グレイゾーン3
ベジータは妙な男を王宮に招き入れた。客室に案内すると、すぐに大量の食事を用意させる。男はベジータのもてなしに素直に喜び、何の疑いもせずに食事を始めた。美味い、美味いと言って、男はテーブルに乗った大量の食事にがっついていく。
「きさま、毒が入っているとは思わんのか」
躊躇なく肉を噛み切り、飲み物を流し込む男を見てベジータはいう。
「毒はいってんのか?」
男はそう言いながらも口を動かすことを止めない。
「……ふざけるなよ」
「ふざけてねえよ。オラ、毒が入ってるなんて考えもしなかった」
男の口調はとぼけているように聞こえるが、その言葉に嘘はないようだった。
「おめえ、そんなことするヤツじゃねえだろ」
「どういうことだ」
「聞かれっと答えられねえけど……でも、合ってるだろ。おめえんとこのゴハン、うめえな」
ベジータは男と対峙した時、本当に殺すつもりであった。だが男の力が予想以上であったことと、その強さに特殊なものを感じた。どうやら男はスカウターがなくとも、相手の強さがわかるらしく、側近が武器を向けても本気にならなかった。警戒せずとも、強さに大きな差があるからだ。
ベジータは男を気に入ったわけではない。今でも殺してやろうと思っているが、その強さは利用できると思った。ベジータは男の強さの秘訣を聞き出し、奪い取ってやろうと思った。
そのためには男に警戒されてはいけない。男をもてなした理由はそこにあった。そして男からすべてを奪い取った後、ベジータはこの手で殺すと決めたのだ。
不意に客室のドアからコンコンと音がする。誰かが訪ねてきたようだった。オレだ! とドアの前で男が叫ぶ。ベジータはにやりと笑った。
「遅いッ」
「悪かったよ、ちょっと立て込んでたんだ」
ドアの前には長髪の男が立っている。さきほどの側近や大臣たちよりも一回り大きな体をして、動きやすそうな短い衣服をまとっていた。
「ラディッツ、コイツだ。……カカロットじゃないか?」
ベジータは顎で妙な男をさした。長髪の男がぐるりと首を回し、食べ物をがっつく男を視界に入れる。そして見た瞬間、長髪の男はわなわなと震えだした。
「カカロットだ……間違いねえ……生きてやがったのか……」
男は狼狽し、その姿を確かめるように、妙な男を頭からつま先までまじまじと見つめていた。
「オラは、そのカカなんとかなんていう、おかしな名前じゃねえぞ」
妙な男は即座に否定するが、長髪の男は聞き入れなかった。
「成長したな……だが一目でわかったぞ。父親にそっくりだ……」
席に着いてから食事の手が止まらなかった男がぴたりと動きを止めた。
「父ちゃん……?」
そう呟く声は明らかに動揺していた。
2020/09/14