05


五月半ば、席替えが行われた。
正直今の席が良かったが、仕方ない、とクジを引いて黒板に書かれている番号の席に移動する。
机の横に鞄をかければ私の横に翔が座って、私達の前に朝日ちゃんと夜ちゃんが座った。
直ぐに二人は振り返り、昨日神社行ってお参りして来たんよ、と笑う。


「正直信じてへんかったけど、神頼みしとくもんやな」

「なあ」

『うわ、嬉しいな、凄いね』


ね、ね、と横の翔を見上げればそうやね、と一度だけ頭を撫でてくれた。
お昼、翔は部室に行くこと無く私の横でお弁当を食べて居て、会話にも混ざってくれる。


「もう五月半ばや、時間経つのは早いな」

「気づいたら夏休み来てまうな、夏休みはインハイあるな」

『うん、八月一日から三日間なんだ』

「そうなん? うわ、ウチおばあちゃんち帰省しとる」

「私もや、しかも八月ほぼそっちで過ごさなあかんのや」

「それな」

『おばあちゃんち何処なの?』

「北海道」

「沖縄」

『す、凄いね、端と端だね』


お土産買うてくるな、と言う言葉に笑って頷く。
去年までは翔連れておばあちゃんちに行ったりしてたけど、今年は無理だな。
お母さん達居ないし、インハイはあるし、連絡だけはしておこう。


「インハイ応援行けへんけど、頑張るんやで」

「おん」

「花もマネージャー頑張ってな」

『うん』


来月に入ったら練習はもっとハードになるし、強化合宿もあるから忙しくなる。
暑くもなるから皆の体調管理もしっかり見なきゃ、私が出来るのはそのくらいだから。
今までの大会で翔はずっと一位だった、インハイでもそれは変わらないはずだ。


『翔、頑張ってね、私応援するから、大きな声出して』

「出せるん?」

『だ、出せると思う…よ…兎に角私応援するから』

「今までみたくゴールにおってくれればええけど、まあ、応援もしてな」

『うん』


一位でゴールして来た翔を抱きしめて沢山褒めてあげるんだ。


お昼休憩が終わる10分前に翔がトイレに行って三人でお喋りする。
次の授業は数学で、朝日ちゃんはこのまま時間が止まればいいのに、と机に突っ伏す。
そんな朝日ちゃんを慰めて居れば、夏野さん居ますか、と声がして見れば教室のドアに見知らに女の子が四人いた。
何だろう、何したんだろう、どうしよう、震えながら手を上げればあの子や、と女の子達が中に入って来る。
そして私の横に立って見下ろされ、机を見たまま震えた。


「あんな」

「ちょっと頼みたいことあるんやけど」

「ええやろうか?」

『な、ん…で…すか?』


そう言うとその中の一人が私の前に、可愛らしい便せんに入った手紙を出して来た。


「こ、これ石垣先輩に渡して欲しいんよ」


顔を真っ赤にして差し出す手は微かに震えて居て、手紙と女の子を交互に見る。


『あ、い、石垣先輩?』

「そ、そうや、お願いや、夏野さんって自転車部のマネージャーやろ、やから」

『わ、分かりました、わ、渡します、きょ、今日の部活で』


手紙を受け取れば女の子は嬉しそうに笑ってお願いな、と言うので何度も頷く。
多分だがこれはラブレターだろう、なんだかこっちまでどきどきする。


「へ、返事はいつでもええって伝えて」

『わ、わかりました』

「ほんなら、お願いね」

『は、はい』


女の子達はそのまま教室から出て行き、私はその手紙をファイルに入れ鞄にしまった。


「石垣先輩って?」

『あの、オールバックの』

「ああ、あの爽やかそうなみどとは真逆の人な」

『そうなのかな?』

「確かにあの人イケメンやもんね」

「顔格好いいもんな」


そう言われればそんな気がしなくもないが、格好いいの基準がよくわからない。
俳優さんとか見ても特に恰好いいと思わないし、翔のが格好いいと思って居る。


「やけど、今時ラブレターなんて、かいらしい事する子やな」

「なあ、私なんか告白したことすらないわ」

『そうなの?』

「そうや、エッチして相性よかったら付き合う感じやから告白とかないで」

『お、大人だね』

「私は一度でええから、そう言うの抜きで人好きになりたい思うけどな、花みたいに」


夜ちゃんの顔は何処か悲しげで、でも、何と声をかけていいか分からなかった。


その後直ぐに翔が戻ってきてチャイムが鳴ってしまい授業が始まった。
放課後にはいつも通りの夜ちゃんに戻っていて、先ほどのは気のせいだったのかな、と思う。
二人と下駄箱まで行ってから、別れ皆が着替え終わるまで外で待つ。
手紙いつ渡そうかな、部活前はあまり良くないだろうから、終わってから渡そうとファイルの中の手紙を見てそっとしまう。

