神様は見ている


みつはちでみつ→はち前提のみつたいです。八戒は出てきません。

八戒が好きだけど兄なんだから好きになっちゃいけない、と思って罪悪感に苛まれた三ツ谷が思い詰めて、大寿がそそのかしてセックスする話です。
みつたいに愛はないです。三ツ谷が好きなのは八戒だけです。大寿は三ツ谷のことを好きではないです。
大寿は三ツ谷が八戒と付き合うなんて認められないので失敗を願っています。
そのために三ツ谷にセックスの話を持ち掛けています。

できれば続きを書きたいですが、この話にハッピーエンドはありません。

*   *   *

罪とは一度犯すと雪だるま式に増えていくものである。それがはじめ、どれほど小さいものでも、犯してしまった罪がなくなることはない。
いつだかテレビで見た神父の言葉を三ツ谷は肌で感じていた。小さかったはずの罪悪感は歳を追うごとに積み重なり、近頃はその重さに耐えきれなくなっていた。
まだ小さな妹達を残し、三ツ谷が一人で夜の街に飛び出したのは二度目である。一度目の夜はすべてが嫌になって逃げだしたが、今こうして街をフラついているのは、逃げるというより、誰かに助けを求めていた。とはいえ、思い詰めれば行く当てもなく彷徨うクセはあの頃と変わりなく、成長しない己に三ツ谷は苦笑する。
此度、三ツ谷が逃げ出したのは家族からではない。家族同然の存在である友人からである。友人の名は八戒という。一つ年下の幼馴染である。三ツ谷は八戒を実の弟のように可愛がり、八戒もまた実の兄貴のように三ツ谷を慕っていた。
三ツ谷が八戒に対し、弟妹に抱く愛以上のものを覚えたのはどれほど前のことだろうか。もはや振り返ることさえ三ツ谷は気が重くなってしまう。
三ツ谷は八戒の前では努めて理想の兄でいた。優しく、時に厳しく、何をしても八戒より優れた見本となるように努力した。それが時に三ツ谷の重荷となっても、三ツ谷は八戒の前で見栄を張ることをやめなかった。思えばそれは、八戒にとって素晴らしい兄貴でいるためだけではなかったのだろう。八戒に格好良いと思われたいという、男としての欲が根底にあったに違いない。
しかしどれほど冷静に分析をしようとも、この感情が正当化できるものではないと三ツ谷は思う。
三ツ谷はこれからも八戒が憧れるような存在でありたかった。決して弟に恋心を抱き、気持ちが悪いと失望される存在であってはいけないのだ。
三ツ谷は己を律し続けたが、人並み以上の精神力をもってしても、まだ高校を卒業したばかりの若者である。何かに頼らないで生きてはいけない。
旅人となった三ツ谷が辿り着いたのは渋谷にある教会だった。そこは数年前、柴兄弟の壮大な兄弟喧嘩が行われた場所であり、三ツ谷にとっても思い出深い場所だった。
三ツ谷は吸い込まれるように教会の門をたたく。無神論者の三ツ谷でも神の導きを感じていた。
夜の教会はこれで二回目だ。初めて訪れたあの時のように人はいなかった。三ツ谷は適当な椅子に座り、輝くステンドグラスを眺める。キリスト教徒でもない三ツ谷は教会にきても何をすればいいかわからないので、ただじっと座っているだけだった。
「あ? 三ツ谷じゃねぇか」
ふいに左側から聞き覚えのある声がする。通路を挟んだ反対側の椅子に、八戒の兄である大寿が座っていた。
「あれ、なんでここに」
「オマエが後から来たんだろ」
そっか、と三ツ谷は苦笑する。椅子に座っていたとはいえ、大柄である大寿の存在に気付かないほど、三ツ谷は魂が抜けていたようだった。
「何の用だよ」
「エ?」
じっと大寿に見つめられてから三ツ谷はハッと気付く。熱心なクリスチャンである大寿が教会にいるのは当然のことで、場違いなのは三ツ谷のほうだ。
キリスト教に目覚めたなどといえば嘘を吐いているのは明白である。しかし八戒について悩んでいるなどといえば、狂気じみた家族愛をもつ大寿に何をされるか分からない。
“たまたま通った” “懐かしくなった” 三ツ谷は誤魔化すように笑いながら言った。
