気持ちいいことしか知らないの5
五
学校で八戒と離れている間、三ツ谷は休み時間に携帯電話を開く。大抵、八戒からのメールが届いていて、これから体育だとか、授業が分からなくて眠いとか、早く三ツ谷に会いたいだとか、そういう他愛のない内容が書かれている。時折、写真が載せられていることがあって、携帯のカメラも使いこなせない三ツ谷の画像フォルダは、八戒から送られてくる画像で埋められている。
それらのメールをさっと返せるほどメールを打つのが早くない三ツ谷は、何通かに一度、返信をするだけである。もっと返して欲しいと八戒はいうものの、三ツ谷がメカを苦手としていることも知っているので、二人の中では大きな問題とはなっていない。
そのメールが、ここ最近どうにもそっけない、と三ツ谷は思っていた。一つの授業が終わり、次に移る間に一通は必ず届いていたメールが減っている。届く内容はいつもと変わらないように見えても、絵文字が少ないとか、写真が全く送られてこないだとか、明らかな変化があった。三ツ谷は気付いた時点ですぐに反応してやりたいと思ったのだが、あいにくメールを打つのが遅いために反応は遅くなってしまったし、うまい文章も作れなかった。
結局、会った時に直接確かめようということになるのだが、実際に会う八戒はいつも通りニコニコとしていて、三ツ谷の感じた違和感はない。
暫く様子を見ていたものの、メールに対する違和感は相変わらずだったので、三ツ谷はふとしたタイミングで尋ねてみたのだが、八戒は何のことだととぼけるばかりで正直に話そうとはしなかった。
八戒の変化はメールだけではない。先日、突然恋人の話をされた。彼女ができたら教えてという八戒に、何も起きていないはずがない。
万一、八戒の言葉通り受け止め、八戒の周辺で何も起きていなかったとしたら、三ツ谷自身が八戒に何かをしてしまったということになるが、八戒以外目もくれたこともない三ツ谷が、彼女ができたと疑われるようなことはあるはずもない。
明らかに八戒がおかしいと三ツ谷は分かっていたものの、二人の内緒のキスは続いているし、自分に対して怒っているというわけではなさそうだったので、三ツ谷はこれ以上突っ込むことはやめにしようと思った。それは自分とは関係のない、例えば学校の授業やクラスのこととか、そういったことで何か問題が発生しただけで、八戒は自分に話すタイミングではないのだと三ツ谷が自己完結したからだ。この時三ツ谷は、八戒が自分に対して隠し事をするなどとは全く想像していなかった。
三ツ谷は相変わらず、八戒に対する恋心をひた隠しにしていた。意識しないように、また八戒に必要以上の意識をさせないように、自分からキスをする時の三ツ谷は細心の注意を払っていた。だがいつまで経ってもキスをする時はドキドキするし、少しでも格好良いと思われたくて、変にキメてしまうことがあり、その度にそんな自分をダセェな、と思って三ツ谷は自身を恥じていた。
一方、三ツ谷が抱く恋心なんて一切気付いていなかった八戒は、三ツ谷が毎日のキスにドギマギとして浮かれている間、ずっと胃をキリキリさせていた。
いくらキスを重ねても、三ツ谷とは恋人のような空気にはならないし、八戒を弟のようだと言ってくる。八戒は三ツ谷が本当の兄だったらいいと思ったこともあったが、今はそう言われることが何よりも苦しかった。八戒は三ツ谷に年長者の振る舞いをされるたび、自分のことは眼中にないのだと言われているような気分になった。
三ツ谷に甘えて、面倒を見てもらうことが心地よかったはずなのに、八戒は自分がいつまでも甘えているから、三ツ谷は自分を子供扱いしてくるように思えた。独り立ちしなければと思うものの、三ツ谷のことが気になってしょうがなく、日課になっているメールや文章を変えてみたり、やっぱりそう簡単に変われないといつものように送ってしまったり、八戒は自分の感情に振り回されていた。