今日は翔の無茶ぶりが発動して、インハイメンバーの六人だけ残って五時まで練習は続いた。


「今日はもう終わりでええ」


翔の言葉に五人はその場に座り込んで、荒い息を繰り返している。
直ぐに人数分のボトルとタオルを渡し、最後に翔にも渡した。

暫く休んだ翔達は着替えに行き、数分でドアが開いたので中に入ってボトルの片づけをする。
私が片付けしている間翔は机で今日の練習内容を書いていて、片付けも終わったのでリュックからファイルを出して、ベンチに座って喋っている先輩の前に行く。


『あの、これ』

「俺に?」

『はい』


先輩は手紙を受け取り中を開ける。
横に座っている井原先輩と辻先輩が一緒に読んでいて、手紙と私を交互に見てくる。


『返事はあのいつでもいいって』

「え!? 夏野って御堂筋君と付き合うてるよな!?」


井原先輩が驚いた顔をしながらそう言ってきたので何度も頷く。


「なんで石やんにラブレター」

『あ、あ、あの、そ、それ、あの』

「別の子から渡されたんやろ? ここに名前と組み書いてあるやろ」

「あ、ほんまや」

「ほんま石やんモテるな」

『と、友達も石垣先輩はイケメンって言ってました』


私の言葉に石垣先輩は照れたように笑い、そないな事ないで、と囁いた。


「これありがとな、明日には返事しに行くから、もし明日聞かれたら言うといて欲しいんやけど」

『分かりました』

「どんな子やった?」


井原先輩が凄い笑顔で聞いてきたので顔を思い出す。


『可愛い子でした』

「胸は?」

『……え?』


変な質問に井原先輩を見れば石垣先輩が軽く頭を叩いていた。


「変な事言うなや」

「やって、気になるやん」

「どうでもええやろ」

「大きい方がええやろ! 夏野くらい巨乳が好きやねん!」


その発言に私はそっと先輩から離れて、翔の横にしゃがみ込む。


「井原君」

「す、すまん」

「キミ明日は特別メニューにしたるな」

「す、すまんかった」

「くだらん事言う暇あったらさっさと帰って自主練でもしいや」


翔の言葉に先輩達はベンチから立ち上がった。


「ほな、帰るわ」

『お、お疲れさまでした』


一応挨拶すれば石垣先輩達はまたな、と笑顔で部室を後にした。
二人に切りになった部室で翔とお喋りして、書き終わったのか立ち上がったので私も立ち上がる。
ベンチに置いといたリュックを持てば、教科書が落ちていて拾って中を見れば、石垣先輩の名前が書いてあった。


「行くで」

『あ、うん』


教科書をリュックにしまい部室を後にした。


**********


翌日、教室にリュックを置いて直ぐに教科書を持って、一人三年生の階に来た。
教科書に書いてあるクラスの前について中を覗けば、色んな人に囲まれて喋っている石先輩を見つけた。
楽しそうにお喋りしていて邪魔するのも悪し、何より話しかけることが出来ない。
知らない人だし年上だしどうしよう、と悩んでいれば石垣先輩が不意にこちらを見た。
目が合ったので教科書を見せれば、友達に声をかけこっちに来る。


「どないしたん?」

『これ、部室に忘れてたので、今日使うかもしれないと思って』

「え、俺の?」

『はい』

「うわ、気づかんかった、一限で使うんよ」

『あ、そうなんですね、良かったです』

「ありがとな」

『いえ、失礼します』


先輩に頭を下げて教室に戻れば、二人が来ていたので挨拶をしチャイムが鳴るまで二人とお喋りして授業を受けた。

お昼、飲み物を忘れてしまったので一人で買いに行く。
自販機でお茶を買って戻ろうとしたら下駄箱から昨日手紙を渡して欲しい、と言った子が出て来た。
目が合うとその子はぼろぼろ泣き出してしまい、慌ててポケットからハンカチを出す。
それを渡せば女の子はハンカチで涙を拭いながら泣きじゃくる。


