原先輩は真っ青な顔でほんま、勘弁してくれ、と囁いている。
相当翔が怖いようで、なんか少し可哀想にも思う。


『わ、私虐められてないよ、大丈夫だよありがとう』

「ほんま?」

『本当、部活の先輩で、話してただけ、そうですよね』

「そうやそうや」

「ならええわ」

「みどは何処に居るん?」

『職員室に鍵返しに行ってるよ』


もうすぐ来ると思う、なんて言っていれば翔が戻ってきた。


「何で居るん?」

「今日は四時に終わる聞いてたからな」

「近くのマクドで時間潰しとったんよ」

「「今からゲーセンいくで!」」

「ハア?」

「プリクラ撮りに行くんや」

「そうや」

『だから待っててくれたの?』


せや、と頷く二人に嬉しくて、後ろからぎゅうっと抱きしめる。


「ほんならボク帰ってる」

「何言うとるん?」

「みども行くで」

「ハア? 行くわけないやろ」

「え……」

「な…んでなん?」

「行く思うたん?」

「「思っとらん」」

「やろ、行かん、三人で行けばええやろ」


そう言いながら、翔が自転車に跨ると二人は翔の自転車を押えた。


「一緒に行こうや」

「なあ、みど」

「行かん言うとるやろ」

「「なあ」」

「鬱陶しい!」

「しゃあない、花出番や」

『え?』

「可愛くおねだりするんや、したら行く言うから」


絶対に行かないと思うけどな、と思いつつも翔の前に行って目を見つめる。


『翔も一緒にい「行かへん」


喋ってる途中で遮られたのでなんか悔しくて、絶対に行くと言わせてやる、と次の作戦に移った。


『一緒に行こう、ね、翔行こう、翔好き、行こう』

「行かへん、行かへん、行かへん、ボクも好きやけど行かへん」

『行こう! 行こう! 翔居ないと嫌だ! 行こうよ! 翔!』


うわぁあ、と翔の服を引っ張れば、行かへんからな、と呆れた顔をしている。
これは無理だ、絶対に行かない時の顔だし、私にはどうすることも出来ない。


「しゃあない、ほんなら行ってくれたら今週の土曜、花はエッチしてくれるって」

「行くわ」

「ほな、行くで」


翔は自転車から降りて三人で歩き出し、私はぽかん顔で三人の背中を見る。
数歩前に行った翔達が振り返り、はよ行くで、というのでわけが分からないまま追いかけた。
あ、と思い出し唖然としている石垣先輩達にお疲れ様です、と声をかけ翔の横に並ぶ。


『えっと、え?』

「ん?」

『なんて言った?』

「土曜にエッチするんやで」

『え? あ、え?』

「楽しみやな」


翔がニィっと笑ったので引きつった笑みを浮かべた。


********


一旦私の家に寄って着替えてから、四人でゲームセンターに来た。
プリクラは奥にあるそうで二人の後について行く。
ゲームセンターなんて来たことないから、見るものすべて新鮮だ。
その中で目を引かれたのはクレーンゲームで、私の好きなププキュアのフィギュアがあった。
いいな、と横目で見ながら、プリクラがある場所まで来る。
色々な種類があって、私はよくわからないので、二人が選んでくれたので撮ることにした。
カーテンを開けて中に入れば翔は外におる、と行ってしまう。


「流石にプリクラは撮らんか」

「まあ、仕方ないな、三人で撮るで」


夜ちゃんが何やら操作をしてくれ、言われたポーズをして撮る。
その中からよく撮れているのを選んで、外でそれに色々書き込んでいく。
スタンプやら色々あって、どうするのか分からないので二人が書いているのを後ろから眺める。


「花もなんか書いてや」

『えっと』


ペンを渡され画面を操作して、よろしくお願いしますスタンプを付けた。
三人で書き込んだ文字やスタンプが写真に印刷され出て来て、夜ちゃんが三つに切り分けくれる。
初めて撮ったプリクラに感動していれば、翔が戻って来たのでそれを見せた。