三ツ谷の前ではそんな自分を気付かれないように、八戒はいつも以上にニコニコと笑っていた。仮面をかぶり続けているのが疲れてくると、八戒はある集会の日、予定があると嘘を吐いてズル休みをした。
メンバーが揃わないことは珍しいことではない。八戒がいなくとも集会は始まり、問題なく終わった。
おかしいと思ったのはやはり三ツ谷だった。きっと大丈夫だろうと思っていたが、八戒の状況は悪化の一途を辿っている。
集会が終わると、三ツ谷はすぐさま八戒に電話を掛けた。しかし反応はなかった。メールを打つ間も惜しくて、三ツ谷はバイクを飛ばし、八戒の自宅へと向かった。
マンションのエントランスでインターホンを鳴らす。反応はなかったが、絶対に自宅にいるはずだった。
三ツ谷は柚葉に電話を掛ける。最寄りの駅にいるというので、すぐにバイクで迎えに行った。状況を説明すると、柚葉が黙る。何かを知っているのかと尋ねたが、柚葉は何も聞いてないと答えた。
「アタシもおかしいとは思ってた。八戒に聞いたけどアイツ、何も喋んないし……でも、原因は察しがつく」
流石の姉である。三ツ谷は縋るような思いでそれが何かと訪ねたが、柚葉は言葉を濁した。
アンタが直接聞きな。そう言って睨むような眼を向けられたので、三ツ谷は押し黙った。
後部座席に柚葉を乗せ、再びバイクに乗る。すぐに柴家の自宅に着き、三ツ谷は柚葉の後ろをついて歩いた。
何も知らない八戒は玄関で姉を出迎える。すぐ後ろにいる見慣れた兄貴分の姿に言葉を失っていた。三ツ谷の予想通り、用事があるなんていうのは八戒の吐いた嘘だった。
「ちょっといいか」
そう言って三ツ谷は八戒を外へ呼びだす。青ざめた表情を見せるので、怒ってねえからと三ツ谷は言葉を足した。
それでも八戒は尻込みしていた。集会をサボるくらいなので、そういう態度を取るのは当然だった。
八戒にここまで拒絶されたのは初めてだった。何をするにも自分についてきて、タカちゃんタカちゃんと懐いていた八戒が、どうしてこれほど心が離れてしまったのか三ツ谷には分からなかった。
そして三ツ谷はようやくここで、八戒がおかしくなってしまった原因は自分にあることを理解した。三ツ谷は自分でも知らぬうちに、八戒を傷付けていたのだと思った。
「少しでいい。すぐに終わらせっから。……オレと話してくんねえか」
それでも、三ツ谷はそういうしかなかった。自分が八戒を傷付けて、怖がらせても、それは自分の意思ではない。誤解があるならすぐにでも解いて、自分が八戒を脅かすような存在ではないと言いたかった。
三ツ谷は必死だった。どうにかして八戒に自分を知って欲しいと思った。
その必死さは三ツ谷の表情や態度に出ていた。三ツ谷もまた苦しい表情を見せ、勇気を振り絞るように拳を握っていた。
沈んだ空気を柚葉が割って入る。頭冷やしてきなよ。そう言って八戒の背中を押した。
「アンタも」
柚葉は三ツ谷の背中も押す。二人は柴家の玄関から追い出されるように外に出された。
二人きりで話せる場所がいいな。重たい空気が漂う中、三ツ谷が静かに言う。
そうだね。暗い表情のまま八戒も頷く。
三ツ谷は後部座席に八戒を乗せると、狭い路地を走りぬけた。
十分ほどでバイクが停車する。そこは二人がよくキスをした、秘密の廃倉庫の場所だった。
ここに来る時はいつもお互いご機嫌で、楽しい思い出しかなかった。積み上げられたタイヤの上に座ると内緒のキスを思い出して、お互いいたたまれない思いがした。