大寿は深く追求してこなかった。大寿は自分に興味がないのだと思い、三ツ谷はホッとした。
「……八戒のヤツ、最近はどうしてんだ? まだ弱虫のままか?」
三ツ谷はビクッと肩を揺らした。大寿から話を振られるとは思ってもいなかった。それも、よりにもよって八戒の話題だ。
「あ、ああ。元気してるよ。八戒は変わってねえよ」
三ツ谷は取り乱したことを悟られないように軽い口調で返した。
思えば大寿が八戒の話題を振るのは当然のことだ。二人の共通の話題といえば、八戒のことしかないのだから。
三ツ谷の返事を聞いて大寿はニヤリと笑った。悪魔じみた妖しい笑みなのに、まるで神のように三ツ谷のすべてを見透かしているようだった。
「三ツ谷。オマエ、八戒と何かあったろ」
「は?」
「隠すなよ。今の反応を見りゃわかる」
三ツ谷は口ごもる。誤魔化し通せたつもりだった。
三ツ谷が焦っていると、大寿は教会に響くほど大声で笑った。爪が甘いな、オマエも。そう言って片目だけを大きく開く特徴的な表情を三ツ谷に向けていた。
「カマかけたんだよ。オレがオマエのことなんか分かるわけねぇだろ」
大口を開けて笑う大寿に三ツ谷は絶句する。大寿が暴力だけの男ではないことは分かっていたはずだったのに。
三ツ谷が暗い表情をして俯く中、大寿は明るい表情を浮かべて心底楽しそうにしていた。根掘り葉掘りと近況を聞かれると、大寿は三ツ谷の姿をすべて見ていたかのように心情をぴたりと当ててみせた。
大寿にこの秘密を隠し切れないと悟った三ツ谷は、遂に八戒へ抱くやましい感情を吐露する。
三ツ谷は八戒が好きだと言った。兄弟のように愛していたのに、いつしかその思いが兄弟を越えていたのだと。
「大寿くんの前で、こんなこと、言いにくいんだけど……」
三ツ谷はそう言って声を小さくした。
八戒とキスがしたいし、それ以上のこともしたいって思う。……そんで、そう思うことがどんどん増えているんだ。
三ツ谷はそう言って、いたたまれないようにより背中を丸めた。
しかし八戒は、三ツ谷を兄だと慕い、信じている。三ツ谷は八戒に優しくすればするほど、近づけば近づくほど嘘が塗り固められるような感覚にあり、息ができなくなるような苦しさに苛まれた。
一度秘密を吐き出してしまうと、三ツ谷の口から懺悔が止まらなかった。好きだけど、好きになってはいけないと思う。だがどうしてもその気持ちが止められない。
三ツ谷は一生誰にも明かすことはないと決めていた気持ちを、よりにもよって八戒の親族である大寿にすべて話してしまう。それは三ツ谷の言葉に合の手を入れる大寿がまた絶妙であった。三ツ谷の弱いところを傷つけない様に包みながら、心の芯に眠る扉がいつの間にか開けられている。
三ツ谷は自分の心の奥に隠していたどろどろとした感情を出し切ると、自分がとても弱くなったような気がした。三ツ谷は自身を、八戒の前に立つこともできないような、頼りのない人間になってしまったと思った。
「三ツ谷の言いたいことはわかった」
大寿はそう言って納得するように頷く。まるで告解室で懺悔を聞く神父のようであった。
大寿は少し間を取ったあと、三ツ谷の言葉を確かめるようにいう。本当に、オマエは八戒のことが好きなのか?
三ツ谷は驚く。今まで何を聞いていたのか? 三ツ谷がどれほど悩んでいたのか、今話したばかりではないか。
「分からねえか? 三ツ谷、オマエは勘違いしてるんじゃねえのかって言ってんだ」
三ツ谷は大寿のいう意味が分からなかった。
大寿はいう。三ツ谷ほどの年齢であると、同性に恋にも似た感情を抱くことがあると。そしてそれが二次性徴と絡み合い、性的欲求と混ざれば、その勘違いがますますひどくなっていくのだと。
彼女はいんのか? 大寿は聞く。
三ツ谷は首を横に振った。気が付けば八戒のことを好きになっていた三ツ谷に、彼女を作るという選択肢はなかった。
「ヤりてえって気持ちが暴走してねえか? 八戒が好きとかじゃなくてよ。近くにいるすぐにヤれそうな女に手を出すのと同じじゃねえのか?」
「なっ、大寿くん! そんなわけねえだろ!」
確かめたのか?
