こんなこともあろうかと
付き合ってない稀半。稀←半。
ノリ?でセックスすることになった二人。
ワンチャンどっかでヤれたりしないかなってこっそり思っていたハンマ、いざヤれますってなった時、そんなハンマの考えなんて知らなかったのでなんでやねん!って思いながらセッセするキサキの話。
後半は半間目線。
* * *
こんなこともあるかと思って。そういって半間はどこからともなく塩化ビニルのボトルを取り出した。稀咲でも知っている有名な潤滑剤メーカーのロゴが入っていた。
「買っといた」
半間は手に持ったボトルを左右に軽く揺らす。液体はたっぷり入っていて、本当にこのために買ったのか、未使用のように見えた。
こんなこともあるわけないだろ、と稀咲は思ったが、半間の予想通りに起きたのだから野暮なツッコミはしなかった。
半間は恥ずかしげもなく服を脱ぎ捨て全裸になった。セックスをする、といってもいきなりすべてを曝け出すことが憚られた稀咲は、最後の砦とばかりにパンツだけは脱がなかった。
服を着ていてもわかる半間の細身の体は、脱ぐとさらに細く、手足の長さがよくわかる。肌艶もよく、美しい肉体を持つ反面、これで多くの人間を傷つけてきたのだから皮肉なものである。
半間は自分の体を強調するように胸を張り、稀咲に見せつける。何かいいたいのだろうと稀咲が目線で問えば、「吸う?」と簡素に尋ねてきた。
「は?」
「乳首」
半間はそう言って自分の体を指す。なんでオレが、と稀咲が怒りながら答えると、なんだぁ、と半間はつまらなそうにした。その態度では、まるで半間はして欲しかったみたいじゃねえかと稀咲は思ったが、『そうだよ』と素直に答えられても反応に困るので声には出さなかった。
それじゃあ、と半間は稀咲に近付く。さきほどから展開の早さについていけない稀咲は半間の勢いに圧倒されて尻もちをついた。
半間は背中を丸めて稀咲の股間に顔を近付ける。その距離の近さに稀咲がぎょっとしていると、隙をついた半間が稀咲の下着を剥いていた。躊躇なくペニスを掴まれ、間髪入れずに咥えられる。
「おいっ!」
稀咲は驚いてすぐ、背中がゾクゾクするような快感に襲われた。目一杯半間の口で吸引され、ペニスに強烈な圧迫感を受けて全身から力が抜ける。
「あ、あっ」
しゃぶっていいなんて許可は出してねえ、と稀咲は怒鳴りつけてやりたかったが、快感の渦に巻き込まれて言葉にできない。下品な音を立てる半間の咥内は稀咲に容赦がなかった。同じ男同士、性器の性感帯を知り尽くしている半間は、稀咲のペニスの裏筋を責めながら、陰嚢をやわやわと揉みしだく。性器を擦る程度の快感しか知らない稀咲にとって、それは比べものにならないほどの快感で、稀咲は半ばパニックになった。
遂には諦め、稀咲は半間に身を委ねる。ちゅばちゅばと吸いついたり、溢れるカウパー液を舌で舐めとったりしながら、半間は品のない食事をするように稀咲のペニスを味わった。
一瞬、半間と稀咲の視線がかち合う。稀咲の表情を見て半間がニマリと嬉しそうに笑った気がしたが、ぼうっとしていた稀咲にはそんなことどうでもよかった。
半間は稀咲の目をじっと見ながら、根元までペニスを咥えこむ。稀咲を気持ち良くさせようと、思い切り頬を窄めて吸い上げた。半間は鼻の下を伸ばし、顔を醜くさせながらも笑顔だった。稀咲のペニスをしゃぶることが喜びだというようで、その淫猥な表情に稀咲は腹が立つほど興奮していた。
半間がようやく稀咲のペニスを放す。しゃぶりすぎて皮膚がふやけたんじゃないかと心配になるほどだったが、そんなことは杞憂だというように、稀咲のペニスは血管が浮くほど固く、天を向いていた。
稀咲は半間の肩を押し、ベッドに寝かせる。何も言わずとも半間は足を開き、稀咲を受け入れる体勢を取った。
稀咲は半間のアナルに己のペニスの先端をあてがう。先端をぐっと押しただけで尻の穴が開き、稀咲のペニスを受け入れる。
肛門は排出する器官で、外から押し込まれる力には強いはずだった。こんなにすんなりといくのもなのだろうか?
