天使なんかと恋2


羽の生えていた男はベジータが拒否をしても勝手に家まで着いてきた。途中で走って撒こうとしたり、無理矢理扉を閉じて追い出そうとしたが、その度に男はいつの間にかベジータの前に移動していて、ついにはベジータの部屋の中まで入り込んでいた。
さっさと出て行け! ベジータが怒りで声を荒げると、男はベジータを必死になって宥める。怒らせる原因を作っている張本人に「そんなに怒るなよ」と言われ、ベジータの怒りがますます募っていく。
「オラ天使なんだ。いたら結構便利だぞ」
男はそう言って、テーブルにあった時計を手にした。それは今朝、べジータが床に落とし、壊れたばかりの時計だった。時計の針はベジータの起床時間だった七時で止まっていた。
男は手に取った時計を軽く撫でると、再びテーブルに時計を戻す。
「時間も直しといてやったぞ」
男が戻した時計を目にすると、秒針がカチカチと音を立てて動いていた。時計の針は五時半を指している。
ベジータは信じられないと目を丸くする。そのあまりに鮮やかな出来事に、男は手品でも披露したようにも思えた。しかしこの男が手品師だと言っても、あの公園で見た光景は説明出来ない。とはいえ、ベジータはまだ半信半疑で、男の背中をじっと見つめている。あの時の羽は現実か、幻か……。
「あ、おめえ、オラのこと疑ってんな」
ベジータの視線の先に気付いた男は、少しだけだと前置きしたあと、背中をぐっと丸めこむ。力むような声を小さくあげると、男の背中からあの公園でみた大きな翼が勢いよく飛び出した。
「これならいいか?」
男はそう言ってベジータを窺う。ベジータはまた呆然として、男のいう天使ということが、まさか本当なのかと信じ始めていた。


2020/09/19