声を出すな手を上げろ


謎時空のセフレ宮一。

*   *   *

一歩との関係は宮田には説明し難い。宮田にとってはライバルというほど隣に並べている気もしないし、友人という間柄でもない。一方的に対戦を焦がれる相手……と言いたいところだが、一歩だって対戦を望んでいるので一方的というわけでもない。
二人は宮田の一人暮らしの部屋にいた。飼い猫は二人のいる部屋から締め出し、先程からドアに爪を立てる音がする。大好きな飼い主の元に行きたくて必死なようだが、あいにく今の宮田にサラテを相手にする余裕はない。
一歩は宮田の一人用のベッドに仰向けで寝ていた。口を両手で隠し、声を出さないようにしていた。
宮田は一歩を組み敷いていた。体の柔らかな一歩の足を大きく開き、奥に潜む蕾には宮田の性器が突き立てられている。
部屋には宮田の呼吸と、まぐわう二人の繋がる音がする。素早いピストン運動に合わせ、グチュグチュという音がひっきりなしに続いていた。
宮田は数ヶ月前、一歩に好きだと告白された。試合を焦がれるあまり、一歩はこれを恋と勘違いしたのだと宮田は思った。
目の前でオドオドしながら返事を待つ一歩を見て宮田はムカついていた。到底付き合う気はなかったが、フったところで一歩は落ち込まないだろう。そうだよねと諦めて、この告白を忘れてくれと笑いながらいうに違いない。選択肢はこちらにあるはずなのに、それではまるで一歩の思う通りに進んでいるようで宮田は癇に障るのだ。
『抱いてやる』
宮田のそれは、一歩の告白を受け入れているようでも、断っているようでもあった。
一歩は意味がわからなかった。それを嬉しいと喜んでいいものか、自分が宮田を好きなことと同じように、宮田も自分が好きなんだと、宮田にはっきりと言って欲しくて、一歩はどういうことなのかと尋ねてくる。
宮田は舌打ちをした。いいこちゃんは質問にはいつでも答えが返ってくると思っているから困るのだ。
「自分で考えろ」
宮田はそう言って、二人は連絡先を交換した。

疑問は解消されないままだったが、一歩は宮田に抱かれるために自宅へ足繫く通うようになった。
家を出て、宮田の自宅に着くまで、一歩はいつも迷っている。自分に対する宮田の気持ちをはっきりさせぬまま、セックスの回数ばかり重ねていいものではない。
だがいくら迷っても、一歩から宮田を拒むことはできないほど、一歩は宮田が好きでしょうがなかった。
宮田に抱かれている間、一歩はなるべく声を出さないようにしていた。一度、宮田からうるさいと言われて以降、一歩はその言いつけを守っているのだ。
宮田の自宅では無駄な話をしないし、抱かれている間はなるべく大人しくする。部屋に置いてあるものは勝手に触ってはいけないし、部屋の中では携帯電話を使ってはいけない。宮田の家に行くたびにルールは増えていき、一歩はそれらすべてを守った。
様々な制限でつまらなくなるはずのセックスに、一歩は退屈しなかった。自分の体と宮田の体が繋がり、熱が一つになれば、たくさんの寂しさは帳消しになった。感じすぎるくらい気持ち良くて、宮田の体の下でいつも一歩は激しく勃起している。宮田の体から零れる汗の一粒に興奮して、いまこうして愛されていれば宮田に対する不安が何もかもどうでもよくなる。
二人は今日もまた無言で射精する。曖昧なばかりの二人の間に、セックスだけははっきりとした終わりがある。一歩はそれがとてもラクだと思うし、急に夢から覚めたようで虚しくもあった。

2022/01/30