『だ、大丈夫ですか?』

「うん、ごめんな」

『へ、平気』

「き、昨日はありがとうな」

『うん』

「今な先輩から返事もろうたんよ、駄目やった」


そう言ってまた泣き出したので、そっと背中を擦った。


「インハイ近いから部活専念したい言うて、でも、ありがとな言うてくれて」

『そ、そうなんだね』

「夏野さんのおかげで手紙やったけど気持ち伝えられてよかったわ、やからほんまにありがとう」

『ううん』

「時間かかってまうけど、私、これで前進めるわ」


にっ、と笑った子に笑いかけ一緒にその子の教室まで戻り、私は自分のクラスに帰った。
自分の席に座り二人とお喋りしながら考える。
好きな人に振られるってすごく悲しい事なのだろうな、と。
私も翔に嫌われたら死ぬほど悲しくて……私はきっと前に進めなくなるのだろう。
あの子のように強くないから、そのまま立ち止まって居ない翔を想い泣く。
翔が居ないと友達すら作れないから、一人で寂しいまま死んで行くのだろう。
想像したら悲しくて苦しくて心臓が痛くなる。


「花?」

『え?』

「ボーっとしてどないしたん?」

『あ、え、何でもない』

「ほんま?」

『うん』


じっと目を見られたので笑って本当になんでもない、と返しお弁当を食べた。

放課後一人水道でボトルを作る。
あの後からずっと頭の中で翔に振られた時の事を考えてしまう。
その時の事を考え一人悲しくなって、その度に翔の顔を見る。
今はこうして直ぐに顔を見れる場所に居てくれるけど、いつかもしかしたら。
翔が進む未来に私は居るのだろうか。
このまま翔に甘えてばかりじゃ、いつか見捨てられてもおかしくはない。
翔を支えられる人になって、逆に甘えてもいいかな、と思えるような人にならなくちゃ。
うじうじして翔の背中に隠れてるようじゃダメ。
もっと自分から進んで話しかけて、部活の人達とも喋って翔を心配させないようにしよう。

よし、と気合を入れてボトルを持って練習場所に戻った。
丁度練習が終わったようで、頑張って一人一人に声をかける。


『み、ずた先輩お疲れ様です』

「え、あ、おおきに」

『や、まぐち先輩もお疲れ様です』

「お、おおきに」

「俺は俺にも言うて」

『い、井原先輩もお疲れ様です』

「おおきに!」


辻先輩と石垣先輩にもお疲れ様です、と声をかけボトルを渡す。
最後に翔にボトルを渡してお疲れ様、と伝え他の人達にも頑張って声をかけた。


******


翔以外の部活メンバーに自分から話しかけるのを二週間以上も続けて居れば、慣れたようで今では普通に喋れるようになった。
相変わらず翔に振られた時の事想像して落ち込んだりしていたが、六月に入ってからは考え事している時間が減った。
インハイまで後二か月を切ったから部活の練習もハードになって、私は走り回って作業している。
ボトル作りだったり、インハイメンバー達のジャージを洗ったり、タイム表の書き込みだったりと色々。
気温も上がったせいで、練習中に具合の悪くなる人も出たりするので、その看病もしたりで毎日が忙しい。

今日も走り回り垂れて来る汗を拭っていれば、和馬先生に呼ばれ一緒に職員室に行く。
そこで話されたのが、六月下旬にやる強化合宿の話だった。
今で行って居た場所が今回は使えないようで、他の場所を探さなきゃいけないし、行くメンバーも決めなくては行けな。
行くメンバーは先生に届けを出さなきゃいけないし、まずは練習場所を探すとこから始めないとだ。


「俺も色々探しとるんやけど、何処ももう他の高校が予約しとったりしてるんよ」

『インハイ近いですからね』

「今週中には見つけたい思うとるんやけど、夏野はなんかええ場所知らんか?」


その言葉に思い浮かぶ場所がない事はないが、普通だったらどこかの競技場を借りてやるものだろう。

『私の…おばあちゃん家なら』


競技場とかはないが、競技場ではないが練習コースに最適だと思う。
距離もあれば山もあるし、私有地だから車も通らない練習場所としては文句ない。
翔も夏休みに帰った時はそこで練習していたし、今から電話すればいいだけだろうし。