ふー、と三ツ谷が静かに息を吐く。何から喋ろうかと思案していた。
聞きたいことは山ほどあった。最近の八戒の行動には引っかかることばかりだった。
でもそれらを一つずつ尋ねるには時間がないし、ややもすれば喧嘩になってしまいそうだった。
「ヤなことあったか」
三ツ谷は考えて、いたってシンプルに質問した。
ないよ。八戒は短く答える。
そうか。三ツ谷はそれを受け止める。はじめからすべて話してくれるほど、都合のいいことはない。
「最近のオマエ、おかしかったからよ。何かあったんじゃねえかなって思ってさ」
何もないならいい。三ツ谷は穏やかな口調でいった。
会話はそこで途切れたが、三ツ谷は立ちあがらなかった。何もないならいいと言いながら、これで話を終わらせるつもりはなかった。
三ツ谷は八戒から話して欲しかった。そういう気分になるまで、いくらでも待つつもりだった。
八戒は隣に座る三ツ谷を盗み見る。三ツ谷はあえて八戒に顔を向けず、ただ真正面を見ていた。
「……話、ないならさ。もう帰ろうぜ。寒いしさ」
「……、あとちょっとだけ、な」
沈黙が続く気まずさに堪え切れなかった八戒を三ツ谷が制する。すっと立ち上がった八戒だったが、再びタイヤの上に腰を下ろした。
ただ黙って隣にいるだけなのに、八戒は拷問を受けているような気分だった。嘘を吐く自分をじわじわと苦しめてくる空気の重さに呼吸もままならなくなる。その上、夜が更けこむと風がグッと冷たくなり、薄手のスウェットで出てきた八戒は寒さで縮こまった。
「なあ、八戒。オレといるの、イヤか」
三ツ谷は相変わらず顔を正面に向けていた。威圧感を与えることを避けたくて、八戒の顔を見ないようにしていた。
八戒は三ツ谷の言葉にびっくりしていた。何が、どうなっているのか、状況が吞み込めない。
「ワリィ。オマエに何かしちまったかもしんねえけど、自覚ねえんだ。八戒がオレのこと嫌いっていうなら、それでいい。ただ、オマエのこと傷つけるつもりはなかった」
オレから言いたいのは、それだけだ。三ツ谷はそう言って、あたりはまた静かになった。
八戒は隣にいる三ツ谷を覗き見ながら躊躇していた。三ツ谷は何も悪くない。ただ、自分が、三ツ谷を好きになってしまったのがいけなかったのだ。
でもそんなことを正直に言ってしまったら、それこそもう二度と三ツ谷のそばにいられなくなる。だが黙っていれば、三ツ谷を悪者にしたままだ。
沈黙を破るように三ツ谷が小さく笑った。面白いことがあったわけじゃない。ただこの重たい空気を和ませるためだけの、愛想笑いだった。
そろそろ行くか。そう言って三ツ谷は服を叩き、土埃を払う。
三ツ谷が一歩前を歩き出した瞬間、八戒は三ツ谷の服の裾を掴み、引き留める。言葉は出ないままだったが、先に体が動いていた。
「ちがう、タカちゃんのせいじゃない、っ」
動いていないのに全力疾走したみたいに八戒は息切れがする。胸がドクドクと激しく体を叩き、痛かった。
振り向いた三ツ谷は目を丸くしていた。ようやく視線があった二人は、お互い元気のない表情をしていると思った。
三ツ谷は再び腰を下ろした。八戒が何かを言いたげで、でもなかなか言葉が出てこないのを、そばにいてゆっくり待っていた。
八戒は胸が苦しかった。苦しいだけ三ツ谷が好きなんだと思った。
八戒は自分が苦しい思いをするのは当然だと思った。だが、三ツ谷が苦しい思いをするのは間違っている。本当のことを言って、早くその苦しみから解放させなくてはと思った。
「あのね、」
八戒はゆっくりと喋り始める。いつもの八戒であればいくらでもストレートに感情を伝えられるのに、今は好きという気持ちを伝えることがすごく難しく思えた。
