時間の問題 1
一
自分より身長の高い福富の金髪を見下ろす。金髪は自分の股の間に跪いていた。椅子に座った自分の足元に、大きな体を小さくおさめている。
強豪校の部活に休日はほとんどない。その僅かしかない休日のたび、福富は金城のもとへ訪れていた。あのインターハイの二日目から、福富は金城に何かせずにはいられなかった。金城の手となり足となり、命じられたことすべてを叶えたかった。
しかし金城はそれらすべてを断り続けた。金城にとってインターハイの出来事は過去であった。福富がしたことは許されることではない。しかしあの時落車しなければ勝てていたと金城は一度も考えたことはなかった。あの時のレースに勝てなかったことは、自分の力不足によるものだとどこかで思っていた。それ故に、金城は福富に対して恨みを持つなどということはなかったし、贖罪として何かして欲しいという願望もなかった。
しかし金城が拒み続けてもなお、福富は執拗に命じられることを強請った。そんな押し問答が続いて、いつしか福富の強い思いに金城は圧されてしまったのだった。
福富の薄い唇からのぞく赤色の舌は、迷うことなく金城の陰茎に伸びた。上下に舐めた後、そのまま開いた咥内で包み込む。歯を立てないように気を付けながら、金城に少しでも気持ちよくなってもらおうと積極的に愛撫する。強く望んだことではないが、局部に受ける刺激は強く、金城は湿った息を吐いた。
性的虐待を受けるという屈辱に福富は救われていた。この屈辱に耐えることであの時の総北の無念を一身に受けている気がした。福富は金城の指示に文句の一つもこぼさずにすべて従った。
金城もまた、そうしてあげることが優しさなのだと分かっていた。拒み続けていた日より、今の関係になってからの方が、福富は少し晴れやかな表情をするようになった。歪んだ形となってしまっても、福富がそれで救われるのなら少しでも力になりたいと金城は思った。
福富は金城の陰茎を咥内で包んで何度か強く吸った後、再び全体を丁寧に舐めあげた。根本から天に向かって舌を這わせ、金城の陰茎が自身の顔面に張り付いても気にも留めずに福富は愛撫を続けた。福富の筋の通った高い鼻に沿いながら、太く凛々しい眉の間に自分の勃起した陰茎があたっている様を見ると、金城はいつも表しようのない感情を抱いた。背筋がゾクゾクし、胸が激しく鼓動する。一際大きく自身が脈打ち、血液が集まっていく感覚。
金城はそれを興奮だと認めるのを拒否していた。福富の為に行っているだけであり、この行為で自分が得ているものはなにもないと思い続けた。
金城は決してこの行為を好んでいるわけではない。同性が好きなわけでもないし、道徳的にもよくないことだと認識している。
しかし回数を重ねていくうちに、この行為に慣れ始めていることを自覚していた。最初は反応の悪かった男性器も、いまや昔の話になりつつある。
回数を重ねるごとに湧き上がる感情は強くなった。福富に求める行為も増えていく。金城は自分の変化に気付きながら行為を続けた。日々律して生きている自分ではないみたいに思えたが、暴走していく自分を止める術がわからなかった。福富も拒むことはなく全て受け入れ続け、それが行為を助長させた。
挿入したい、という本能が脳内にちらついてるのを見えないふりをする。女性器に挿入し、そのまま中で果てたい。性行為ができるなら誰でもいいとさえ思う。快感の底にある願望。
それを理性で押さえつけながら、なるべく感情を表に出さないようにつとめた。しかし与えられ続ける快感に、自分の強い意志を揺さぶられる。
それらの葛藤の末、金城はいつも早く終わらせたいという結論に行きついていた。もう少しだけ強く吸ってくれ、と注文すると、福富は言われた通りより強く金城の陰茎を吸った。陰茎を銜え、口を強く窄めると、福富のシャープな輪郭が醜くゆがむ。頬がへこみ、ひょっとこのような滑稽な姿になった福富を見ると金城は申し訳ない気持ちになった。しかし同時に、そんな滑稽な姿を恥ずかしがることなく晒す福富にまたあの感情が沸き立っていた。濁りのない福富の瞳と反する姿に気持ちが昂る。
金城は動くぞと声をかけると福富の頭を鷲掴んだ。福富の頭を固定し、思い切り腰を突き上げる。福富は苦しそうに声を漏らしたが金城はかまわず続けた。すぐに終わらせる為だと自分に言い訳し、激しく腰を動かし続ける。福富の嗚咽と体液が掻き混ざる音が部屋に響く。
間もなく金城は福富の咥内で射精した。口から陰茎が抜かれた後、福富は激しく咳こんだ。喉元まで陰茎を突き立てられ、福富は呼吸もままならなかった。その上、精液が喉の奥に張りつき、苦しさが増していた。
射精の余韻でぽうっとする頭で、金城はすまないと謝罪した。口の周りを唾液と精液で汚し、少し潤んだ瞳で大丈夫だと福富は力強く返した。
もう少しするか。福富は真面目な顔で金城に尋ねた。
金城の浮ついた頭が一瞬覚醒する。同時に先ほど述べた謝罪の言葉がいかに口先だけだったかを自覚させられる。
十分だ。金城は背中に汗を掻いて、そう答えた。