大寿の表情は真剣だった。
大寿は三ツ谷の気持ちを信じていないわけではない。ただそれほど悩むのであれば、一度確かめてみるのもいい、という提案だった。
「どうせ八戒に打ち明けるつもりねえんだろ? だったらいいじゃねえか」
適当な女を捕まえてこい、と大寿がいうのは簡単だが、三ツ谷は中途半端な気持ちで人を口説けるような軽薄な男ではない。大寿のいうことも一理あるが、そう簡単に実行できる話ではなかった。
「じゃあ、オレとヤるか?」
「え?」
「三ツ谷の話を知ってるのはオレだけなんだろ」
手っ取り早いじゃねえか、と大寿は豪快に言った。
男同士ならヤっても後腐れねえ。名案が浮かんだようにいう大寿に、三ツ谷の頭はついていかない。
混乱する三ツ谷が話を整理している間、大寿は慣れた様子でどこかに電話を掛ける。手短に通話を終わらせると、教会の外へ出てタクシーを拾った。
「行くぞ」
大寿はそういって、三ツ谷の腕を引っ張っていった。

三ツ谷はタクシーに揺られながらなげやりな気持ちになっていた。教会での自分がいかに追い詰められていたのか、今更情けなくなってくる。三ツ谷にとって最大の秘密を、なぜ大寿に話してしまったのか。
柴大寿という男は、三ツ谷が好きで、弟のように可愛がっている八戒の天敵ともいえる相手である。伝説に残る喧嘩の後は距離を取り、ある程度平穏な関係性になっているが、八戒はいまだに大寿がしてきたことを許せていない。
しかしここまでくると、三ツ谷はどうしようもない気もしていた。藁をも縋る思いで街を出て、掴んだ手が大寿であっても、罪の重さに耐えきれず、八戒を相手に懺悔してしまった可能性を考えれば、三ツ谷には何倍もマシに思えた。
タクシーは少し走り、恵比寿駅近くにあるホテルの入り口で止まった。そこは気後れしてしまうほど大きく、綺麗で、見るからに高級そうなホテルであった。大寿はタクシーを降りると、堂々とした様子でフロントへ向かう。大寿が受付を済ませ、カードキーを預かる様子を、三ツ谷は少し離れたところで眺めていた。
大寿は顎でエレベーターの方向を指す。三ツ谷も同じエレベーターに乗り込み、大寿は十二階のボタンを押していた。それは客室の最上階だった。
静かな通路を抜けて角にある部屋で大寿が止まる。カードキーでドアを開けると、広々とした玄関が二人を迎え入れた。
部屋は大きなガラス張りで、最上階から見る東京の夜景はとても美しいものだった。来客用の応接室までついた客室は、このホテルの最高クラスの部屋であろうことは、こういう世界に無縁の三ツ谷でも容易に想像がついた。
大寿は着ていたコートをハンガーラックに掛けながら、先に行けよ、と三ツ谷を促す。大寿の視線の先はバスルームで、冗談みたいな今の状況がきちんとした現実であることを嫌でも実感させられる。
「いや、オレ後からでいいわ。大寿くん先どうぞ」
三ツ谷は急に怖くなり、腰が引けた態度を取る。大寿は三ツ谷の態度に気付いているのか、いないのか、特に目立った反応をすることなく、わかったといって先にバスルームへと入っていった。
大寿がバスルームにいる間、手持ち無沙汰の三ツ谷は窓からキラキラと光る都会のネオンを眺めていた。まだ高校生の自分がこうした高級ホテルを訪れることは場違いであるし、まして一緒に過ごす相手が大寿であるという状況が不思議でならなかった。迷える子羊のごとく都会を彷徨い、フラッと入った教会で出会った神父に助けられた、と思えば何も不思議なことはないが、それはとてもポジティブに誇張した話である。本当にこれから大寿とエッチをするなんて三ツ谷は信じられず、いっそ逃げてしまったほうがいいように思えたが、こうして自分を助けようと手を差し伸べた大寿を思うと、自分勝手に逃亡するのは恩を仇で返す様なことだとも思った。
三ツ谷はどうすれば自分にとってベストな行動なのかとぐるぐる考えるが、うまくまとまらず、そうしている内に大寿が風呂から上がってきてしまった。
