南国には派手なシャツで


現パロ。
一儲けした尾形が海外でパーっとやろうとしたら飲み過ぎて知らぬ間に谷垣と出会って一夜を共にしていた話。


*   *   *


瞼を貫通するほどの強烈な日差し。カーテンが意味をなさないほどペラペラなのが悪い。今は何時だ? もう昼になるのか? 東京では味わえないほどの日差しの強さに時間の感覚が掴めない。
パチパチとまばたきをして、俺の視界は真っ白が映る。ホテルの白い壁と、太陽の光りが強過ぎて真っ白に見える大きな窓。
俺はタイのパタヤに来ている。先日たまたま買った株がたまたま上がって一儲けをした。その数日前に知り合いからとある会社の新技術の話をされた気がしたが、多分気のせいだろう。
あぶく銭は遣うに限る。俺は早々に海外へ飛んだ。物価の安いリゾート地で豪遊しようと、空いてるホテルで一番いい部屋をとったが、これほど日差しが強いんじゃリラックスなんてできたもんじゃねえ。俺は今日にでも部屋を変えてもらうと心に誓った。
自宅の遮光カーテンを恋しく思いながら身を起こすと、ズキズキと強い頭痛で頭がグラグラした。昨日アホほど酒を飲んだせいで見事に二日酔いだった。
パタヤはリゾート地だがローカルな店も多く、安い店だと多少ボラれても大した額にはならない。俺はあぶく銭を惜しみなく遣い、一夜にして"シャチョウ"となり"オウサマ"までのし上がった。店員どころかその場にいた客の代金まで払い、俺は片っ端から酒を飲み倒した。
いい歳して大学生みたいな飲み方をした事を反省しながら、俺は上がってきた室温を下げようとベッドサイドへ振り向く。隣には見覚えのない熊みたいな男がグースカといびきをかいて寝ていた。
「なんだこいつは……」
ジロジロと全身を観察したが全く覚えがない。見たところ日本人だが、知り合いってわけでもない。
男はなぜか裸だった。そして実は俺も裸だった。かろうじてパンツは履いているものの、ベッドの周りには俺が着ていた派手な柄シャツと黒のハーフパンツが放り投げられている。
俺は昨日、適当なバーに入って商売女を買うつもりでいた。タイにいる間は、毎日毎日酒を飲んでいい女を抱いて過ごすつもりだった。
隣で爆睡する男はなんだ? イラついていたら自然と眉間に皺がより、無意識に力を入れたせいでまた頭痛がする。最悪だ。
だがズキっとする痛みで昨日のことを少し思い出した。俺はこの男を抱いたのだ。
この男とは体の相性がよくて、俺は久々にヤリまくった。セックスの最中、盛り上げるためにとんでもないことを口走った気もする。それくらいめちゃくちゃヤッた。俺は昨日のことを殆ど覚えておらず、なぜ男とセックスすることになったのか分からないが、この男の具合の良さだけはハッキリと覚えている。
しかしなんで。よりにもよって、こんな熊みたいな男と……。
短髪に髭を蓄え、立派な胸毛の生えた男は、いかにもゲイって感じの風貌をしている。美人な女だってたくさんいたはずだ……。
「おい! てめぇいい加減に起きろ!」
俺はイライラしすぎて男の頬を思い切り叩いた。バチンッ! とハリのいい音がして、男がようやくムニャムニャと起きだす。
「いつまで寝てんだよ。さっさと帰れ」
男を起こすために声を張り上げると頭にズキズキと響く上に吐きそうなほど気持ちが悪くなる。
男は俺の張り上げた声でようやく目を覚まし、ゆっくりと顔を向ける。わるい……と寝惚けた声で言うので俺はまたイライラした。
「寝起きがいいな……」
男はあくび混じりにいう。俺が寝ている方向に窓があるんだから目覚めるのは当然の結果だ。俺がロクに寝れてねえっていうのに、宿主より遅く起きるなんて許されねえ。
男はゆっくりと体を起こして伸びをした。裸の男の体にはそこらじゅうにキスマークがついていて俺は目を疑う。そのキスマークをつけたのは俺なのか?
「そうに決まってるだろう。他に誰がいるんだ」
熊の男に不思議な顔をされて俺は心が折れた。本当に男とヤッちまったらしい。俺は男なんて興味がないし、ヤるならせめて美人なニューハーフだろう。昨日の俺はどうしちまったんだ。
俺が呆然としていると、「相手を探していたんだろう?」と男は言った。そりゃ探していた。でもこんな熊のような男を探していたわけじゃない。
ハァ、とデカい溜息が出る。目の前の男を抱いたことは信じられないが、やたらセックスが気持ちよかったことだけははっきり覚えてるからタチが悪い。
男は俺のことを心配そうに見ていた。「まさか、男は初めてだったのか?」と恐る恐る聞いてくる。
そうだよ、クソッ。俺が悪態をつくと男は申し訳なさそうな顔をして俺は余計にムカついた。俺のことを童貞みたいな目で見てんじゃねえ。

2021/07/30