『そこなら練習にはいいかと』

「ほんま?」

『はい、本当は貸し切りで競技場とかの方がいいかもしれないですけど、多分予約とかで埋まってそうなので』

「連絡先教えてくれんか? 俺聞いてみるから」

『あ、私聞いてみますよ、それでよければ先生に報告します』

「頼んでええか?」

『はい、マネージャーなのでやります』

「ほんならお願いするな、頼もしいマネージャーや」

『皆頑張ってるので私ももっと頑張らないとです、明日までに人数とか報告します』


頼むで、と言われたので頷いて職員室を後にした。
家帰ったら電話で聞いてみて、多分大丈夫だろうから、メンバーを翔に聞いて、と考えながら部室に戻る。
丁度休憩中だったので、汗を拭っている翔の横に行って顔を見上げた。


『……』

「先生なんやって?」

『強化合宿の話だったんだけど、それより』

「なん?」


時計を見れば四時半過ぎで、六月に入ってからは六時までやる。
終わるまでは後一時間半は残っているが、もうこれ以上はよくないだろう。


『今日はもう終わりにしない?』

「ハア?」

『その合宿の話もしたいし、なんか私具合悪い』


汗を拭っていれば石垣先輩が大丈夫か? と聞いて来たので頷く。


『ゆっくりすれば平気だと思うんです』

「ほんなら花だけ先帰ってええ」

『一人じゃ帰れないかも、途中で倒れちゃうかもしれない、ああ、具合悪い』


そう言いながらしゃがみ込めば、翔もしゃがんで背中を撫でてくれる。


『一人じゃ帰れないな、どうしよう』

「…分かった、今日の部活はこれで終いにする」

『一緒に帰ってくれる?』

「帰る」


にっ、と笑えば翔は気づいたのか、一度だけ私の頭を撫でると立ち上がった。


「今日は終いでええ」

「え、あ、大丈夫なんか?」

「放っといてええ、着替えるで」


翔が部室に入ると皆ついて行き、石垣先輩だけが私の前にしゃがむ。


「ほんまに大丈夫か?」

『あ、ごめんなさい、ウソです』

「へ?」

『私は具合悪くないです』

「どういう事や?」

『秘密です』


石垣先輩に笑いかければ、部室の中から井原先輩が石垣先輩を呼んだので先輩は立ち上がる。


「ほんまにウソなんやな?」

『はい、すみません』

「いや、具合悪ないならええんよ」

『ありがとうございます』


先輩も着替えに行ったので、立ち上がってボトルやらの片づけをする。
洗ったボトルを籠に入れ部室横で待っていればインハイメンバー以外の着替え終わった人達が外出て来たので、ごめんなさい、と謝っておく。
石垣先輩以外は私が具合悪いと思い込んでいるのか、無茶せんでな、と声をかけてくれ帰って行った。
部室に入ってボトルを拭いて、片付けノートを書き込んでいる翔の手を掴む。


『家帰ろう、しんどい』


翔はちらっと私を見てノートを閉じたので手を離せば、椅子から立ち上がりそれを鞄にしまう。
私もタオルをリュックに詰め込んで背負い、歩き出す翔の後を追いかけた。


『今日はすみません、明日にはよくなると思うので、お先失礼します』

「よう分からんけど、無茶せんでな」

『はい、言っておきますね、では』


お辞儀をして待っていてくれた翔の横に行って二人で歩き出す。
校門を抜けたので翔を見上げれば、翔も私を見てくる。


『インハイ近いし頑張ってるのはいいけど、無茶するのは違うと思うよ?』

「……」

『ごめんね、口出ししちゃって』

「よう……気づいたな」

『そりゃ、ずっと傍に居れば顔色くらい分かるよ、前に無茶した時と同じ顔してる』

「……」

『今日はなんか元気出るお夕飯にしようか、あ、夏バテにはウナギさんいいって言うし、ウナギにしようか、後冷ややっこもつけて、野菜も』


スーパー寄らないとだから、翔は先に戻ってて、と翔を見れば足を止めた。
私も翔の横で止まれば、翔は私の手を握ってくる。


『どうしたの?』

「もうボクは必要ないんやと思うてた」

『……え?』

「ボク居らんでもザクに話かけとったし、石垣君と楽しそうにお喋りしとる」

『違うよ、誤解だよ、私翔居ないと』

「ボクの方が花おらんとダメになっとる」

『心配ないよ、私は翔の傍にいるし、どこにも行かないよ、だって私翔居ないと何も出来ないんだもん、翔居るから部活の人達とも話せたし、それに……ごめんね、言えば良かったね』

