ヒューマノイド2
三ツ谷は早々に買い物袋を片付けると、男に詳細な行き先を尋ねる。男がそらんじた住所を言えば、三ツ谷はそれをスマートフォンに打ち込んだ。地図に出た場所は三ツ谷の知る公園のすぐ近くであった。
三ツ谷はこっちからが近いと男を案内しながら歩き出す。男はありがとうと笑顔を見せながらそれについていった。
ショートーとはシブヤ区内にある特別地区の名称で、ニホンでも有数のお金持ちが住んでいる場所である。大きな住宅一つ一つに高い壁が築かれ、至る所に監視カメラがついている。お金があってもしっかりした家柄でなければまず住むことは出来ず、それどころか一般人には辺りを歩くことさえ出来ぬような独特の空気をまとった場所であった。
「なあ、お前ってこの辺に住んで長いの?」
長身の男が三ツ谷に尋ねる。三ツ谷は地元がここなんだと答えた。
「フーン、家族と住んでんの?」
「そうだよ」
「いつもあんな買い物すんの?」
「あんなに沢山買うってことはねえけど……買い物はしてるな」
「お前いくつなの?」
「中三」
「へぇー、オレの一個上なんだ」
ミツヤの住まいはショートーと同じシブヤ区内にあるといっても全く毛色が違っている。男は三ツ谷とは明らかに住む世界の違うヒトだった。そんな男に不躾に尋ねられると、温厚な三ツ谷でもイヤミに感じたものだが、長身の男からは悪意が感じられなかったので、三ツ谷は男の問いに全て答えてやった。それは三ツ谷がアンドロイドと初対面して、少し浮ついていたことも影響しているかもしれない。
三ツ谷はアンドロイドと思われる男の若さに驚いていた。アンドロイドの多くは使用人を目的としての購入が多く、人間でいえば義務教育も終えないほど若いアンドロイドにそれが務まるとは思えなかった。きっと何か別の目的があるのだろうが、テレビで見るのは大人のアンドロイドばかりだったので、三ツ谷にはこの男に与えられた役割が想像もできない。
また、男の仕草があまりにも自然なので、本当にアンドロイドなのか? という疑問も湧いていた。男がつけているのはアンドロイドがつけるピアスと似ているだけのような気もした。それほど普通の人間みたいに自然なのだ。
そもそも、一般に流通するアンドロイドは高性能なので、道に迷うということがおかしな話であった。三ツ谷はこの男をアンドロイドと思い込んでいるだけのような気もした。しかし、『あなたはアンドロイドですか?』と尋ねること自体が失礼に当たる気がして、三ツ谷は男に尋ねることができなかった。もし人間であっても、本当にアンドロイドであっても、相手はきっといい思いはしないだろう。
三ツ谷は悶々としながら男の質問に受け答えしているうちに、例の公園の前に着く。男はここまで来れば大丈夫だといい、三ツ谷へ別れを告げた。
男は謝辞を述べ、大きく手を振って去っていく。三ツ谷がその背中を見送っていると、男はショートーでもとびきり大きな建物の中に入っていった。
2022/02/25