稀咲が不思議に思っていると、それを察したかのように半間が小さく答える。『こんなこともあるかと思って』
稀咲とセックスする可能性のために、半間は準備をしたというのだろうか。あるわけねえだろ、とまた稀咲は心の中で悪態をついた。
稀咲は半間の用意していたローションを大量にペニスに塗りつけると、ぐっと腰を押しつけて挿入した。思わず息が漏れるほど気持ちが良かった。
半間はアイマスクを付けていた。セックスをするとなった時、二人は体位について押し問答をした。顔が見たいという半間と、見るなという稀咲。結果、正常位をしつつ、行為中は目を隠すという妥協点に落ち着いた。
前戯の時点で稀咲はその約束がどうでもよくなっていたが、半間は律義にも守り、挿入のタイミングで自らつけたようだった。
半間は自分勝手な男だが、稀咲に対しては従順なところがある。裏切りの多い世界だが、半間のそういう点が、稀咲にとって信用たる人間という評価に繋がっていた。
男とのセックスなんて考えられなかった稀咲だが、実際のところ、それはすごくいいものだった。半間の下準備のお陰なのか、ナカはとても柔らかく、ほどよい締めつけで、稀咲の腰は止まらない。
稀咲が欲望のままに腰を振っていると、気持ちいいかと半間が尋ねる。その通りだと答えるのは癪だし、没頭しているところに水を差された気持ちになったので稀咲は無視を決め込むが、半間は何度も稀咲に話かけた。
その内、『もっと上』と願うように半間がいう。稀咲は当てる位置の話だと思って、少し意識して腰を突き上げた。
「あっ、そこ……、きさき、ッ」
希望通りに腰を突くと、半間の体がのけぞった。おしゃべりだった半間の口から言葉が少なくなって、稀咲はようやく静かになったと満足する。
稀咲は両手をベッドにつき、前屈みになる。己の限界が近付いていた。
稀咲は目を瞑り、本能のまま腰を振った。自分の体の下で半間の喘ぎ声が小さく聞こえている。
稀咲は大きく腰を引いた後、最後の力を振り絞って力強く腰を突き上げた。ばちんと肌と肌がぶつかる大きな音がして、稀咲のペニスが半間の体の中で固いしこりにぶつかった。
稀咲は顔を上げ、うっとりするように息を吐く。奥へ吐き出すように射精していると、半間の体が呼応するように震えていた。稀咲のペニスを包んだコンドームの中には欲望が溢れかえる。
初めてのセックスに夢中になっていた稀咲は、セーブ出来ずにスタミナを切らせる。ぜえぜえと大きく肩を揺らし、すっかり疲れ切っていた。稀咲は青い己を恥ずかしく思いながら、ゆっくり腰を引いていく。
「抜くのはえぇって」
半間はそう言って慌ててアイマスクをずらす。稀咲を見つめながら、開いていた足を稀咲の体に絡めた。
しかし、半間のその足に、普段のような力が入っていないことを稀咲は気付く。平気そうな顔をしているが、いくら半間でも体までは嘘を吐けないようだ。
稀咲の力でもはねのけられるほど弱々しく絡められた足に、稀咲は小さく息を吐く。少しくらいは言うことをきいてやろうと、ズレた眼鏡を持ち上げた。
稀咲は引いた腰を押し戻し、再びペニスの根元まで半間の体に埋めいく。ぐいと腰を押しつけた瞬間、半間は小さく声を上げ、体がはねた。乱れた息を整えるように、半間は何度か深呼吸をする。
稀咲が要望通り、挿入したまま動かなくなると、半間はベッドに身を預け、視線を宙に投げた。セックス前と比べると、色白の肌がうっすら上気している。平らな両胸に乗る小さな乳首は僅かに尖り、主張を見せていた。繋がった場所は快感の余韻に浸るように蠢き、稀咲のペニスをぎゅう、ぎゅうと締めつける。
射精が終わった稀咲は、男の生理現象として一気に熱が冷め、半間のその姿を冷静に眺めた。半間はあまり派手に喘いだりはしなかったが、確かに感じていたのだと稀咲は思った。自身のペニスを咥えたまま、搾り取るように収縮する直腸の動きがひどく興味深かった。
何事も本能に従って動く半間だったが、こと稀咲に関しては違っていた。遠回りなやり方も、面倒臭い事前準備も、稀咲に絡むことならダリィなんて口癖も出ずに行うことが出来た。
とはいえ、稀咲と本当にセックスをすることになるなんて、半間自身も何かの間違いではないかと思った。半間のボロアパートでいつもの睨みをきかせながら、人でも殺すのかというような面持ちでヤるぞと稀咲は言った。やはり稀咲が言うように、何事も計画が大事なのだと、己の体からボディソープの香りをさせながら半間は思った。
あれもこれも準備が整っていたため、本当にすんなりとセックスが始まろうとしていた。これで準備が足りなかったら、血迷っていたはずの稀咲が冷静さを取り戻してしまったことだろう。
半間は稀咲から考える時間を奪うため、さっさと服を脱ぎ捨てる。半間は下着を脱がない稀咲から一抹の理性を感じ取ったので、それをさっさと取り払うことにした。
