夏が終わる。


同棲している尾谷。現パロ。

夏の終わり、個人的な集まりで配ったお話です。
当時思いのほか喜ばれて嬉しかったです。その節はありがとうございました。


*   *   *


白かった日差しにオレンジ色が差し込むようになって、ツクツクボウシの声がよく聞こえるようになった。じっとりとした暑さはいまだ続いていても、長かったはずの日照時間がだんだんと短くなっている。それでも注いだ麦茶がぬるくなるのはまだ早い。縁側に並んで、西瓜を食べて、少し遅れた夏休みを過ごす。盆に縁のない俺たちの夏の過ごし方だった。
尾形はあまりフルーツを食べない。手は汚れるし、種を取って食べるのが面倒だからだという。それでも切って出してやれば、一切れくらいは食べる。それを見る度俺はむず痒い気持ちになった。
暑いな、といいながら夏の風だけが涼しい縁側で外を眺める。暑いのは苦手だが、季節を感じるのが好きだった。湿っぽい風でも風鈴が鳴れば、気温が一度下がった気になった。尾形は季節なんてどうでもいいみたいだが、俺に合わせて隣に座った。付き合わせるのは申し訳なかったが、尾形の気持ちが嬉しかった。
高い塀に囲まれた借家は、男二人で縁側にいても誰も咎めることはない。暑いのに指を絡めたり、暑いのに顔を寄せて話したり、そんな普段できないことを思い切りできるのが嬉しい。
俺は家に二人でいるとやたら甘えたくなった。かまって欲しくて、苦手なのに冗談を言ったりもした。尾形はいつも表情を変えないのでどう思っているかわからない。それでも拒むことはしないので、俺は嬉しくてまた甘えたくなった。
だがそれでもベッドへの誘いはいつまでも苦手で、俺は尾形に誘われるまでいつまでも待った。尾形の太い関節が目立つ指が、前髪を撫でつけるクセをするたびに、俺は体が熱くなる。些細なことでも尾形を求めたくなって、尾形と出会う前の自分に戻れる気がしない。
ふいに額からするりと汗が流れる。心地良いが、いつまでもここにいたら倒れてしまう。丁度タイミングよく雨の匂いがして、夕立になるといった天気予報を思い出した。俺は西瓜の皮だけが乗った皿をお盆に乗せ、台所に行く。尾形も縁側の窓を閉めて、エアコンのスイッチを入れた。間もなく雷鳴が聴こえて、ザーッと力強い雨が降り出した。
間一髪だったな。そう言って尾形が笑った。ニヒルな笑みが色っぽい。思わずごくりと唾を飲む。やたら大きな音がしてしまい、尾形はまた笑った。
ここでするか。そういって尾形がゆっくり歩みを寄せる。流しで洗いものをしていた俺のもとまで近付いて、なあ、と同意を求める様に言った。
下から覗きこまれるように見つめられると、自分の浅ましい欲が見透かされているような気になった。昂った尾形が欲しくて、今すぐ抱いて欲しいと思う野性的な願望。俺は悟られないように、黙って首を縦に振る。
はは、と笑った尾形が俺にくちづけた。唇が重なると、昨夜の情事が体から蘇る。もうだめだ、と言っても止めてくれない腰の動きに翻弄され、頭が空っぽになるまで快感を貪った。
俺は洗い物の手を止めて尾形とのキスに夢中になった。流しっぱなしだった水はいつの間にか止められていた。

2019/05/12