ヒューマノイド


人間みつや×AIはっかいのみつはち。片方がAIになったら、って考えた時にどっちがいいとか選べなかったのでどちらも書くことにしました。どっちも続き書きたいっすねえ……。
みつやの設定は原作沿い。


*   *   *


トーキョーを代表とする繁華街、シブヤ。それは三大副都心の一角をなし、若者の街の代名詞とされる場所だった。毎日多くの若者が意味もなく集い、またオフィスビルも多く存在する巨大な街は、駅前の煌びやかな建物の一歩でも裏に入ると、同じシブヤ区内とは思えないほど古びた公営住宅が並んでいた。
三ツ谷隆はその建物の一つにある家族の長男として生まれた。父を幼い頃に亡くし、母が一人で三ツ谷を育てた。三ツ谷には妹が二人いて、まだ年齢が一桁と幼い。三ツ谷は日々働きに出る母の代わりに家族を守り、まだ中学生と幼いながらも一家の大黒柱たる頼もしさがあった。
三ツ谷の自宅近くにはその辺りの団地に住む子供たちが集まる公園がある。三ツ谷も幼い頃はよくその公園に遊びに行ったものだった。
その日、三ツ谷がいつものように夕飯の買い出しに行ったスーパーの帰り、公園のブランコに一人の男が座っていた。美しい横顔をして、有名なブランドの服を着た、見るからに裕福そうな男だった。この辺りは古い住宅地ばかりで、富裕層の男が目的とするような場所はありそうもない。三ツ谷はこの場所から浮いた存在であるその男がつい気になって、歩きながら遠目でその男を眺めていた。
不意に、男が三ツ谷の方向に顔を向ける。三ツ谷の視線に気付いたようだった。三ツ谷は慌てて誤魔化そうとしたがすでに遅く、男とばっちり目が合った。
男はブランコから立ち上がり、ずかずかと三ツ谷に向かってくる。立ち上がった男は三ツ谷が想像していた以上に身長が高く、それはそれほど足が長い証拠でもあった。
この辺りは決して治安がいいわけではなく、突然喧嘩を売られてもおかしくない場所でもあった。三ツ谷の両手にはさきほど買ったばかりの野菜や肉がたっぷり入ったビニール袋が提げられていて、何かあったら対処が難しい状態であった。
無言で近付いてくる男に対し、ヤバいヤバいと焦りながらも、三ツ谷はその男の姿から目が離せないでいた。全身を見るとより人間離れしたその男の美しさに目を奪われて、三ツ谷は体が動かなかった。
男は三ツ谷の目の前までくると、スーパーの袋を掴んだ三ツ谷の手を力強く掴んで顔の目の前まで持ち上げた。細身の体からは信じられないほど力が強い男に手を引っ張られた三ツ谷は、男の大きくて水晶玉のように透き通った瞳に見つめられていた。
「ショートーって場所知ってるか!?」
男はそう言ってじいと三ツ谷の瞳を覗き込む。キスされるかと思うほど顔を近付けられて、三ツ谷は驚きながら後ずさりした。
「あ、ああ。知ってるけど」
「ホントか!? 迷っちまってよ〜そこまで案内してくれねえか?」
男の美しい顔は意外にもコミカルに動く。真一文字に結ばれていたはずの唇が大きく開き、綺麗に並んだ白い歯が男の清潔感を際立たせる。
三ツ谷は男の迫力に圧倒され、よくわからぬままにイイヨと返事をしていた。
男はニコリと笑い、ありがとうと大きな声で礼を言う。三ツ谷は自分より大人びて見えたその男が子供みたいにピュアな笑顔を見せるので面食らった。
男は三ツ谷の隣に並び、さあどうぞとばかりに歩き出す。まずは一度、家に戻って荷物を置いてからだと思いながら、三ツ谷は意気揚々と歩く男の背中を見つめる。
ふと、三ツ谷は男の耳についたピアスに目が向いた。片耳につけられた大きな輪のピアスはどこかで見覚えがある。好きなブランドのものだったか……と頭をひねっていると、今朝方に見たニュースを思い出した。それは最近富裕層の間で流行っているヒューマノイドがつけるように定められたピアスだった。


2022/02/25