八戒は三ツ谷といて気付いたこと、思ったことを一つずつ伝えた。それはいまの状況と関係のない話もあったように思えたが、三ツ谷はウン、ウンと頷きながら、八戒の言葉を遮ることなく聞いていた。
「オレ、タカちゃんといると、苦しいの。タカちゃんと一緒にいない時も、苦しいって思う」
三ツ谷は苦い顔をした。八戒は否定したが、やっぱり自分が八戒を苦しめているんだと思った。
しかし八戒は苦しいといいながらも、三ツ谷の服の袖を掴んだまま放さなかった。それどころか放したくないというように、それをさらに強く握った。
「オレね、タカちゃんのこと、好きみたい」
そう言った八戒の手は少し震えていた。それは寒さのせいではないように思えた。
三ツ谷は嬉しかった。ずっと片思いだと思っていたのに、八戒も自分のことを好きだというのが信じられなかった。
喜びで体温が上昇していくのを感じながらも、三ツ谷は不思議な気持ちだった。自分を好きだと言っているのに、八戒は少しも嬉しそうでも、幸せそうでもなかった。自分と同じ好きを持ちながら、八戒は三ツ谷と同じような気持ちをもっていないように思えた。
オレも、八戒のことが好きだ。
三ツ谷は不思議な気持ちになりながら、八戒へ自分の思いを伝えた。嬉しくて、恥ずかしくて、すごく照れ臭かったけど、八戒のことが好きで、少しでも八戒の気持ちをわかり合いたいと思った。
「オレは八戒といて苦しかったことねえよ」
そのために、三ツ谷は真剣な顔をしていう。自分が八戒を好きだという気持ちに、何一つ苦しみはないということを。
しかし三ツ谷の態度は、それがさも正解だというようで八戒はムッとした。八戒は三ツ谷のいう好きが、自分と比べて軽々しいものに思えた。
「タカちゃんは何もわかってないよ!」
八戒は激昂する。難しいことを考えるのが苦手な八戒が、悩みに悩みぬいて出した答えを、三ツ谷に子供だましだと言われているように思えた。
しかし今度は三ツ谷が眉を顰める。自分の気持ちを軽んじられていると思ったのは三ツ谷も同じだった。
「わかってねえのは八戒だろ。勝手に決めつけんなよ」
「わかってるよ! タカちゃんの好きって、オレのと違う意味でしょ!? 愛してるってこととは違う好きだよ!」
八戒は大声で叫んだ後、ふにゃ、と顔を崩した。八戒は自分で言っていて悲しくなった。三ツ谷が、自分と同じ意味で好きではないということを、認めなければならなかった。
意気消沈する八戒を見て三ツ谷は黙る。今にも泣き出そうな八戒を前にして、もう一度怒るなんてできるはずなかった。
目に力を入れて涙を堪える八戒を前に、三ツ谷は言葉を選ぶ。長年距離が近かっただけに拗れてしまった関係は、複雑に絡み合った糸に似ていた。
「オレは八戒といて楽しかったことしかねえ。八戒がルナとマナと一緒に遊んでんの見るとあったかい気持ちになるし、一緒に遊んでバカやってる時間がもっと続けばいいって思ってる」
二人の秘密の倉庫の近くは線路が近い。ガタンゴトンっと電車が猛スピードで走り抜け、二人に強風が吹きつける。
「オレは……それが好きってことだと思ってる」
三ツ谷は自分の発言に照れていた。柄にもない臭いことを言って顔が真っ赤だった。
だが決してふざけて言ったりはしなかった。八戒に対する真剣な気持ちを、三ツ谷は少しでも冗談めいて言いたくはなかった。
三ツ谷の言葉の後、八戒がスンっと鼻をすする。肩の震えが、少しずつ収まっているように見えた。
「八戒はオレといて、そんな風に思ったことはねえの?」
三ツ谷は両手の拳に力をこめる。お互いがお互いを好きだということが分かった今も、三ツ谷から不安が消えたわけではない。どんな風に好きで、どんな時が好きで、どんな相手が好きかなんて、言葉にしなければ分からない。自分が求めていることと、相手が求めていことが同じであるとは限らない。
