グレイゾーン10


ギネの家に近付くにつれ、刺々しい気がよりはっきりとした形となる。それは単純な強さだけではなく、地球では感じたことない気の形だった。
悟空は父に会ってみたいという好奇心よりも、荒々しい気を持つ人物がどんな者かが気になっていた。悟空が地球を飛び立った本来の目的は、修行と、より強い相手と出会うことだった。
悟空は早く会いたいあまり、到着する頃には息が上がっていた。玄関の前に立つとその異様な気から匂いまで漂ってくるようだった。それは少し血生臭く、悟空の身に緊張が走る。
「ただいま」
悟空は静かに、礼儀正しくドアを開ける。中にはギネと、知らない男が一人。刺々しい気の持ち主だ。知らない男は悟空とよく似た髪型をしていて、市場の人たちが間違えたバーダックがこの男だということはすぐに分かった。
「もう戻って来たのかい? 市場は楽しくなかった?
男の影に隠れていたギネがひょっこりと顔を出し、悟空を歓迎する。背を向けていた男がくるりと振り返る。人を睨むような鋭い目をしていて、男は随分と目つきが悪かった。
「誰だ、こいつ」
「誰って! カカロットに決まってるじゃないか!」
「カカロット!?」
男は困惑していた。よく見てごらんとギネに促され、男は悟空をまじまじと見つめる。しかし首を傾げ、あまりピンときていないようだった。
「確かに似てるけどよ、あんな弱いカカロットが生きてられるわけねえだろ」
「何言ってんだい! 強くなって帰ってきたんだろう!」
ギネはニコニコと笑っていた。男は眉を顰めて半信半疑だ。男はおもむろに手を手を上げると、耳にかけた謎の機械を触り、指先でカチャカチャと操作する。透けた板越しに悟空を覗き見ると、透明の板に光が動き出す。
「戦闘力三三四だと? おい、これのどこが強くなったっていうんだっ!」
「そ、そんな……でも、本当にカカロットなんだよ」
男が操作した機械は、相手の強さを測る機械らしい。戦闘力三三四というのは、高い数字ではないようだ。
二人の様子を見ていると、悟空はこの星にとってできの良い子供ではないようだ。だが悟空にとってそんなことは関係ない。平均的な戦闘力がいくつかもわからないし、気には個性がある。それはこの男のような特別な気を放ち、その個性は戦い方に繋がってくる。単純名強さよりも、どう戦うかが大事なのだ。
「戦闘力なんてオラはしんねえけど、戦ってみればわかるんじゃねえか? オラが弱いかどうかよ」
悟空はニヤリと笑う。見た目で判断されるほど、ヤワな鍛え方をしてきたつもりはない。
ところで、目の前の荒々しい男は、悟空より戦闘力が高いらしい。男は仮にも悟空の父であり、できの悪い息子である自分の修行に付き合ってくれるかもしれないと、悟空は淡い期待をする。それによってさらに強さを高められれば、今がたとえ弱いと言われようとも、悟空には何も問題はない。
平然とする悟空に対して、ギネは悲しそうな顔をしていた。この星にとって、戦闘力というのはとても大事なものらしい。


2020/09/14