火遊び
夜遊びの続編にあたる話ですが、これだけでも読めます。
谷垣気になるなあって思っている尾形と、尾形って変な奴だけど好かれるのは悪い気しないなって思っている谷垣が初Hを経て自然消滅、釧路で出会って懐かしスケベする話です。
* * *
一
谷垣が意識を取り戻すと、視界は見慣れない天井だった。美しい木目を見ながらハッとして起き上がると、小さな部屋には尾形が一人で酒を飲んでいた。今しがた起きたことを思い出した谷垣は、己の身なりを確認する。寝ている間に女がきちんと服を着せてくれたようで、シャツのボタンは丁寧にはめられていた。
「起きたか」
谷垣は咄嗟に謝罪する。何があろうとも、上官の席で寝こけてしまうなどということは許されない。
「心配するな。たいしたことじゃない」
尾形の前にある酒瓶の中身は谷垣の記憶に残る量とほとんど変わっておらず、さほど時間が経っていないようだった。安心したのも束の間、直前の行為を思い出した谷垣はカッと頬を赤らめる。
「尾形上等兵殿……ちょっと、冗談が過ぎるのではありませんか」
じろりと睨むように見つめれば、尾形はくくと小さく笑う。随分楽しんだように見えたがな。そういう尾形の声はとても楽しげであった。
谷垣は尾形に連れられ、料亭に来ていた。そこは特殊な店で、気に入った女中がいれば枕を共にすることができる。布団に入らずとも、触るくらいは当たり前のことで、表立って遊郭に行けない男たちに人気の店であった。
谷垣は尾形に誘われ、二度ほどこの店を訪れる。一度目はそんな店とは知らず、尾形が女と触れ合うのを見せつけられ、二度目に至っては半ば無理矢理女をあてがわれた。部下が喜ぶだろうと仕向けたらしいが、谷垣には迷惑なだけだった。はっきりと自分には不要だと言ったのに、尾形は谷垣の困った姿が見たいのか、悪戯する子供のような無邪気さで谷垣の意見を聞き入れなかった。
「女性にあんなことをされたら、誰だって……!」
恥ずかしがる谷垣を見て尾形はまた笑った。きさまも男だったか、と満足そうにする尾形を見ていると、谷垣は何を言っても無駄だと思い、それ以上話すのをやめた。むくれる谷垣を見た尾形はニヤけた顔をしながら、そんな顔をするなと宥める。喜んだ姿を見たかった、などとうそぶきながら、尾形は酒瓶を手に取り酌をする素振りを見せた。
「飲めよ。誰もいなくなったんだから、いいだろ」
うまく誤魔化されながらも、上官の酌を無視するわけにもいかなかった谷垣は、だるい体を起こして杯を手にしていた。
2020/11/29