そう思うと、口から吐き出す一言一言がとてつもなく重く、三ツ谷は勇気を振り絞ったそばから空っぽになっていくような心細さがあった。
八戒は俯いたまま、手で顔を擦る。目元を軽く拭うのを見て、不安に思うのは八戒も同じなのかもしれないと三ツ谷は思った。
「オレも、ある。……苦しいより前に、楽しかった。……タカちゃんと、一緒にいると」
八戒は三ツ谷との日々を振り返り、パズルのピースを合わせるかのように心の中を整理をする。小さな思い出が一つ、また一つと繋がって、だんだんと大きな絵になっていく。三ツ谷と一緒にいてたくさん笑った日々が、八戒の頭の中でどんどん大きくなっていく。
「じゃあ……オレ……苦しいって思うより、ずっと前から……タカちゃんのことが好き、だったの?」
八戒はわからなかった。苦しいことが愛としか、教えてもらえなかった。苦しくない愛があるなんて考えたこともなくて、いま突然言われても、今まで三ツ谷に対して思っていた気持ちがそうだったなんて、自信がない。
だから八戒は質問した。これが三ツ谷のいう愛ってことなのか、三ツ谷に教えて欲しいと思った。
しかし三ツ谷はそんな余裕もなく、ただ顔を真っ赤にしていた。八戒の無自覚な情熱的告白に赤面し、狼狽えることしかできなかった。
そんなことも知らずに、俯いていた八戒は恐る恐る顔を上げる。なぜか顔を真っ赤にして照れている三ツ谷がいて、八戒はますます訳が分からなくなった。
だが赤面する三ツ谷の顔は、どこか嬉しそうだった。なんつーこというんだよ……! と、怒るみたいにいうのに、全然怖くなかった。いつも格好良い三ツ谷が少し格好悪くて、でも、それが全然悪くない、って八戒は思った。
八戒は顔を真っ赤にする三ツ谷から目が離せなくなった。自分が言った言葉に対して喜んでいるみたいで、それが嬉しくてずっと見ていたくなった。
穴が開きそうになるほどじっと見つめる八戒に、三ツ谷が頭を掻きむしる。
……しらねぇけど……そうなんじゃねぇの………。
三ツ谷はそう言った後、いっそう顔が熱くなる。強がって見せても、三ツ谷は内心いっぱいいっぱいだった。
八戒はまた目を潤ませて、タカちゃん、と縋るように呟く。自分の知らない新しい愛に、八戒もついていくので精一杯だった。
三ツ谷に思いが通じたのか、三ツ谷も同じ思いだったのか、八戒はきちんとした整理がつかないままだったが、悪い方向に進んではいないってことだけ、八戒はなんとか理解する。
戸惑いながらも自分を信じる八戒がいじらしく、あまりに健気で、三ツ谷は胸がきゅっと切なくなった。
「オレ、八戒とこれからもずっと一緒にいて、ずっと楽しいことばかりだといいって思うし、きっとそうだと思ってる」
三ツ谷は握っていた拳をゆっくり開き、八戒の手をそっと握る。八戒の手は三ツ谷の手より大きいが、細長い指が頼りない。体ばかり大きくて、まだ心が伴っていない八戒らしい手をしていた。
八戒はそっと三ツ谷の手を握り返す。たった一歳年上なだけなのに、しっかりとした指が頼もしくて、心が温かくなる。
「でもな、八戒といて苦しいって思っても、オレはずっとオマエのそばにいる。それが愛なんじゃねえかって思う」
八戒の目の端から、止まっていた涙が溢れ出す。
「ずっと、一緒で、いいの……?」
ああ。三ツ谷は頷き、八戒の肩を抱き寄せる。自分より大きな体が縮こまって抱き着いて、三ツ谷はその姿をひどく愛しいと思った。
八戒は三ツ谷の首元に顔を埋め、零れる涙をぬぐった。苦しくても、楽しくても、ずっと一緒にいてもいいって許されたことが、嬉しくてしょうがなかった。
完