グレイゾーン22
ベジータとの手合わせがなくなった後も、悟空は一人で修行を続けた。雑念を払うように、以前にも増して集中した日々が続く。この星の重力にもすっかり慣れて、悟空は地球にいた頃のような機敏な動きができるようになっていた。
一人で過ごす時間が増えてから、悟空は自分なりにフリーザについて調べて回った。フリーザはこの星では知らぬものがいないほど有名な存在で、その正体を知るのは難しいことではなかった。サイヤ人にとってフリーザは目の上のたんこぶのような存在で、好いている者は一人もいなかった。その強さはやはり桁違いで、うっとおしいと思いながらも排除できずにいるらしい。サイヤ人とフリーザ軍との関係は深く、身に着けている戦闘服や、スカウターなどはフリーザ軍から支給されたものらしい。強さに加え、この技術力を前では、誇り高き戦闘民族でも太刀打ちができないとのことだった。
悟空はそれらの情報を得ながら、ベジータの振る舞いを思い出す。戦闘に関しては冷静なベジータがあそこまで取り乱していたことを思うと、悟空は嫌な予感がしてならなかった。
悟空の胸のざわめきが現実となるまでそう時間はかからなかった。それはあまりに突然で、当たり前だった世界が崩壊するのは一瞬のことであった。
フリーザ率いる軍の前に多くのサイヤ人が倒れていく。特にフリーザの圧倒的な力の前ではなすすべもなく、気弾の一発で町がすべて消し飛んだ。サイヤ人は逃げもせず、フリーザ軍に立ち向かう。しかしフリーザどころか、配下であるエリート部隊を前に多くのサイヤ人が散っていく。ギニュー特戦隊と呼ばれた五人組ですら、並の者では倒すこともままならない。湧き上がる悲鳴と建物が崩れる破壊の音。町のはずれに建てた悟空のホイポイカプセルまでそれは聞こえていた。悟空は暴虐の限りを尽くすフリーザ軍を止めにすぐさま立ち上がったが、飛び込む寸前をベジータに止められた。
久しぶりに会ったベジータから、苛立つような荒さは消えていた。
オラをとめるな! そう言って悟空が拳を握る。
きさまはこの星の人間ではない。手を出すな。ベジータはそう強く言ってのける。
悟空は納得できなかった。悟空の体にサイヤ人の血が流れている意識もあったし、この星に住んでから、多くの人の世話になった。そんな自分を無関係とは言わせない。
「邪魔だ」
しかしその悟空の意気込みを無に帰すほどの鋭い眼差しがベジータから向けられる。よそ者はよそ者だと、冷たい瞳が悟空の足を凍らせた。
出足が遅れた悟空を置いて、ベジータはフリーザ軍へ向かって飛びたつ。己の意思はベジータに言われて砕けてしまうほど、弱いものだったのか。悟空はベジータの背中を見送りながらやりきれない思いがした。いくら強いベジータといえど、フリーザから感じ取れる気の大きさは、到底敵うことはないほど巨大だった。
2020/12/06