グレイゾーン4
ソンゴクウと名乗る男は地球という星で育ったサイヤ人だった。幼い頃、ゴクウを拾った孫悟飯という翁が悟空と名付けて男を育てた。
悟空は悟飯翁から様々なことを教わった。生きていくための知恵や、世の中の理。翁が武術の達人であったこともあり、無類を誇る悟空の強さの裏には悟飯翁の存在がある。
悟飯翁はサイヤ人のことを知っていたわけではない。しかし地球人にはない尻尾を付けた姿を見て、悟空が多くの地球人とは違った出自なのだろうと思った。
悟空が物心つく頃、悟飯翁は悟空と出会った頃の話をした。山中、不思議な乗り物の中で悟空は一人で泣いていた。拾って育て上げ、幼い頃の悟空はとても凶暴な性格をしていたという。ある時、悟空が頭を強くぶつけてから人が変わったように穏やかになり、今の生活に続くのだといった。
悟飯翁は、この世界のどこかにいる悟空の父と母の存在を気にかけていた。愛しいわが子がこうして生きていると伝えてやりたかった。だが何も手掛かりがなく、その内翁は不慮の事故で亡くなった。
悟空は翁との生活に不自由をしていなかった。だが大切な翁が自分を思い、心残りのまま亡くなってしまったことがずっと心に引っかかっていたのだ。
「父ちゃん……って、オラのか……」
よく見ると、長髪の男の背後に茶色の尻尾が見える。それは幼い頃、悟空にもあった尻尾とよく似ていた。はっとして、悟空は目の前にいる偉そうな男に再び視線をやった。マントで隠れていたのと、腰に巻いていたせいで気付いていなかったが、その男にも見慣れた尻尾が生えていた。
「カカロット、きさま何も覚えていないのか?」
「オラ、ちいせえ頃に頭打って、そっから昔のことは覚えてねえんだ」
ラディッツは溜息を吐いた。弟であるカカロットは下級戦士で、生まれた時から手のかかる子供だった。まさかこうして大人になって出会っても、相変わらず手のかかる奴だとは思わなかった。
「ラディッツ、案内してやれ」
「え?」
「何年ぶりの再会だ? 親子水入らず、積もる話もあるだろう」
ラディッツは困惑する。ベジータから家族の話をされるとは思わなかった。無礼なふるまいをする弟が殺されずに生きていることも信じられないことで、即座に反応できない。
だがベジータがどんな男か知らない悟空は素直に喜んでいた。幼い頃の記憶がないとはいえ、父や母と顔を合わせれば、忘れていた記憶がよみがえるかもしれない。
悟空は偉そうな男にお礼を言った。飢えていたところに食事でもてなされ、その上生き別れの父と母に会えるとはなんて幸運なことだろう。
「気にするな。これも領主の務めだ」
ベジータはにやりと笑う。恩を着せておくことで、この男を利用しやすくなると見越してのことだった。
2020/09/14