大寿は長い髪の毛をタオルで拭きながら、バスローブに包まれて出てきた。派手な容姿と立派な体格に白いバスローブがとてもよく映えて、しかし同時にその姿は三ツ谷にとってあまりにも生々しく見えた。
三ツ谷が風呂へ行かずにもだもだとしていると、大寿は黙って三ツ谷を見つめていた。
三ツ谷は大寿に先に風呂へ行かせたことを後悔していた。セックスの相手に風呂まで行かせた挙句、やっぱりやめようなどとはとてもじゃないが言い出せない。かくして、三ツ谷は処刑台に進むような気持ちでバスルームへと入っていった。
三ツ谷は風呂場で冷たいシャワーを浴びていた。物理的に頭を冷やせば、今の理解しがたい状況にも何か打開策が見えてくるかもしれないと思った。しかし突然頭がよくなるわけでもなく、三ツ谷はただ体を冷やしたばかりで、結局覚悟を決めて大寿の待つベッドへ向かうしかないのだと思った。
三ツ谷が風呂から上がると、大寿はベッドに腰かけて窓の外を見ていた。美しい夜景に目を奪われるのは人として当然の感情なのかもしれない。三ツ谷は少しだけ大寿に対して親近感が芽生えると、自然と大寿の隣に腰を下ろす。少し身をよじればぶつかってしまうほど近い距離で、三ツ谷がこれほど近くまで大寿の側に寄ったのはこれが初めてだった。
体格こそ違えど、その見上げる動作に三ツ谷は八戒を思い出す。そっと近付いてくる大寿の顔がゆっくり傾くと、そのまま二人の唇は重なった。
大寿は三ツ谷をベッドに押し倒す。部屋は灯りを消して、カーテンが開いたままの窓から見えるネオンだけが部屋を照らしている。
仰向けになった三ツ谷に大寿が馬乗りになると、穿いていたボクサーパンツをはぎ取られ、三ツ谷は裸になった。大寿の大きな体が視界から消えると、股間のあたりにぬるりとした感触が当たる。大寿の舌だった。
三ツ谷は初めてのフェラチオにすぐに思考が奪われた。大寿の大きな口にすっぽりとペニスが埋まり、じゅぷ、じゅぷと淫らな音が響く。う、う、と自然と声が漏れてしまい、三ツ谷はとても恥ずかしい気持ちになった。
セックスの最中の大寿は静かだった。三ツ谷を気持ち良くすることに徹して、決して自我を出さなかった。三ツ谷は大寿のお膳立てのまま気持ち良くなった。エッチをする気なんて全くなかったのに、大寿に愛撫されたペニスはすっかり勃起していた。
三ツ谷のペニスが大きくなると、大寿は口から放し、両足を開く。いつの間にか用意されていた潤滑剤のボトルを片手に、とろりと液体を手のひらに落とした。大きな手はそのまま自身の股座に伸びて、ごそごそと動いている。影になって見えなかったが、大寿が自ら繋がる場所を解しているのだと思った。
三ツ谷はこれが初めてのセックスとなり、まして同性でやる場合の知識は乏しい。尻の穴を使うという漠然とした知識は持っていたものの、こうして目の前にすると体が固まってしまった。
固まる三ツ谷を置いて大寿が粛々と挿入の準備を進める。ほとんど声を出していなかった大寿も、後ろを弄っている時だけはふう、ふうと深い呼吸を繰り返していた。
挿入の準備が終わると、大寿はごろんと背中をベッドに預ける。寝転がる瞬間、三ツ谷の腕を引っ張り、二人は共にベッドに横になった。バランスを崩した三ツ谷は一度大寿の体に覆いかぶさり、慌てて体を起こす。自分の体の下には、股を開く大寿がいた。
「こいよ」
自信たっぷりに大寿はいう。薄暗い部屋に目が慣れて、その表情がはっきり見える。余裕そうに笑いながらも、ほんの少し汗を掻いていて、その色っぽさに三ツ谷は思わず息を飲む。
三ツ谷は自分の勃起したペニスを掴むと、大寿がよく解したアナルに突き立てる。もう後戻りはできないと三ツ谷は思った。ゴクリ、と唾を飲み込んで、覚悟を決めたように腰を押しつけた。
「うぁ、……!」
