グレイゾーン2
巨大な破壊音と地響きで王宮が揺れた。空から降ってきた球体によって、巨大な宮殿の一部が破壊されたようだった。墜落現場にいた王の側近は、スカウターを使い大臣たちに連絡を取る。旧型のポットが墜落したという速報が城内に流れた。中から現れたのは妙な格好をした男で、サイヤ人にとてもよく似ていたが変なしゃべり方をするという。
惑星ベジータの王子であるベジータは真っ先に現場へと飛んだ。サイヤ人は多数の星々と敵対関係を作っており、こうして攻撃を受けることも珍しいことではない。サイヤ人のポットを手に入れて、どこかの異星人が紛れ込んだのだろう。
妙な服を着た男を逃がさないように、側近や大臣たちが周囲を囲っていた。見た目は下級戦士そのものだが、それを囲う大臣たちは険しい顔をしていた。戦闘民族であるサイヤ人は、その男の持つ気配により、ただ者ではないことを悟っていたのだ。
ベジータが現れると、その場にいたサイヤ人の顔が綻ぶ。ベジータの強さは他の戦士を寄せ付けないほど圧倒的なものだった。その場にいた側近たちは、この得体のしれない男に対して恐怖を覚えていたのだ。
ベジータは部下の顔を見るなり一喝した。情けない顔をするくらいなら殺されてしまえ。ベジータの怒りは本物だった。
「それともオレさまが直々に手を下してやろうか」
ベジータは表情一つ変えずにいう。冗談をいう男ではないと知っている側近たちは震えあがった。
「おい!」
凍り付く空気を裂くように妙な男が声を上げる。その場の視線が一斉に集まった。
「オラ、殺すとか、そんなことしねえよ。勘違いすんな」
穏やかな表情を浮かべていた男は眉を吊り上げていう。
「お前ら仲間だろ。仲良くしろよ」
「ふん、きさまには関係ない」
「オラが原因だろ? こいつら何も悪いことしてねえじゃねえか」
「……減らず口め。痛い目をみんとわからんようだな」
ベジータは腰を低くして睨みをきかせる。周囲はどよめいた。妙な男は戦うつもりはなかったが、ベジータの構えがハッタリではないこと悟り、同じく身構えた。男もまた、ベジータがただ者ではないことを感じ取っていた。
二人は暫く見合いっていた。相手の呼吸を感じ、出方を窺う。側近たちは自然と距離をとった。二人の戦いに巻き込まれてはただではすまない。
二人を包む空気が止まったかと思うと、一瞬のうちに二人の姿は消えていた。人と人とがぶつかったとは思えぬ破裂音がしたかと思うと、二人は再び地に足を着く。互いの攻撃を受け止め、それぞれの手足に打撲の痕がついていた。
2020/09/14