「なん?」

『帰ったらゆっくり話そう、その前にスーパー寄ってウナギさんとお豆腐買おう』


翔の手を引いて歩き出せば、翔もついて来た。
スーパーでウナギとお豆腐と夏バテにいい野菜を買って家に戻る。
買った物を冷蔵庫にしまい、ソファに座っている翔の横に正座して座った。
翔もこちらを向いたので、両手の指を握って翔の目を見つめる。


『部活の人達に自分から話しかけたのは翔に見捨てられないようにしようと思ったから』

「意味が分からん」

『あのね』


私は翔に自分が考えて居たことを全て話した。
いつの日か翔に振られるんじゃないか、と考え始めたこと。
このまま翔に甘えてばかりじゃ、いつか見捨てられてもおかしくはない。
翔を支えられる人になって、逆に甘えてもいいかな、と思えるような人になろうと、もっと自分から進んで話しかけて、部活の人達とも喋って翔を心配させないようにしようと思った事。


『ちゃんと言えば良かったね、翔が居なくていいなんて思った事ないし、居なくならないで欲しいからしたけど、その行動が逆に翔を不安にさせてた、気づかなかった、ごめんね』

「……」

『今までだって翔が居たから前に進めたし、これからも翔が居るから進める、それはずっと変わらない、私には翔が必要なの、あの日会った時から、私の中にはずっと翔が居る』


だから、これからも私の傍に居て欲しい、と囁けば翔が動いたので指を離せば、翔に抱きしめられた。
私も翔の背中に腕を回してそっと撫でれば、翔は私の肩に顔を埋める。


『不安にさせてごめんね、そのせいで無茶したんだね、もっと早くに気づけばよかった』

「今まで無茶すればすぐ気づいてくれとったから、態としたんもある、気づいてくれんかったらどないしよう思うたけど、いらん心配やった」

『うん』

「ボクも言えば良かった」

『ん?』

「ボクも花が居らんとダメやからボクから離れんでって」

『お互い思った事は口に出さないとダメだね』

「そやね」

『じゃあ、今思った事言うね』


翔が頷いたので怒るかな、と思ったけど、可愛いよ、と伝える。


「ピッ!」

『今の翔凄く可愛い、心臓きゅうってなる、好き』

「な、何言うて」


離れた翔は顔を真っ赤にしていて、私は笑って顔を近づけた。


『ふふ、照れてる、可愛い』

「やめいや」

『不安にさせたから、安心して欲しくて』

「揶揄っとるやろ」

『揶揄ってはないけど、照れてる翔は珍しいからもう少し見たいなとは思ってる』


その顔も好きだよ、と囁けば翔は顔を隠したので膝に座って手を退ける。
赤い顔のまま私を見ている翔の首に腕を回し引き寄せキスをした。
一度だけのキスで止めようと思ったのに、翔が私の頭を押さえ長い舌を絡めて来た。


『んっ…はっ』


変な声が出て恥ずかしいけど、翔はそのまま私をソファに押し倒し、数秒キスして翔が離れる。


「プクク、あれあれ、花どないしたん? 顔真っ赤やで?」

『照れました』

「かいらしいな」

『心臓爆発しそう』

「確かめてええ?」

『いいけど、確かめるだけで終わる?』

「終わらんな」

『じゃあ、駄目』


両手で胸を隠せば翔はニッと笑い耳元に顔を近づけ、べろっと耳を舐められた。


『ひっあ』

「なんでダメなん? ボクの事必要なんやろ?」

『うん、だから続きは夕飯食べてお風呂入ってから』


逆に私が翔の耳を舐めて、それまでお預け、と囁く。


「はあっ……お預けなん?」

『お預け、だってお夕飯ウナギさんだよ?』

「……」

『具合悪いのは変わりないんだからウナギさん食べて元気だして、明日からまた頑張らなきゃでしょ?』

「そうやね」

『だから、それまで我慢ねお互いに』


翔が見て来たのでニッ、と笑いかけ一度だけキスをした。