天使なんかと恋9
朝日も上りきらない明け方、何かが顔に触れてベジータは目を覚ます。起きたばかりのぼやけた視界には、白い羽がふわりと舞っていた。それは初めてカカロットに出会った時に見た羽だった。なぜここに? という疑問と共に、意図的なことを感じたベジータは、窓の外に向かう羽を追いかけてカーテンを開いた。隣の家に住んでいるカカロットが、何かに引っ張られるように引き摺られているのが見える。ベジータは何事が起きたのかと思い慌てて家を出て、カカロットの落とす羽を追いかける。
カカロットを追いかけて着いた場所は、初めて出会った公園だった。カカロットは初めて会った時の服装に戻っていて、立派な羽も生えていた。
「カカロット!」
ベジータがその姿を見て叫ぶ。引き上げられる体をそのままに、カカロットがベジータを振り返る。
「すまねえ。オラ、帰らねえと」
ベジータは動揺していた。それはあまりにも急な出来事だった。
「神様たち怒ってるみてえ。オラ、神様から呼ばれてんのに行かなかったから」
それはベジータと共に美術館を訪れた日。カカロットは神に呼びだされていた。カカロットのいう予定とは、神との用事であった。
「なんで言わなかった!」
ベジータは拳を握り、立ち尽くす。
「ベジータだって大切な用だったんだろ? オラ、ベジータといんの楽しかったし、いいんだ。おめえが頼むなら、オラの用事なんて大したことじゃねえんだ」
カカロットの体がふわりと持ち上がる。カカロットの意思とは関係なく、空に吸い込まれるように浮きあがっていく。
ベジータは奥歯を噛み締める。カカロットがいいと言っても、ベジータは何も納得できない。
きさまがいなければ、意味なんてない。そうはっきりと思うのに、素直になれないベジータは言葉にすることができなかった。
「またな、ベジータ」
カカロットは強い光に包まれて、ベジータの目の前から姿を消した。
2020/09/27