『見て、初めて撮った』

「良かったな」

『目大きくなるんだよ、凄いね、二人共可愛いし』


凄いでしょ、と笑いかければ、翔はどこか安心したような笑みを浮かべそうやな、と頷く。


「みど、それ何持っとるん?」


夜ちゃんの言葉に見れば何か箱を持って居て、目の前に出された。
それは私が先ほど見たププキュアのフィギアで取れたから、あげるわ、と渡される。


『い、いいの!?』

「ボク興味ないし」

『本当に!?』

「ええよ」

『あ、翔ありがとう! 嬉しい!』

「やるやん」

「見直したで」

「やかましいわ」


プリクラをお財布にしまってから、四人でゲームセンターの中にあるお店でクレープを頼んだ。
受け取ったのを食べて居れば視線を感じたので見上げれば翔が見ていたので、はい、と目の前に出せば一口食べる。
そして目の前に翔が食べて居たのを出して来たので一口貰う。


「らぶらぶやな」

「ええな」

『あ、ごめん』

「ええよええよ、もっとしてええよ、ちゅうしてええよ」

『し、しないよ』

「あ、そうやなちゅうは二人きりの時やな、濃厚なのするんやで」


恥ずかしくて顔を赤くすれば翔が夜ちゃんの頭を叩いた。


「止めろや」

「いったっ」

「いい音したな」

『あ、翔駄目だよ、大丈夫?』

「大丈夫やで」


翔を見上げればべーっとやったのでムッ、とすれば夜ちゃんが携帯で写真を撮る。


「見てや、かいらしい顔撮れたで」

「ほんまや、リスみたいや」

『け、消して』

「ボクに送って」

「ウチにも」

「グループにおくるな」


消して、と言ったが無駄でグループの連絡に写真が送られてきて、翔は凄い速さで保存していた。
クレープを食べ終わり、私が初めて来たので、中を見て回る。
クレーンゲームの景品は色々あって、他にもラブ☆ヒメのマニュのぬいぐるみとかもあった。


『ほ、欲しい』

「みど出番やで」

「行ったれ」

「もう金ないわ、さっきのそれ取るのに二千円つこうた」

『え?』


見上げればそっと視線を逸らされ、何でもあらへんと囁く。
二人はひゅー、と翔の脇腹を突いていて、私はもう一度ありがとう、と伝えた。


『わ、私自分でやってみる』


小銭を入れて朝日ちゃんに教えてもらって操作したが取れない。
悔しくてもう一回やる、と小銭を入れ朝日ちゃんがウチやったるよ、とやってくれる。


「こういうんはコツがいるんや」

「朝日これむっちゃ得意やからね」

「おん、仲間が教えてくれたんよ」


何の仲間かは聞かないでおこうと、見て居れば朝日ちゃんは大きなぬいぐるみを一発で取った。
下に転がって来て、朝日ちゃんがそれを取り出しはい、とくれる。


『あ、ありっ、ありがとう!』

「いい位置に動いとったから一発で取れたわ」

「流石やな」

『大事にするね』


ププキュアのフィギアと大きな黄マニュを抱きかかえれば、三人が携帯を構えた。
そしてやはりというべきか写真を取られ、諦めて笑えばもう一枚撮ってくれた。

そこからも四人でお店の中を回って、五時になったので二人と別れて翔と家に戻る。
直ぐにもらったフィギュアとぬいぐるみを飾って、二人で夕飯の準備をする。


「……楽しかったん?」

『え?』

「今日、楽しかったん?」

『うん! 楽しかったよ、無理矢理つき合わせちゃってごめんね』

「ボクも楽しかったで」

『本当?』

「ほんま、やから別に気にせんでええよ」


その言葉に笑いかければ、翔も幼い顔をして笑う。
翔のその笑った顔が好き、小さい頃に見た時と変わらない純粋な笑み。
見ていると心がぽかぽかして、嬉しくなる。


『翔』

「なん?」

『好き』


ちゅー、と顔を近づければ、翔は腰を曲げてキスしてくれた。