稀咲のペニスは連れションした際、覗いたことがあったが、間近で見るのはもちろん初めてである。もう二度と見ることはできないかもしれないと思うと、目で覚えるより体で覚えたいと半間は思った。微塵の躊躇もなく頬張ると、少し汗の匂いと妙な味がした。男だらけの世界の中、一人だけ汚れることを知らない稀咲の体から初めて人間味を感じた半間は、自分でも信じられないほど興奮していた。稀咲の全てが欲しくなって、半間はカウパー液も汗も根こそぎ啜りとる。ペニスに食らいつく半間を引き剥がそうと稀咲に頭を掴まれていたが、半間がペニスをしゃぶっているうちにその握力は弱くなった。
稀咲が暴れるのをやめると、半間はちらと視線を上げる。稀咲の顔は真っ赤に染まり、じわりと汗を掻いていたが、目つきの悪さは変わらなかった。睨みつけながらも湿った息を吐く稀咲に半間は嬉しくなる。稀咲の表情が、半間のクチを悪くないと言っているようだった。
半間は満足するまでフェラチオをした後、稀咲に体を押し倒される。珍しく乱暴な稀咲に半間はまた興奮していた。
稀咲が楽なようにと半間が脚を開くと、稀咲に怪訝な顔で見られる。稀咲と会う時はいつでもヤれるようにしているのだと言えば、稀咲は苦い顔をした。
稀咲のペニスがゆっくりと体に入り込む。散々自分で慣らしてきた半間だったが、自分の指やアナルプラグ、ディルドを挿入するのとは大きく違っていた。稀咲は特別ペニスが大きいというわけではないのに、腹への圧迫感がとても強い。まだ挿入が終わらないのかと思うくらい奥まで届くし、体調不良を疑うほど半間の体が熱くなった。
稀咲の全てが体に収まっただけで半間はどっと疲れた。今まで散々してきた喧嘩では感じたことのない疲れだった。
稀咲は半間の体なんて労わりもせず、欲望のままに腰を振る。快感こそ薄かったが、半間には心が満たされている感覚があった。
稀咲はずっと黙っていたので、感想を聞きたくて半間は質問をする。気持ちいいと言って欲しいし、そうでなければ気持ちよくさせたかった。
しかし稀咲はいくら尋ねても無視をする。そういう時は素直に言いたくない時で、稀咲にとって不都合な時だ。
そもそも、稀咲は男同士のセックスに興味があったわけではないし、建設的なこと以外はしたくない性分である。つまり言葉にしたくはないが、半間とのセックスが気持ち良いということだ。
半間がその答えに辿り着く頃には、稀咲のペニスが半間の体に馴染んでいた。稀咲が腰を引くたび、ペニスが引き抜かれる快感が半間の体を駆け巡る。
己で拡張している内に、半間はアナルで気持ちよくなる場所を覚えた。稀咲にピストン運動をされているというだけでたまらない気持ちになっていた半間だったが、だんだんと欲が出てくる。折角ヤれたのだから、稀咲のペニスで前立腺を突いて欲しくなった。
腰を振る稀咲に、半間は自分のイイところを教える。言ってみてダメだったら、それはそれでいいや、という気持ちで頼んでみると、稀咲は素直に聞き入れてくれた。
グンッと一突きされただけで半間は全身が痺れる。思わず体がのけぞった。ドチュ、ドヂュ、と稀咲の亀頭が何度も一点にぶつけられる。快感が積み重なって半間の頭にモヤがかかった。
望まれた場所を突くと、半間があからさまに弱くなることを面白がったのか、それから稀咲は露骨にそこだけを責め立てた。半間はひいひい言いながら、稀咲だけの女になった。
一生終わって欲しくないような多幸感に包まれていた半間だったが、稀咲の律動が止まった瞬間に現実に戻される。飛んでいた意識が戻ってくると、ガバガバになっていたアナルが稀咲のペニスを搾り取るように締めつけた。それは半間の意志とは切り離されたような、半ば本能的な動きでもあった。
終わっちまったなぁ、とぼんやり思っている最中、稀咲のペニスに縋りついていた肉が空洞になっていく。半間は戸惑いながらアイマスクを外し、稀咲の体に脚を絡めた。面倒臭いオンナみたいに縋りついてしまったことに半間は自分でもガッカリしながら、それでももう少しくらいは繋がっていたいと思った。
「抜くのはえぇって」
セックス前と変わらぬ口調を努めたが、自分の足に力が入ってないことは半間自身も気付いていて、そんな自分を心底ダサいと思った。それでも言わずに後悔するよりはと、痙攣する足の震えをなんとか抑え込む。
稀咲はそんな半間に気付いているのか、いないのか、半間の願いを聞き入れる。再び体の中に稀咲のペニスが収まって、それだけで半間は二度目の絶頂を迎えた。
半間は稀咲と繋がりながら、まるでこれで一つの生き物だと思うほどに一体感を感じていた。初めとは思えないくらい相性がいいと嬉しくなる反面、そう思っているのは自分だけのような気もした。
2021/12/19