三ツ谷は初めての感覚に声が出る。大寿のナカは溶けるように熱く、窮屈な直腸の締めつけは気持ちがいい。三ツ谷はゆっくりと直腸に押し入り、そのすべてが飲み込まれたたけで力を吸い取られるような気持ちになった。三ツ谷が深い呼吸をし、体をピクピクさせると、大寿の内壁がきゅうきゅうと動く。その僅かな締め付けで、再び三ツ谷の体に痺れるような快感が走った。
三ツ谷は自然と体を前傾させ、本能のままに腰を振り始める。ずる、と引き抜き、グンッと勢いよく腰をぶつける。気持ち良さのあまりに目を瞑り、三ツ谷は大寿の体のことなんて考えずに腰を振っていた。
ベッドの上の大寿は献身的だった。三ツ谷が萎えないようになるべく声を抑え、ただのセックスパートナーに徹していた。お陰で乗り気ではなかったはずの三ツ谷もいつしかセックスに没頭していた。
大寿の容姿は八戒と似ていない。身長こそ同じように高いが、体の厚みも全然違っている。しかし二人は兄弟で、体に流れる細胞が同じだ。今は細身の八戒も、いつか大寿のように体が分厚くなるかもしれないし、三ツ谷に甘えてばかりいる幼い姿もなくなって、大寿のように逞しくなるのかもしれない。
大寿を抱きながらそんなことを考えている内に、三ツ谷は大寿の体に八戒の姿を透けて見るようになった。目を瞑っていると自分の下で喘いでいる八戒の姿が鮮明に浮かんできて、三ツ谷のペニスが一回り大きく膨らむ。
脳内の八戒はいつもの調子で三ツ谷のことをタカちゃんと呼ぶ。しかしその声は腰を突くたびに掠れ、途切れて、とてもいやらしい。気持ち良さのあまりに八戒は半べそをかいていて、三ツ谷はその姿に興奮していた。自分と同じく初めてのエッチに戸惑いながら、とても気持ち良さそうにする姿が可愛くてしょうがなかった。
脳内の八戒は三ツ谷のことが大好きで、ずっとこうしたかった、と潤んだ瞳でいう。それが嬉しくて、三ツ谷はオレも同じ気持ちだったと胸がいっぱいになった。
腰を振り続けていると滑りが悪くなり、三ツ谷は目を瞑って見える夢の世界から現実へ引き戻される。三ツ谷は苛立ちながら、転がっていた潤滑剤のボトルを乱暴に握りしめる。大寿と繋がった場所に向かって荒っぽく液体を落とすと、もう一度律動を開始する。早く夢の世界に戻りたくて、三ツ谷は激しく腰を振った。ばちゅ、ばちゅ、という肉と肉が擦れる音が大きくなり、動画で見たセックスと同じ音がしていると三ツ谷は思った。
脳内の八戒はタカちゃん、タカちゃんと何度も三ツ谷の名前を呼ぶ。三ツ谷に犯され、苦しそうにしながらも、三ツ谷を求める姿が愛しくてたまらない。こんなに近くにいるのに、すごく遠くにいるみたいで、三ツ谷は無性に寂しくなった。オレはずっとそばにいる。そんな思いで想像の八戒を抱きつぶすと、現実の三ツ谷は果てていた。大寿の腰を掴み、力いっぱい突き上げた三ツ谷は、大寿の体の奥に吐きだすように、コンドームの中で射精する。三ツ谷の精液を絞り取るように締めつける大寿のアナルの気持ち良さに三ツ谷の体力が持っていかれる。
三ツ谷はハァと息を吐きながら、ゆっくりと腰を引き抜いていく。コンドームの先に溜まった精液の色の濃さと量に慄きながら、三ツ谷はそれをポイとゴミ箱に投げ捨てる。欲望のままに腰を振った事実をなかったことにしたくて、証拠となるそれを早く見えないところにしまいたかった。
暫く二人は黙っていた。三ツ谷は大寿に対してなんて声を掛ければいいのかわからなかった。
饒舌な大寿もいまだ静かで、三ツ谷はそれをとても不気味に思った。
黙り続けているのも気まずくて、三ツ谷は勇気を振り絞る。「大寿くん、大丈夫?」
大寿の体を無茶苦茶にした三ツ谷がいうことではないが、それでもこれ以外に掛ける言葉は見つからない。大寿はああ、と小さく相槌を打った後、片眉を大きく吊り上げた。
「気は、晴れたかよっ、?」
三ツ谷は黙る。にやりと笑う大寿の額に汗が流れていく。三ツ谷は化け物みたいに強い大寿がぐったりしている姿を見て、自分がしたことがナニであったかを、あらためて実感した。

2021/10/10