いつかの君はワインを嗜む2
二
パラディ島作戦の報告が町中に広がると、人々から笑顔が失われていった。幼い頃から鍛えられた精鋭たちを失い、唯一残った戦士でさえボロボロで、始祖を奪還することは遠い夢に終わってしまった。それほどあの島の悪魔たちは恐ろしいのだと、住人達は忘れていた歴史を思い出して恐怖した。
町中が暗い中、追い打ちをかけるようにマーレ国が戦火に包まれた。中東連合との交戦である。今までの戦いとは比べ物にならないほどの巨大な相手に、ポルコら巨人の戦士たちは真っ先に召集された。それは帰還したばかりのライナーも同様である。
ポルコがライナーと共に戦争を経験するのはこれが初めてだった。ライナーは鎧の巨人を巧みに操り、様々な敵を相手にマーレを勝利に導いた。巨人の圧倒的な力で敵を粉砕し、ときには盾となってマーレを守った。ライナーは肉弾戦も強く、人間の姿で敵国と戦っても、銃や爆弾を完璧に使いこなした。その姿はドベだった頃のライナーの姿なんて想像できないほど立派な戦士であった。
しかし、ライナーはひとたび戦場から離れると、気迫に満ちた姿からは考えれないほど生気が失われていた。傷付いた老兵士のように、動くことすらままならないような弱々しい姿を見せた。
ポルコはその腐抜けた姿が不思議でならなかった。幼い頃、自分に掴みかかってくるほど夢に見た戦士になり、こうして戦果を挙げているのに、ライナーはその姿を誇らしげに語ることはなかった。ポルコが悔しくなってしまうほど、戦場のライナーは頼もしいというのに、こうして無気力な様子を見ていると、それがただの自己犠牲にしか見えなくなった。
ある日、ポルコは茶化す様にライナーを褒め称えた。民衆が戦士の話を誇らしげに語る時は、いつもライナーの話だ。同じエルディア人として喜ばしいことだと、そういって微笑む人々が戦場から帰ってきた戦士たちを門の前で迎えてくれるのだ。
よかったな。そういってポルコは笑った。しかしライナーは表情もかえず、そうか、と言葉を返すだけだった。犬のような忠誠心で国を信じていたドベの頃とは違い、ポルコにはその表情がとても後ろめたそうに見えた。
2019/09/30