グレイゾーン7
「似てるってなにがだ?」
「親父だよ。お前と親父が似てるんだ」
長髪の男はテーブルに肘をつき、食後に用意された飲み物をかったるそうにすすった。
「無鉄砲っていうか、怖いもの知らずっていうか……」
女性もまた、悩まし気な顔をして腕を組む。二人の大きなため息が部屋を埋めた。
「オラの父ちゃんは今どこにいんだ?」
「遠征に行ってるよ。そろそろ帰ってくる頃さ」
「どうせすぐ会える。お前は家にいろ。俺は帰る」
長髪の男はぐいとカップを呷り、フルーツを絞った飲み物を一気に飲み干した。
「なんだい、せっかく家族がそろったのに」
「勝手にやってくれ。面倒なことはごめんだ」
長髪の男はそういって立ち上がると、振り返らずに部屋を出る。すぐさま家を発つと、男の気は名残惜しむ暇もなく遠のいていった。
悟空は一人取り残され、途方に暮れていた。空腹は満たされ、本来の目的であった修行を再開させたいところだったが、そのためには不時着した宇宙船のもとへ戻らなくてはいけない。だが長髪の男も、マントの男もいないまま、再びあの王宮に戻れば、今度こそ捕らえられてしまうだろう。
「行くとこないんだろ。バーダックのベッドが空いてるから、今日は泊まっていきな」
気が付くと外は真っ暗で、すっかり夜も更けていた。
悟空の父と母は同じ寝室で、ベッドを横に並べていた。柵もなく、分厚いマットレスに薄手の布団をかぶせただけのとても簡素なベッドだった。
悟空は空いているベッドに横になり、布団をかぶった。布団には人の匂いが染みついていて、顔も覚えていない父に思いを馳せる。
今日は予定外のことばかりで、さすがの悟空もとても疲れていた。ありがたいことに、用意された布団はふかふかで、悟空の重たい体を優しく包んだ。
悟空は壁を向いて寝ていたが、隣に眠る母の視線が気になった。じいっと強い視線が背中に刺さり続け、悟空は思わず寝返りを打つ。すると悟空の視線は隣で眠る母とばちりと合ってしまった。
「な、なんだよ」
寝たふりもできなくなって、悟空はその気まずさに耐えきれなかった。だが母はふふっと優しく笑うばかりで何も言わなかった。悟空は気恥ずかしくなり、再び壁に向かって寝転がる。
この惑星の夜はとても静かだが、時折強い風が吹き、建物をガタガタと揺らしていた。隙間風が少し寒くて、悟空は幼い頃を思い出していた。悟飯翁と二人で暮らしていた家は古くて、隙間風でいつも少しだけ寒かった。幼い頃の悟空は翁と身を寄せて寝るのが好きで、なんだかあの頃と似ているような気がした。
2020/09/14